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第45回 蘇る野望

 他人のスキルをコピーする。

 しかも一回に一つじゃない。


 なんてスキルを持っているんだ。


「最低でも私の理想の世界へ(カエルム)、クロロスルさんの決して朽ちぬ野望(インモルターリス)、コロロの最強の品行方正(ユーストゥス)の三つが使える」


「クロロスル様に禁じられていたスキルでした。他人をコピーするなんて品がないと。ましてや『私のスキルはコピーするな』と戒められていました。品格とプライドを大切になされている方なのです。そういうところが、愛おしい」


「……」


「怯えていますね、青ざめていますね」


 この人、クロロスルさんの愛人か? どうでもいいが。

 心配なのは、他に使えるスキルがあるのかという点。

 そもそもどうやってコピーする?


 なにかされたか? こいつに。


 ーー握手か。

 私も、コロロもこいつと握手をされている。それがスキルの発動条件。

 確かシーナもしていたはずだが、『神に選ばれし者(ファートゥム・レクス)』は無意識にスキルを無効化するから、コピーはできていないはず。


「……」


「……」


「「カエルム!!」」


 同時に時間を遅くする。

 とにかく、こいつの視界に入っていてはダメだ。

 ユーストゥスで殺される。


誰も邪魔をするな(オムニス・ネゴ)!!」


 時間飛ばしで四方に瞬間移動を繰り返し、隙きを突いて攻撃する。

 くそっ、何度切っても回復される。

 クロロスルさんのスキル、本当に厄介だ。


 あの人は溶けた鉄の風呂に放り込まれて、熱さで気絶したからスキルが発動できずに死んだ。

 けどこの状況でそれは無理。


「クロロスル様の偉大さ、思い出していただけましたか?」


「ちっ」


「この力で成し遂げます。あの人が果たせなかった、『支配』。あらゆるものを従え、永遠の栄華を!!」


 まさにあの人を継ぐ者。

 確かにクロロスルさんなら、シーナが統治するいまの社会に牙を向けていただろう。


 カエルムが解除される。

 時間が元通りになる。


「さて、私も攻めますか」


 ケイミスが私の仲間たちを見つめた。


「やめろ!!」


「ふふ」


 視界にいた兵士たちが、死んだ。


「ふはははは!!!!」


 さすがのコロロも、ケイミスが何かしたのだと察する。


「お、おいケイミス、もうやめよう。話し合いで解決するのだ!! 最初からそう決めていたじゃないか!!」


「甘いですよコロロ様!! ときには犠牲も必要なのです!!」


「し、しかし……」


「すべてはクロロスル様のために!!」


 瞬間、


「くっ!!」


 ケイミスが血を吐いた。

 こちらが心配になるほどの吐血量。

 常人なら死んでいてもおかしくないほどだ。


決して朽ちぬ野望(インモルターリス)でも庇いきれないか……」


「ケ、ケイミス……」


「申し訳ございませんコロロ様、この戦、ここまでのようです」


「え?」


 おそらく、スキルの代償。

 能力のコピーなんて、そうとう重い代償が必要になるはずなのだ。


「と、共に逃げましょう。次こそは……」


 ケイミスが手を差し伸べる。

 その手を、コロロは取らなかった。

 恐れているのだろう。彼と一緒にいれば、また争いが生まれると察しているのだ。


「ケイミス、私は、パパ上様と違うやり方でパパ上様の願いを叶える」


「なんて脆弱な……くそ」


 一瞬にしてケイミスが消えた。

 やつは私のオムニス・ネゴも使える。

 時間を何度も飛ばし、瞬間移動を繰り返して逃げたのか。


 コロロが元貴族たちに向かった、


「みんなも、これ以上は」


 大将が戦わずに降伏するなど、無責任だ。

 元貴族とその兵士たちはコロロを無視し、突撃を開始した。


 アンリも自軍の兵に告げる。


「怯むな、やれ」


 ケイミスがいなくなったとて、まだ油断はできない。

 コロロには悪いが、もう止められないのだ。


 私は気を引き締めて、剣を握った。

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