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58 天翼族のミュゼール

ひさ~しぶりの営業日でっす!


朝からハイテンションで朝食作るのにキッチンで鼻歌歌ってます。


ちなみにメタルじゃないです・・・そこまで激しくない(笑)


米炊いて~焼き鮭とおひたしと納豆!味噌汁作って~っと


和食でいっきま~す!


まぁ、基本通りに作ればそれほど時間はかからない、変にアレンジするから時間が掛かる・・・


作りながら、今日のおつまみとおススメの酒を考えてるのです。


そしてミスルトウで食えばいいのにわざわざこっちに来てる三人組の姿が、


まぁ、例によって勇者御一行である。


「ハルー、今日の朝飯は?」


「カズキさん、さっき食べたでしょ」


「食ってねーよ!ってかこのやり取り止めようぜ」


げんなりした顔のカズキだったが


「思いっきり『和』の定番朝食だよ」


「あぁ~、いいねぇ~、よくぞ日本人に生まれけりって感じで」


「ふむ、という事はアレが付くのか?」


「なっと「腐れ豆」


イッセーがセリフに被せる


「イッセーはほんっとに、なっと「腐れ豆」嫌いだな」

「条件反射で被せてくるな」

「好き嫌いは無い方なんだが、アシッドクロウラーの粘液みたいなのを出す豆だぞ」

「イッセー、お前日本人だよな・・・そのツッコミはこっちの世界に染まってるぞ」

「アシッドクロウラーなんて日本にいねーだろ」


そんな話をしながら、用意した朝食をテーブルに並べる、そして2階に上がりフィリアンとハンティに声を掛ける。


「二人とも朝食できたぞぉ、そろそろ起きようか」


「はいです!ハルさま、おはようございます」「おはようございます、大丈夫です、今下に降りますね」


今日は二人とも寝起きがいい・・・って悪いのは俺か(汗)


俺はテーブルに戻って二人を待つ。


一応三人組にもお茶を出してやる。今日はサントリー緑茶 伊右衛門 濃い味



フィリアンとハンティもテーブルに着く。


「「「いただきます」」」


「ハル~、この店は夕方からだろ、多分忙しくなるぞぉ」

「まぁ、休んでたからね」

「存在を忘れられてたりして」

「ォィォィ・・・」


そんな話をしながら俺は開店準備に入る。


まぁ、やる事なんていつも通り、席の方の掃除はハンティが率先してやってるので任せて大丈夫。


フィリアンと俺でつまみとソフトドリンクの準備をする。


今日のつまみはナッツとソーセージ、お手軽である。


みんなの昼食はお手軽パスタで簡単に済ませて・・・営業再開なのに手抜きが過ぎるんじゃないか?ってカズキあたりに言われそうだが(汗)


ミスルトゥの方は、まぁ任せて大丈夫だろうと丸投げで、


たいして仕事をしてるわけでもないんだが時間ってのは容赦なく過ぎていく。




そんなわけで久しぶりの営業です!


オープンの札に変えて・・・って、Oh!数人並んでる!


「お待たせいたしました、いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」


お客様を店内へ、ハンティがおしぼりを配っていく。


冒険者ギルドのギルマス、ダンテさんと冒険者3人、ドワーフの棟梁と職人3人、まぁ、常連さんだ。


「とりあえずエールとつまみ4人分」


「やっと再開したわい、これで4人飲めるブランデーをボトルで出しとくれ、腸詰も4人前じゃ」


そう言って金貨を見せる


「かしこまりました、急いでお持ちしますね」


フィリアンは注文を聞いた時点で動き始めてエールの用意を、俺はソーセージを茹でる


「フィリアンそれ出し終わったら、棟梁にはクラブ ド レミーマルタンを、グラスは俺の方で出す」


そう声をかけてソーセージとマスタードを皿に乗せる。すかさずハンティが皿をもって席の方に持っていく。


少しブランクが空いたにもかかわらず、いい連携が取れている。


持っていくグラスはバカラのバッカス ブランデーグラス


それと同時にレミーマルタンを持ってくるフィリアン、いいタイミングだ。


最初の一杯は俺が注いでいく、あとは勝手にやってくれ(笑)


「ほう、いい匂いだのう」


そうだろうそうだろう、この酒は特級ランク、畑の中でも上位2区画で採れた葡萄だけを使った贅沢なブランデーだ。


ご機嫌でグラスに口をつける。


「やっばりブランデーちゅう酒はええのう!」

「ドワーフの火酒も霞んで見えるわ」

「あれはあれでいい!」

「お前は酒精があれば馬の小便でもいいんじゃろうが」

「いいわけあるかぁ!」


あいかわらずドワーフ組は騒がしい(汗)


冒険者組からもエールの追加が入ったり、いい感じに盛り上がってる中、ドアが開き一人の女性が入ってくる。


長めの金髪ポニーテール、そして何より目を引くのは羽ってか翼、天翼族か。


金色に輝く6枚の翼にバトルドレスという衣装、コルセット部は虹色の光沢も見える金色?


