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第40回 束の間の平和

「一人でカッコつけているだけですわっ!!」


 アンリが去ったあと、ノレミュは人目も気にせず大声で叫んだ。

 まあ、気持ちはわかるけどさ……。

 私だって、友達の手が汚れていくのは見たくない。

 そりゃ、誰がやらなくちゃいけない仕事だけど。


「だいたいシーナもシーナですわ。自分に従順な貴族には土地を残して、そうじゃない貴族は徹底的に領地をむしり取る。おびえているんですのよ、反乱を、過剰に!!」


「ちょ、それ以上言ったら逮捕されるかも」


「やれるもんならやってごらんなさい。えぇアンリ、私を殺してみなさいな!!」


 この子もこの子でアンリと似て頑固というか、意地っ張りというか。


「アンリのこと、大切に想ってるんだね」


「ち、違いますわよ!! ムカつくだけですわ」


 とか言いつつ、顔が赤い。

 なんだかんだで、友情を感じているんだ。五年の付き合いだもんね。

 もしかしたらそれ以上の……なんてね。


「それよりアオコさん、午後から用事では?」


「あ、そうだった」


 普段、私はシーナの警護の仕事をしている。

 稼ぎは少ないけど、いいのだ。スローライフを送れる額は貰えてる。


 本来今日はお休みなのだが、私的にシーナに呼ばれていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「来ましたよー」


 シーナの家に訪れると、


「え、なに」


 シーナ、ルルルンさん、そして大きくなった一三歳のナーサちゃんが、深刻そうな顔でテーブルを囲んでいた。

 ナーサちゃんは不機嫌そうに、シーナは泣き出しそうに、ルルルンさんは困り顔。


「どうしたんですか」


「あ、あぁアオコ、お前にも説得して欲しくて呼んだのだ」


「な、なにを?」


「ナーサに彼女ができた」


「へー、おめでとうナーサちゃん」


 ども、と小さくお辞儀をされる。


「でもナーサは、彼女を紹介してくれないんだ!! こんなのってあんまりじゃないか!!」


 わ、どうでもいい。

 すんごく帰りたくなってきた。


 ナーサちゃんが悪態をつく。


「なんでシーナママに教えなくちゃいけないわけ? 別にいいじゃん。誰と付き合おうが。だいたいルルルンママもどうしてシーナママに教えたの?」


「うーん、口が滑っちゃって」


「ほんと最悪」


 お〜、ナーサちゃん反抗期っすか。


「私は心配なんだナーサ!! もし悪い女だったらどうする?? 浮気ばっかりするようなやつだったら」


「だとしても、シーナママがどうこう言える立場じゃなくない?」


「うぐっ」


 論破されちゃった。


「アオコもなにか言ってやれ!!」


「えー、良いんじゃないですか? 別に」


「頼りにならんやつだ」


 悪かったな。


「ルルルン、お前からもなにか」


「ナーサの彼女より、あなたの新しい愛人の方が知りたいけどねぇ。私は」


「ち、違う!! ヌメンは愛人じゃない!! ちょっと仲良しなだけだ!!」


「へぇ、ヌメンさんっていうんだ」


「は、はうわっ!!」


 カロー皇帝の姿か? これが。


「むむむ……よーしわかったナーサ。そこまで意地を張るなら、見せてみろ!!」


「なにを」


「お前に女の子を見る目があるのか。守ってやれる力があるのか。近頃森で暴れている凶悪な魔獣を狩れたなら、認めてやろう!!」


「やだ。めんどくさい」


「そんな〜」


 戦争は強くても家族には弱いみたいだね、シーナは。

 けど正直、女の子を見る目はないと思うよ。

 だって性欲魔獣シーナと、そのシーナを選んだルルルンさんの子供だもん。


 これ言ったら死刑かな。


 ナーサちゃんが自室に戻ろうと立ち上がる。

 そのとき、


「話は聞かせてもらったぞ!!」


 コロロwithユーナリューナ姉妹がやってきてしまった。


「リューナがナーサに勉強を教えるから、ついでに遊びにきたのだ!! なっはっは!!」


 面倒なのが入ってきちゃったな……。

 リューナちゃんが苦笑する。


「えっとコロロ、できれば静かにしてほしいかな」


 ナーサちゃんがリューナちゃんの袖を掴んで、シーナを睨んだ。


「んじゃ、リューナお姉ちゃんと勉強するから。邪魔しないでよね。行こ、リューナお姉ちゃん」


「あ、うん」


 まだ話は終わっていないぞと、シーナは立ち上がったのだが、コロロちゃんに妨害されてしまう。


「シーナ!! 私に任せるのだ!!」


「お! 説得してくれるのか?」


「魔獣退治!! いっちょここらで私の株を上げて、クロロスル家再興に近づくのだ!!」


「……」


 一人で盛り上がっているコロロちゃんに、ユーナちゃんがため息をつく。


「どこが話は聞かせてもらったなのよ。全然本筋理解してないじゃない」


「まーまー、いいじゃないか!! よーし、皆のもの、この品行方正最強カロー人コロロ様についてくるのだーーっ!!」


 てなわけで、何故か魔獣退治がはじまったのでした。

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