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災厄の蟲使い 後編  作者: トワ
化け物の街
3/14

街の中

ゼフは現在、玉座の間に座っており、隣にはアリシア資料のようなものを抱えている。目の前には自分の奴隷や元皇帝、兵士達が膝まづいている。静寂が部屋を支配する中、アリシアが最初に口を開く。


「では、全員集まりましたので、これから蟲都の今後の方針を報告させていただきます。 最初に蟲都の民たちは不安が溜まっておられることをご報告致します。 おそらく暴徒化するのも時間の問題でしょう」


「アリシア、それは大丈夫だ。 奴らには恐怖を植え付けてある」


「確かに少人数ならそれも可能でしょう。 しかし、バーナレクは10万人を超える大都市です。 おそらくそう簡単なことではありません」


「だったら殺せばいい。それが無理なら、現在進めている施設ができたらそこに入れろ。 蘇生はいくらでもできるからな」


「それはいけません。 彼らも人間の前に1つの生物です。 絶対にそのようなことはいけません」


「奴らが生物だと? ゴミの間違いだろ」


「ゼフ様!」


「この話は解決した。 次に進め」


王の言うことは絶対である。それをただ聞いてるしかないアリシアやエリシュロンはそんな自分達を悔いる。


「わかりました…… では、次に移らさせてもらいます。 これはゼフ様のご提案で進めている人間牧場ですがあと半分となりましたので報告させてもらいます。 それと、魔族の領域を越えた先の街に使者を送りました。 これでより良い関係が築ければ――」


「ククククク、良い関係が築ければだと? お前は何を言っているんだ」


「違うのでしょうか?」


「奴らは生贄だ、おそらく魔族が居なくなったことで俺と話し合いをする流れになるだろう。 そこで最初は仲良くしてやって、もしもの時に全てを擦りつける。 その程度しか他の街に魅力はないからな」


「わかりました、ではその方向で進めていきたいと思います」


「ああ、頼んだぞ。 それと俺が蟲都を離れることがあるだろう。 その時には代理としてアリシアを皇帝代理としておく。 その場合は彼女に従うように」


ひざまづいている者たちは頷き、返事をしたのを確認するとアリシアが口を開く。


「今回は早く決まりましたので早く終わります。 この街にはまだまだやることがありますが、それは少しずつ決めていきましょう」


それを言うとゼフが退場していく。その後、アリシアやエリシュロンが足並みを揃えて退場していくのだった。



✳︎✳︎✳︎



ゼフは部屋に戻ると椅子につき、息を吐く。今回は無理やり早く終わらせたが、王というのは思った以上にしんどい。勿論殆どのことは押し付けているのにも関わらずだ。


(これなら冒険者をやっていた方が楽だったな)


そんなことを思っていると服の中からクイ2号が出てくる。クイ1号はグリムと戦った時に死んでしまった。 グリムに殺された蟲は自分では蘇生できない。だから、こうして2号を召喚したのだ。


「全て俺の失敗だ…… できればお前を殺したくなかった。 だが、終わってしまったことは仕方ない」


クイは甘えるように顔を近づけるが、これは2号でありそう命令したからに過ぎない。


(この先へ進むなら俺は沢山の蟲を失うのだろうな。 だが、ここまで来てしまったのならやるべきことをやらなければならない。 それに今の俺は3体の終焉種を召喚している。 おそらく負けることはないだろう。 いや、違うなもっと召喚しなくてはいけない。 近くに透明化で待機させている蟲はもっと強くしなければ、またあのようなことになる)


ゼフはそう思いながら召喚魔法を使おうとすると、扉がノックされる。一旦魔法を使うのをやめ、部屋に入るように言うと、メイドが入ってくる。手には豪華なカップをたらいのようなものに乗せている。


「どうした?」


「はい、蟲王様が疲れていると思いまして極上の茶をご用意させて頂きました」


「そうか、ではそこに置いてくれ」


ゼフは自分が座っている机を指をさす。メイドは命令に従いゆっくりと近づいてくる。


「失礼します」


茶を机に置いたメイドはそこから離れると後ろで待機し始める。


「もう出て行っていいぞ」


「いえ、私はメイドですのでゼフ様の身の回りの世話をさせてもらいます」


「必要ない」


「それにゼフ様がわざわざカップを持って来るという面倒を省くためにもそれまでこちらでは待機させてもらいます」


「そうか、ならすぐ飲もう」


ゼフはカップを手に持ち一気に飲み干す。程よい苦味が良い非常に美味しいお茶だった。そして、メイドにカップを渡そうと振り向くと、急に胸が苦しくなる。


「ぐっ…… なんだこれは……」


「どうされたのですか? もしかして苦しいですか?」


メイドの表情は言葉と違い笑顔が見える。


「そ、そうか…… 毒か……」


ゼフはそう言いながら力尽き、床に転がり落ちる。メイドはすぐにゼフの脈を調べ死んでいるのを確認するとメッセージの魔法を使い始める。


「こっちは終わったわ。今から逃げるからそっちの準備をお願い」


メイドはそう言うと、そのまま部屋を後にするのだった。

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