異世界にトラブルはつきもの
<前話までのお話>
イリカ(元・サラリーマン)は見知らぬ森で「ガフ」と名乗る冒険者に出会った。
話を聞くと、森で迷いパーティーメンバーにおいていかれたという。
彼がなぜ森をさまよっていたのか....
様々な疑問が生まれたが、明日、街に連れて行ってくれるらしい。
果たして無事にたどり着くことができるのか....
「ん....朝か..」
眩しい陽光のせいで目が覚めてしまった。
ここが森でなければきっと良い眠りだっただろう。
昨日、ガフという冒険者にあった。
彼はこの森で迷い、パーティーメンバーに置いていかれたとか。
何はともあれ、その彼に昨日、街まで送ってもらう約束をしたのだが。
「起きてください....」
私が目覚めて約30分ほど、未だ目を覚ましていないのだ。
ぐっすり眠っている。
私は早く街に行きたいのだが....
「あぁ....おはよう、もう朝なのか」
やっと起きたが、まだ朦朧として眠そうだった。
「今日は街に戻るんでしょう?」
「あなたが起きないと出発できませんよ?」
横になっている彼を見下ろしながらそう聞いた。
「どうせ、街に戻るんだ,もう少し寝させてくれないか」
二度寝をしようとする彼を引きずり、街へと出発した。
<亡者の森にて>
「嬢ちゃんは以外に早起きなんだな...俺はまだ眠いぜ」
森の中を歩きながらガフはこの森が亡者の森と呼んでいることを教えてくれた。
「どうして、亡者の森って言うんですか?」
昨日は遭遇しなかったが、この森にモンスターなど生息しているのだろうか。
いたならぜひ、狩ってみたい。
異世界の醍醐味だ。
というか、私のステータスってどうなっているんだろう?
うーん...
まぁ、そのうち分かるか..
「おい!嬢ちゃん、何考え事してんだ?迷子になるのは勘弁してくれよな」
「あ、すみません,少し考えごとしてて」
ガフはやれやれという顔をしていた。
「考えごとなら街の中でしてくれよな...ここは魔物の生息地域だからさ」
「実際、この森で何人も襲われてるって話だ」
それは怖いですね。
でも、今の今までそんな気配とか感じなかったけど。
「前、依頼で来たときも仲間の一人が魂食狼に魂を吸われかけたばかりなんだ」
しばらく歩いているとガフが足を止めた。
指で合図を出しているようだ。
あっちを見ろ?
そんなふうに思えた。
ガフが指差す方向を見ると銀色の毛並みを持った3M弱ぐらいの狼が二匹、そこにいた。
そして、倒れている男性が一名。
「あれは?助けなくていいんですか?」
魂食狼が何をしているかよく見えなかった。
「魂を食ってるのさ.アイツらは若い魂,それも生気に満ち溢れた魂を特に好む」
「眼の前に幻覚を出して獲物を誘うって話だ,しかもその幻覚はそいつにしか見えないから周りからは急にいなくなったと思われるんだと」
急に...いなくなる?
その言葉でふと思い出した。
ガフは会ったとき、森で迷ってパーティーメンバーに置いて行かれたと言っていた。
それが、もし魂食狼の仕業なら...
「あのさ、ガフって....」
言いかける前にガフは遮った。
自分でわかっているようだった。
「ここでアイツらを仕留める。」
「基本的にアイツらの縄張りは森一帯に等しい。」
なるほど。
二匹の縄張りにすでに入り込んでいるということか。
でも一体どうやって倒す?
「俺が合図したらあの大きな樹木に向かって全力で走れ、絶対に後ろは振り向くな...」
ガフは背中の弓を手に持ち、戦闘態勢を取る。
「弓で倒せるんですか?」
「いや、奴らにマークされたらほとんど無意味だ」
だから、マークされないようにまっすぐ走れ...か。
私はそれで助かるにしても、ガフのそれは自殺行為に近い。
「私も手伝います!!」
助力を惜しんだが、ガフは首を横に振った。
「いいか、絶対に戻ってくるんじゃないぞ,あの樹木から西に少し行けば街がある」
「そこで、銀等級以上の狼狩猟協会メンバーに応援を頼んでくれ」
ガフは街の地図を渡した。
「行くぞ....,よし!今だ!まっすぐ走れ!」
ガフの合図とともに私は樹木に向かって全速力で走り出した。
決して振り返らず。
この次に現在までわかっている情報(設定)を書いていきたいと思います。