表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/52

第1話


「うおっ! なんだ? 何が起きた?」


 周りを確認するが、先ほどと変わらず教室だ。


 でも、この教室、空き教室だったはずなのに、妙に人がいた形跡が…… 

 空き教室だったから、それぞれの机には何もないはずだ。


 しかし、見てみると各机には教科書が入っているものもあれば、体操着らしきものがフックに掛かっているものもある。


 それに、窓からのこの景色、どこか見覚えが……?


「やっぱり、俺の教室だ。前橋さん、さっきまで高崎さんと空き教室に————」


 タッタッタッタッタッ!

 ガタン!


 とりあえず前橋さんに確認しようとするも、勢いよく開く扉の音に遮られる。

 そして、扉の向こうには、肩で息をして余裕の無さそうな顔をしている美少女。


「あ、高崎さん! さっきはその————」

「ハァ、ハァ、ハァ……もしかして……その成績表……」

「えっ、成績表?」


 手元を確認すると誰かの成績表。

 名前を見てみるとそこには「高崎可憐」と綺麗な字で書かれている。


 なんで持っているんだ?


「見ちゃった?」

「えっと、見たって……これを?」

「やっぱり見ちゃったんだぁぁぁ! わぁ~~! めちゃくちゃ恥ずかしいよ~~!」


 顔を手で覆いながらしゃがみこんで叫ぶ高崎さん。

 まるで2週間前とまったく同じように。


 そのあとの俺は、適当な相槌しか打てていなかったと思う。



 あのときをなぞるかのように、高崎さんの悩み、将来の夢を語ってくれて、来週から勉強を教えることになった。




 来週って……もう試験は終わったはずだろ……?


「じゃあ、太田君、来週からよろしくお願いします! 場所はいいところがあるからあとで教えるね! ばいば~い♪」


 ついさっきまで、恥ずかしそうにしながらも、意を決して告白をしてくれた高崎さん。

 しかし、今話した高崎さんは、そんなことを忘れてしまったかのように話を続け、そのまま

教室から去ってしまった。

 


 ……もう、認めざるを得ないだろう。



 意を決して、黒板を確認する。


 やっぱり、俺が書いたやつだ……



 そこには【7月1日(木)】の記載。



 あの日に……高崎さんに勉強を教えることになったあの日に……

《2週間前》に戻ってしまったんだ。


「前橋さん、これどうなってんだよ? ……ん?」


 ひとまず現状を確認するために、後ろにいる前橋さんに声を掛ける。


「…………? どうなってるって何のことかしら?」


 一瞬、遠くを見ていたかのように唖然としていたが、すぐさまいつもの無表情に戻る。


「何のことって、今起こってることだよ!」

「興奮するのも分かるわ。だって、学校でも随一の美少女の高崎さんに勉強を教えることになったのだから」

「えっ、前橋さんは気付いていないのか?」

「だから何がよ。ほんと太田君にはついていけないわ。まるで悪い夢を見た後みたいな顔して」


 前橋さんはそう吐き捨て、教室の外を眺める。

 この様子からすると、前橋さんは気付いていないみたいだ。


 でも、絶対におかしいことは確かだ。


 あの出来事が全部夢ながずない。

 高崎さんに勉強を教えて、試験に臨んで、それなりの成果が出て、感謝をしてくれた。

 こんな俺を好きと言ってくれたんだ……


 しかし、そんな俺を間違っていないと認めてくれるものは何もなかった。

 あれが現実だと証明してくれるものは何もなかった。


 とりあえず家に帰ってみたものの、あの日を繰り返すかのように母親から抱き着かれ、同じような会話を繰り返す。


 誰も今を疑問に思っている人なんていなかった。


 あれは本当に夢なのか?


 素敵な恋を渇望するあまりに見てしまった俺の妄想だったのか?


 なぁ、教えてくれよ……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