儀礼用と言うには実戦向けの戦杖と派手な盾まで持っている。見た感じ同じ材質


オリハルコンかよ・・・どこのお嬢様だ?


「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」


風変わりなお客様だが異世界だからと納得して声をかけるとその女性はカウンター席に座る


「マスター、異世界のお酒が飲めると伺ったのだけれども」


「取り扱っておりますよ、お目当てのお酒はございますか?」


「マスターが一番おいしいと思う日本酒をくださいな」


ん?なんだ・・・違和感を感じる・・・


あくまで直感だ、生半可な酒では満足してもらえないという感覚にとらわれる、


バーで日本酒頼むのもなんだかなぁとは思うが、言われたからには出すのが俺流、


うまい日本酒かぁ、色々あるが、ここはアレの出番だろ・・・俺の秘蔵の晩酌用


楯の川酒造の百光


有機栽培の「出羽燦々」という米を精米歩合18%という磨き抜いて作った純米大吟醸、


とてつもなく澄んだ奇麗な味の日本酒、程よい甘みと豊かな旨味、長い余韻、


俺はこれを超える日本酒を飲んだことが無い、大絶賛の銘酒である。




「お待たせいたしました楯の川酒造『百光』でございます」


日本酒だがあえてワイングラスで出す。つまみは粗塩一択だ、小皿に軽く盛ってお出しする


「ありがとう、粗塩って所も流石だわ」


彼女はそういってグラスに口をつけ一口飲んで目を丸くする


「とっても美味しい!」


いい笑顔いただきましたぁ!俺は軽く笑顔で返す


彼女は終始ニコニコしながらグラスに口を付け、時折目を閉じ深く味わっている。


日本酒好きねぇ・・・中身はまっとうな異世界人ではなく・・・むしろ俺達側の人か?


そんな事も思うが、口には出さず店内を見守るのみである。


彼女が2杯目を頼んだ頃、再び来客・・・ってお前らか!


