運命のはじまり
雷が大きく鳴り響く夜、シャトレ山のふもとにあるお屋敷にはたくさんの人が集まっていた。
「まだなのか、もう予定刻から一時間も経っているぞ」
「やはりあの予言は嘘だったのだ」
人々はざわついている。
次の瞬間、大きな稲妻と同時に奥の部屋から赤ん坊の泣く声が。
「おぎゃああああ おぎゃああああ」
「生まれましたよ!」「おお!ほんとか!」
あの予言通りか確認するため、メイドに連れられて急いで部屋に行く。
そこには白い布団に横たわる女と、その腕に抱かれながら大きな声で泣く小さな赤ちゃんがいた。
「皆様、わざわざお越し下さりありがとうございます。元気な赤ちゃんが生まれました。」
そう笑顔で話す赤ん坊の母の言葉には耳も持たず、ひたすらに赤ん坊の体をべたべた触って何かを探している。
「あった!あったぞ!背中だ!」
そう一人が叫ぶ。
赤ん坊の背中には黄金色に輝く紋章があった。
「やはり、あの予言通りだ」
「この方はアリア様のご加護を受ける者、我らシエラ族の勇者だ」
「聖戦に向けて備えねば」
その場にいたものが全員赤ん坊に頭を下げ、信仰の言葉を述べていた。
聖戦、それは魔神ジュモンと天神アリアの地上をめぐっての戦いのことでずっと昔から何度も行われてきた。そして地上にはそれぞれを信仰するシエラ族とマゴス族が存在し、聖戦のときには大きな戦いを繰り広げていた。
実は数日前、その聖戦がまた行われるという予言が届いていたのだ。そこには神の加護を受ける者が生まれるともあった。その子はその印として体のどこかに紋章があるという。その者が生まれるとされている日が今日だったのだ。
ちょうど同じころ、シャトレ山から2キロほど離れた小さな小屋から赤ん坊の泣き声がきこえた。
シエラ族のいる屋敷に向かっているギースという若者がその声に気づいた。
小屋の中に入ってみるとわらの上にタオルで包まれている赤ん坊がいた。
「おお、おまえ捨てられたのか、かわいそうに...」
ギースはその赤ん坊を抱いて一緒に屋敷へ向かった。
こうしてシエラ族には二人の赤ん坊が誕生した。
この二人の赤ん坊の出会い、そして聖戦。
これらの出来事が二人の運命を大きく変えてしまうことになるとは、何も知らない赤ん坊たちは何もこわがることなくただひたすら未来に向かって泣いていた。
初投稿です!緊張する~(笑)
ぜひこれからも読んでいただきたいです。
次回は赤ちゃんたちが成長しています。どんどん物語動き始めますよー!
次回もよろしくお願いします!