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第3話


 7月16日、金曜日。

 試験結果返却日。


 練習のときもそうだったが、勉強会を始めてから試験終了まであっという間だ。

 同じくお泊りイベントも発生したが、前よりもしっかりできたはず。


 このままいくと、試験内容も同じような問題が出るのはないかと思ったが、寸分違わず全く同じであった。


 しかし、ズルはしたくないし、高崎さんにとっても良くないと思ったので、今回の勉強会ではあえて試験問題には触れなかった。


 代わりに、前の勉強会で、時間の都合上、手が出せなかった問題にも取り組めるように効率化を図った。


 おかげで前回よりも幅広く勉強ができたので、うまくいけば点数も上がっているはずだ。

 空き教室で待っていると、ついにそのときが来たようだ。


 タッタッタッタッタッ!

 ガタン!


「太田君! 私、やったよ!」


 実に2週間ぶりの、緊張から解き放たれた高崎さんの満面の笑み。


「太田君のおかげで、全教科平均点を突破できました……! 本当にありがとう……太田君、私……頑張って良かった。太田君がいてくれて本当に……本当に、良かった……」


 笑顔と涙交じりに感謝を告げる彼女の姿は、この世の全てをかき集めても遠く及ばないほど綺麗だと思った。


 体感的には2回目だとしても、この感動は薄れない。


 急にモジモジしながら乙女な顔をする高崎さん。



 そうか。あれが来るのか。



 結局、目の前のことに集中し過ぎて忘れかけていたけど。


「太田君……。私ね……試験が終わって、いい結果が出たら、言おうと思ってたことがあるの。私、太田君のおかげで未来が開けた気がした。成り行きとはいえ、私に手を貸してくれた。でも今度は、私が太田君の支えになりたいの! 太田君のことが好き……大好きです!」


 やばい。

 胸がすごいドキドキしている。


 今までは、何とか練習のときよりも堂々とした立ち居振る舞いができるように心掛けていたけど、これはさすがに厳しいです。


 きっと俺の手も震えているんだろうな……





————嬉しいはずなのに、急に嫌な予感が頭をよぎる。





 同時に、周りが静寂に包まれた。

 一度体験した、自分の手足が動かせない感覚。



 もしかして、またなのか……?



 自分に抗う術もないまま、高崎さんが今までの行動を巻き戻すかのように動き出す。



 遠のく意識……


 迫りくる暗闇……



 どうなってんだよ……これ……


 ………………………………


 ………………


 ……


 …



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ふと意識が覚醒する。


 手元には成績表。


 ここは俺の教室。


 黒板を確認すると【7月1日(木)】の記載。


 誰かが急いでこちらに駆けてくる足音。



 タッタッタッタッタッ! 

 ガタン!



 あぁ、もはや言い逃れはできない。



————また2週間前に戻ってきたんだ。



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