さようなら、貴方
適当に書いてすまない(普通の謝罪
「さようなら」
「待って!待ってくれ!!」
「いいえ、待てないわ」
「遅れた事は謝る!謝るから!頼む!!婚約破棄はしないでくれ!」
「……」
ドア一枚挟んだ状態で女に謝る男。
そしてそのドアの向こうにいるのはその男の婚約者らしき女。
一見、男が何かの大事な日に遅れ女が怒り、部屋に閉じ籠り婚約破棄を言い出した様に見える。
しかし、その光景も女の次の言葉で胡散するだろう。
「貴方より良い人を見つけたの。貴方より優しくて心強い人よ。それに比べて貴方は鈍臭いし力も無い。私の噂を知ってるでしょ?『取り替え令嬢』って。私は良い婚約者をずっと選んで来たのよ?そんな私が貴方を捨てないなんて何を根拠に思ったのかしら」
「俺は!それでも!!」
取り替え令嬢…それは婚約者を好きな様に取っ替え引っ替えして来たと言う悪女の話だ。
その悪女がドアを挟んで男の目の前にいる。
そんな名称を持つ女だと告げても男は食い下がってくる。
そんな男に呆れた様な溜息を一息吐き、顔は見えないがきっと笑っているであろう女が言った。
「貴方なんて好きじゃない」
「な!?」
「貴方と歩くのがいつも辛かったわ、貴方と一緒に回る綺麗な花園も、貴方とじゃなきゃもっと楽しかった筈だわ。貴方が私の隣にいるから私は幸せになれない……わかる?それだけ貴方は私に不幸せを運んで来るのよ?……そろそろ、貴方のそのくだらない愛で私を拘束するのをやめて頂戴」
女が、そう言うと何処からともなく現れた執事達に男は拘束され女のいる部屋からドンドン離されていく。
男は手を伸ばしながら叫んだ。
「俺はあの噂なんて信じてない!!俺は……俺は!お前を愛してるから!!また明日此処に来るから待っててくれ!!」
そう男は告げ執事達に連れて行かれた。
その場に残ったのは女のある一言だけだった。
「本当に馬鹿な人」
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その後男は女に会う事は叶わなかった。
別に執事達に阻まれたのではない……言うなれば生命の短さに阻まれた。
女はその日のうちに死に絶え、直ぐさま火葬をしてしまった様で女の姿を男は見ることはできなかった。
葬式も男を除いてやったらしく、男が女を訪ねた時にはもう何も残って居ない状態だった。
しかし、遺されたものは有った…それは彼女からの男は向けられた一つの便覧だった。
その便覧にはピンクのカーネーションの花の栞が入っていた。
男はそれを胸に抱え大声で泣き叫んだ。