「ハルー、喉乾いたぁとりあえず生中~」

「俺はいつもので」

「フィリアンちゃーんオリジナル作って~」


こいつら・・・ほかの客がいるときに生中はやめろとあれほど言ってんのに・・・


「なんだギルマスも来てたのか」

「なに?サボり?」

「今日は終業だよ、きっちり働いたっての!お前ら関係で!人聞きの悪いこと言わんでくれ」


お前ら・・・他のお客様に絡むなよぉ・・・頼むぞぉ・・・


そう心の中で念じながら注文通り酒とお冷を出す


「なぜ俺だけ水?」

「お前の『いつもの』はお冷だろ?」

「ちげーし」

「この時間ラーメンはやっておりませんが?」

「・・・なんかすまんかった」


このやりとりがツボにはまったのか声を上げて大笑いの女性


「あはは、ダメ、バカ過ぎ、バーでコントのサービスって」


「ハルのせいでお笑い要員になってるじゃんか」

「あれ?真面目な時ってあったか?」


大げさに首を傾げる


「あるだろ?ほらあの時とか」

「あの時?」

「え~っとなんだったかなぁ、ほら、アレだよアレ」


必死に何かを伝えようとするカズキ


「アレアレ詐欺って新しいな・・・」

「いや 別に詐欺じゃねーし!」


「ダメ・・・おなか痛い・・・あはははは」


「ウケてんぞ、良かったなカズキ」

「望んでねーよ」


「小芝居じゃなくて素でやってるのがスゲェよな」

「あぁ、ハルが絡むといつもの勇者が崩壊するからな」


マサノリとイッセーがこそこそ言ってる


「天翼族のお嬢さんにもウケた事だし、真面目に注文をしてくれませんかね」

「俺・・・何時ふざけたんだろ・・・まぁいいか、ハイボールにするわ」


ほらまた違う注文を・・・だからお冷で合ってんじゃねーか・・・と、内心思う。


「バーボンとスコッチどっちがいい?」

「今日はスコッチ、そだ、前言ってたバランタインの30年で」

「承りました」


俺は手早くタンブラーにバランタインを注ぎソーダサーバーから炭酸水を注ぐ


「お待たせしました」

「ほんと~にな」

「誰のせいだと・・・」

「ハルのせいだよね!」


あきれ顔で言うカズキ


「隣でケタケタ笑う女性に心なしか満足げなカズキでした。」


・・・とナレーション入れてやる


「あのなぁ~」


「冗談はこのくらいにしとかんとお嬢さんの腹筋が崩壊するで」


マサノリの軽いツッコミが入ったところで笑い過ぎで飲めてなかった酒のお代わりが入る


ほんのり頬を赤く染めながらおいしそうに飲んでいる、こっちはこのままやらせておこう。



ドワーフ組からスピリタスの注文が入る、君達好きだね・・・ドワーフ殺し


「ここに来たらこれを飲まんとなぁ」

「だな、この、頭をどつかれたような衝撃がたまらんわい」

「ガハハハ、もう明日の仕事なんてどうでもよくなるわい」

「そんで工期が遅れて残業するんじゃの」

「残業代でまた飲みに来るか」

「お前ら、わしの前でよく言えるな」


苦々しい顔の棟梁だったが飲むペースはみんなと変わらない


手酌でやってるし放置でいいわ、そう思っていたら天翼族の女性に声をかけられる


「ねぇ、マスターって日本の方?」


唐突な質問だな・・・


「そうですよ、勇者召喚に巻き込まれました」


「あらら、私も中の人は日本人だよ、私の場合はやってたゲームのキャラになっちゃった感じ?」


ほほ~、こっちも定番だな、勇者召喚は久しく行われてなかったようだが、こっちに来てる地球人は他にもいそうだな。


「ギルドで勇者PTの一人がバーを営業してるって聞いてね、もしかしたらあるかなぁ~って」


日本酒が飲みたかったようだ、中の人はまさか男か?


「世界観は似てる所もあるけど、まるで違う世界なんでやりにくいわ」


「なるほど、ゲームのキャラになって別世界を楽しんでると」


「システムがほとんどそのままってのが助かるわ」


「レベルとかはゲームのまま?」


「そうね、一応ゲーム内ではカンストしてたから、でも上限決まってるのよね」


ん?俺達とは違うな、俺たちレベル上限今のところ無いし


「マスターの方のシステムってどんな感じ?」


興味深そうに聞いてくる


「スキルポイント制で取得したいスキルに対してポイントを振っていく感じ」


「それいいわね!私の方はジョブレベルとメインレベルがあってジョブのレベルも上げていく感じだから面倒で」


「転職はフリー?」


「うん14個の戦闘系ジョブから選んでいく、戦闘中じゃなければいつでも変更可能よ」


面白いな・・・このシステムのRPGって確か・・・


「生産系スキルは別に上げなきゃいけなくて面倒なのよね、でもLV1で放り出されなくてよかったわ」


俺はLV1で放り出されましたが?なにこの不公平さ・・・


「それでギルドに登録して冒険者で生計を?」


「そそ、ゲーム内ではトップクラスではなかったけどそれなりに強かったし、装備やアイテムなんかもそのままだったし」


ずるいぞぉ~、スタート地点から待遇が違う!


「ほほ~興味深いですね、それだけの強さがあれば勇者PTに合流したりとか?」


「しないわよぉ、ゲーム内より金策楽だし、ぼちぼち稼いでお酒が飲めれば満足って感じ」


・・・思考が俺寄りだ、気が合いそうだな(笑)


「ここに来れば日本酒が飲めるってわかったから今後は贔屓にさせてもらうわ」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」


そこでカズキ達が話に入ってくる


「へぇ、お姉さんも同郷かぁ」

「同じ冒険者同士仲良くしようね」

「何かあったら手を貸しますよ」


こいつら盗み聞きしてたな・・・


「ハルに頼めば和食も中華も出てくるよ」

「家電まで用意できるから快適だよ」

「一家に一台欲しいよね」


欲しいのは家電か・・・俺か?


「へぇ、いいわね、依頼こなして買いに来るわ」

「え~っと今更だけど俺はカズキ、こっちが賢者マサノリと剣聖イッセー、あっ俺は勇者ね」

「あらあらご丁寧に、私はミュゼール、よろしくね」


「ハルー、ミュゼールさんにもう一杯、俺の奢りで」

「俺達にも同じ酒頂戴」

「つまみは刺身盛でヨロシク」


こいつら・・・百光は俺の秘蔵の・・・ってまぁいいか


「ハルも飲めよぉ、もう新しい客来ないべ」


気付けば結構な時間が過ぎてる・・・まぁいいか、同郷の人に会えたんだ


「フィリアン、後は任せて大丈夫?」


「大丈夫ですよ、ゆっくり楽しんでください」


そんなわけで俺も加わって大騒ぎになる店内だった・・・


翌日、調子に乗ってフェアリーズネクターまで出した事を、ガックリ膝をついて後悔する俺の姿があったという・・・


「あぁ・・・やっちまった・・・」

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