表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

1.甲板のボロイデッキブラシ

穏やかな風が頬をなでる……まあ頬なんてないんですけどね!!


俺は女神の予告通り、しっかりデッキブラシになっていた。

しかもぼろぼろで今にも壊れそうなブラシだ。


デッキブラシといっても一応視覚、聴覚、触覚、嗅覚はあるようだ。

味覚は……望み薄だろう。まあいい。前世で丁度飽食ぎみだったからな。

これら人間で言う顔の部分はブラシ部分ではなく、持ち手の先端にあるようだ。

身長的には小学校から中学校くらいか。

食欲は一切なく、いらぬはずの性欲は少々、睡眠欲は人間同様普通にあるっぽい。

といっても一二時間寝れば十分。


だが、自分でこの体を動かすことは出来ない。

念じれば動くと思ったが、微動だにしない。


総括するとデッキブラシ生始まって早々、暇なのである。


俺のいる場所は船で、どうやら物資を運ぶ貨物船のようだ。

その貨物船の甲板の掃除用具として使われている。

船員たちはまさか俺が前世人間の意志ある道具とは露知らず使ってくれている。


しかし船とか初めて乗ったわー。海も生で初めて見たわー。見たことねえ鳥が飛んでるわー。

普段は掃除用具入れに入れられて暇だけど、掃除のときだけ割と楽しい。


というかここって異世界だよな??

いや、欧米のどっかだったりするのか?

どちらにしろ憧れの転生がこんなんじゃなにかしようにもなにもできねえわけで……。

なんかの手違いで、"海賊王に俺はなる"さんの船のデッキブラシならないかなぁ。ならねえか。


"やっほー☆元気してるー?あれから一週間くらいたつけどぉ~"


この声は……ギャル女神!?

薄暗い用具入れで自問自答していたら突如不快な声音が裂いてきた。


元気してる??ああ。おかげさまでね!!

"まあまあ、そんなかっかしないで~。この世界はきっとあんたも気に入るって~"

やっぱここって異世界なのか?

"そのとおり~。しかもゲームっぽい世界だよ。マジテンション上がんない??上がるくない??アガるよね~⤴⤴"

デッキブラシじゃなかったらね!!

"というわけでぇ~一通り説明するねー。まずえーとぉ。とりあえずステータスっていってみてよー"

え…まさか。あのテンプレなのか!!?というかただのデッキブラシにもそういうのあるのか!?

"見てみればわかるから☆"


ステータス!

俺は期待しながら叫んだ。

すると頭の中に文字がずざざっと羅列し、情報がインプットされる。


==============

名称 なし

種族 デッキブラシ

レア度…E

レベル…1

生命力(マナ)…60%

生命持続時間…3か月

力…1

魔法力…10

防御力…-20

敏捷力…0

進化力…0%


スキル 念話(テレパシー)弱 鑑定(アナライズ)


称号 「壊れかけのデッキブラシ」「魂の込められし道具(ソウルアイテム)

   「童帝」 「クズ」 「転生者」

===============


おお……弱ぇ……。それよりツッコミどころが多い。

デッキブラシって種族なのか?

生命持続時間って寿命の事!?俺三ヶ月で死ぬのか!!?

壊れかけのデッキブラシってなんだよ!レディオの部分変えるだけでこんなダセえのかよ!

童貞に関しては童貞の帝王みたくなってるし。むしろ誇らしいかもしれない。

クズ……これに関しては何も言えねえ。こうして転生してみると心がリセットされるのか、あの時の俺はどうかしていたと客観視できた。

あとあと、進化力とは!スキルとは!

色々気になるところはあるが、一番気になるのは「魂の込められし道具(ソウルアイテム)」ってとこだなぁ。


これはけっこうレア的な意味なんじゃないの?

"そのとおり~。どんなに平凡な道具でも通常より何十倍もレア~。なんせ魂宿ってるからねえ。能力がダンチ!!しかも成長するし!"

やっぱり!!でも俺のステータスにはレア度Eって書いてあるんすけど、こっちには反映されないのか?

"いやいや、反映されてそのレア度♡"

え。最低ランクは……?

"Fクラス♡"


何十倍でこのレア度……。FとEの間には第四の壁的な超えられないほどの差があるのか。


ちなみに最高レアは?


"SSS(トリプルエス)だよぉ☆"


……地道に頑張りたい。


"小さなとこからコツコツね"


というかギャル女神!!これから俺はどうしたらいいんだよ!

この動けない体で!!俺の寿命あと三ヶ月なんだぞ!!


"ちょいブラシっち~、落ち着いてよ"


ブラシっち!!?


"これからブラシっちは~贖罪も兼ねてぇ色んな所に行ってほしいかなぁ"


贖罪…めんど…じゃなく、それはわかったが具体的にはなにをするんだよ。世界を救うとかごめんだぞ。チートスキルがあるなら別だが。


"あー大丈夫そこまで期待してないからぁ"


……そう言われるとすげー腹立つんだが。


"ま、なんでもいいよー。人を助けたり、魔物を倒したり―。小さいことでも善行をできるだけ積んでいけばー"


……いけば?


"なんかいいことあるかもね♡きゃは☆"


うわぁ。嘘くせぇ。曖昧にしてるあたり絶対なんもないだろ。それ無視して悪の道走ったらどうなんだ?


"パリピのクラブで永遠とパラパラさせる☆"


それ決定事項なのかよ!

そもそも人を助けたりするにも俺ただのデッキブラシだぞ??これでどう助けろと??


"んーまっ。とりま強くなりたいなら~、持ち主というかパートナー探して、「魂の誓約」結ぶことが今後の目標じゃね??"


じゃねって!そんな他人事みたいに!その魂の誓約ってなんだよ。


"「魂の誓約」っつうのは、相手と自分の魂を繋げる……一言で言えば持ち主と一心同体になること。実は魂の込められし道具(ソウルアイテム)単体では強さに限界があるんだけどぉ。

持ち主の力を使えばぁ、もっと能力が解放されるわけよ"


なるほどな。バディてきな人を探せと……俺今世では孤高に世界を一人旅したかったのに……。

だが少なくともこの船には俺の相棒になりそうな人はいねえな。おっさんしかいねえし。


"どっかのパンピー捕まえとけばいいんじゃね?"


適当にいうんじゃねえよ!そもそも俺自分じゃ体動かせねんだよ!


"ん~、ま、気長に待つしかないっしょ!!"


は!?このまま死んだらどうすんだよ!!!


"そんときはそんときぃ~"


ちょっと待てよ!女神の力でなんとかなんないのか!?


"あーし下級女神だからムリ~、そういうわけで、じゃ、あーしそろそろ会議だからぁ!ブラシっち、またね~"

え、あ、ちょ、ちょっと!!


猶予三ヶ月。俺は焦燥感でないはずの汗を感じた。


幼女はしばらくしたらでてきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