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第37回 一方そのころ、リューナとアンリとノレミュ

※リューナ視点です。




 私がルルルン姉上様の家で暮らしている代わりに、実家はアンリさんが管理しています。

 ですがどうやらアンリさんは風邪を引いてしまったようで、お見舞いに行くことにしたのです。


 ガチャっと扉を開けてみると、


「あら、どちら様ですの?」


 知らない女の人が出迎えてくれました。

 えっと……え〜っと?


「あぁ、もしかしてリューナちゃんですの? アオコさんから聞いていますわ」


「あ、じゃあ手紙に書いてあった、ノレミュさん?」


 ベキリア遠征でアオコさんの付き人になった人、だったはずです。


「アオコさんが帰るまで、この家でお世話になっていますの」


「そ、そうなんですか。よろしくおねがいします。……と、ところでアンリさんは?」


 別の部屋から、いかにも具合が悪そうなアンリさんが出てきました。


「や、やあリューナ様。どうしたのですか?」


「お見舞いに。果物を持ってきました」


「ありがとう……ございます。すみません、あまりに辛いので」


「あ、はい。気にせず休んでください」


 アンリさんが寝室に戻っていきました。

 ちなみに彼女が寝ているのは、元々シーナ姉上様が使っていた部屋です。

 匂いが残っているらしいです。


「どうぞリューナさん。お茶ですわ」


「ありがとうございます」


 ノレミュさんが淹れてくれたお茶を飲みながら一休み。

 アンリさん、きっと姉上様の代わりに頑張りすぎてしまったのでしょう。

 父上様もよく過労で体調を崩していました。


「父上様……」


 ダメですね。感傷的になってしまいました。

 乗り越えなくちゃいけないのに。

 別のことを考えましょう。

 シーナ姉上様たちはいつ帰ってくるのでしょう。アンリさんやノレミュさんなら知っているのでしょうか。


 ノレミュさんはいまアンリさんと一緒にいます。

 立ち上がって部屋に近づくと、二人の話し声が聞こえてきました。


「まったく、あなたを頼りに先に入国したのに、だらしないですわね」


「うるさい」


「ほら動かないで。汗を拭きますわ」


「……どうしてだ」


「なにがですの」


「お前が信用しているのはアオコだけ。私は、お前の家族や友を殺したカロー人だぞ」


 じゃあ、ノレミュさんはベキリア人?

 その情報は、手紙にはありませんでした。


「正確には、アオコさんだって完全には信用していませんわ。カロー人じゃないから、いくぶんかマシというだけで。……まあ、確かに、あなたの面倒をみる義理はないですし、なんだったら、いまなら私でも殺せそうですわ」


「じゃあ、なんで」


「他に住む家がないからですわ」


「え?」


「あなたにこの家での居住を許可されているから、借りを返しているだけですの。それ以上でもそれ以下でもありませんわ」


「……」


「そういえば、あなた自分の家は? 家族はどこに?」


「いない」


「え」


「幼い頃捨てられた。だから、私を拾ってくれたシーナ様にこの身を捧げている」


 知らなかったです。

 なんだか、こうして二人の秘密を盗み聞きしていることに罪悪感を覚えてしまうのですが、下品な好奇心が足を止めてしまいます。

 ごめんなさい。


「シーナ様の命令なら、私はなんでもやる。誰だって殺す。自分でも、お前でもな」


「なんで意味もなく脅すんですのよ。……同じシーナの忠臣でも、アオコさんとは正反対ですわね」


「あんなのと一緒にされたくない」


「友達じゃないんですの?」


「私に友達はいない!! ……うっ、ゲホッゲホッ」


「少し喋りすぎましたわね。お大事に」


「……ノレミュ」


「なんですの」


「あ……あり……いや、礼は言わん。住まわせてやっているんだから」


「ふっ、はいはい」


「何故笑った!!」


「笑ってないですわよ、アーちゃん」


「キサマッ!!」


 最初は不仲なのかと思いましたけど、本当は仲良しなんですね。

 安心しました。

 もう少しお茶を飲んだら帰ろう、そう思った矢先、


「失礼します!!」


 警備兵の人が、大忙しで家に訪れました。

 ノレミュさんとアンリさんも、何事かと顔を出します。


「どうした」


「アンリ様、シーナ様が勝利しました」


「なっ!!」


「ポルシウスを討伐し、カローへ帰ってきます!!」

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