30 風邪とベッドと玉子酒
「フィリアンちゃん、オリジナルちょ~だい」
「【フィリアン】おかわりで」
「こっちにも一杯!」
・・・それ以来、新カクテル【フィリアン】の大ブームが起こる・・・
俺も作れるんだが・・・フィリアンに注文が入る。
そりゃぁ、俺が作るより可愛いフィリアンが作る方がいいかもしれんが・・・
ちょっと嫉妬心も入って面白くない・・・あぁ俺って狭心だな・・・
カクテルよりはストレートがいいっていうドワーフ組の相手は俺がしているが・・・
ってかお前ら騒ぎすぎ・・・
「フィリアンちゃ~ん、こっちにも2つ」
ここはガールズバーじゃないんだが・・・
心の中でツッコミ100万回・・・
まぁ、売り上げになるから大歓迎ではあるんだが・・・
「こりゃ、グラスランドの所から仕入れてこなきゃだな・・・」
元々自分用に買ってきた分しか無かったのでこのペースだと在庫も危うい・・・
近々集落の方へ遊びに行く事に決めた。
そんな感じで一過性の流行りか永久的かは別にしてミスルトウは盛り上がっていた。
・・・数日後の話だ。
疫病って言っていいくらいの速さで風邪が蔓延しているらしい
その煽りをミスルトウも受けていた・・・
「はるさま~、なんかからだがあついです~」
「ハル様、私もどうやら風邪をひいてしまったようで・・・」
「あ~、俺のポーションでも治らないし・・・頭痛いです・・・」
そう、ミスルトウでも流行り風邪が蔓延中・・・俺は?全然大丈夫ですが?
今、馬鹿は風邪ひかないって言った奴、表に出ろ!
この国、トワイラインでは現世で言うインフルエンザのような風邪が大流行中らしい・・・
その上、今までの薬が効かない厄介な物らしい。
一度かかったらかからなくなるらしいが・・・身体に抗体ができるからかな?
俺は医者じゃないからよくわからん・・・
今できる範囲として、アマゾンで買える市販の風邪薬がどれだけ効くか知らないが、一応飲ませておく。
病気耐性を持つ者とか、レベルの高い冒険者は素の抵抗値が高いからかかってないくらいか・・・
スラムの方で医者にも栄養にもありつけない者からは死人も出てるという・・・
こうなって来ると客も来ないから臨時休業を決め込む俺、
とりあえず俺の部屋にベッドを追加して三人を寝かせる・・・隔離病棟だ。
もう少しで社員寮もできるって言ってたが、まだ完成していなくてフェルとハンティの寝床がリビングのままだったからだ。
俺はどこで寝る?リビングにでも行くさ・・・
とにかく栄養を摂らせなきゃと果物のすりおろしやフルーツジュース、アイスクリームなんかを用意する。
風邪で食欲が無くてもこれなら食えるだろ・・・的な感じだ。
俺が風邪をひいたときに食いやすかったのはアイスクリーム。
乳製品だから栄養もあるし・・・って神の手を持つ医者の漫画で読んだ気がする。
そんな感じで病人の世話をする俺・・・俺が老いたら絶対に介護させる!
そう心に誓う俺だった・・・
俺がバタバタやってるのを見た勇者達が心配して来てくれたんだが、彼らの回復魔法でも病気は管轄外らしい。
使えないな・・・回復魔法・・・
下手をすると逆にウィルスが元気になって悪化するって言ってた。
本人の体力次第になってくるわけだ。
賢者も病気の方を研究すると言って3人を診察して唾液等のサンプルを持って部屋に籠った
「ハル、電子顕微鏡と研究セットを」
あのなぁ・・・俺はドラ〇もんか!
いくらアマゾンでも・・・って、あったわ・・・お高くございますが・・・
賢者に王金貨数枚を出してもらい顕微鏡を渡す
「助かる、俺の薬学スキルで特効薬作って見せる!そしたら報奨金で今の分は取り返す!」
投資分はきっちり取り返す算段らしい・・・こいつらしいか・・・
まぁ、賢者を名乗るくらいなんだから期待している。
俺はフィリアン達の方もちょくちょく様子を見に行きつつ冷えピタを替えたり水分補給をさせたりしている。
「ハル様、忙しい時に申し訳ありません・・・」
フィリアンの悔しそうな表情・・・俺はフィリアンの冷えピタを交換し頭をそっと撫ぜる。
「こんな時は元気な奴に甘えてればいい。治ったら3倍働いてもらうから」
とりあえずそう言っておく。
実際に3倍働かれたら俺の仕事が無くなる・・・俺は今の仕事が楽しくてやってるのだ。
俺の趣味を奪うなんて許さん!
「3人とも汗で酷い事になってるからとりあえず汗拭いて着替えな」
そう言って新しくパジャマとタオルを用意する。
一応フェルの方をカーテンで仕切る
「本当にすいません」
「はるさま、ありがと~」
「いいからいいから」と手を振り店の方に戻る。
ん~、俺しかいない店内って久しぶりだな・・・
1人なのは最初の頃だけだった、あの時は感じなかったが、フィリアンとハンティが居なくなると急に広く感じる。
ジグソーパズルのピースが足りない感じだ。
「風邪か・・・アレを作るかな」
まず、日本酒の定番たまご酒を作る
一人前だと
日本酒 200cc
卵 1個
砂糖 大さじ2
おろし生姜 小さじ1/2
日本酒を沸騰させてアルコールを飛ばした後、卵、砂糖、おろし生姜を入れてかき混ぜるだけだ
卵を泡立てるって作り方もあるんだが、それより少し溶き卵感がある方が俺は好きなんだが、そこは好みだろう。
そして、海外版たまご酒とも言える【ホット・ブランデー・エッグ・ノッグ】だ
アルコール分を飛ばして作る日本のたまご酒ならフェルやハンティもまぁ飲ませられる。
フィリアンには【ホット・ブランデー・エッグ・ノッグ】だ
レシピはこんな感じ
ブランデー 30ml
ダークラム 15ml
シュガーシロップ 小さじ2杯
卵 1個
牛乳 60ml
ナツメグ 少々
卵黄と卵白に分けて別々に泡立て、別の容器に。
牛乳も温めておく
シェーカーにブランデー、ダークラム、シュガーシロップ、卵(卵黄+卵白)を入れてしっかりシェイク
シェイカーからホットグラスに注ぎ温めた牛乳を入れて軽くステア
最後にナツメグを掛けたら完成だ
俺は味見をして一つ頷く
「ふむ、いいだろう」
そう呟くと俺の部屋で寝てる3人の所に玉子酒を持って向かった。
扉を開けてそっと中を見る
苦しそうだが眠れてはいないようだ・・・
起きてるのを確認すると
「ん、いい物を持ってきたぞ」
そう言って3人に手渡す。
「俺の故郷では風邪の時はこれを飲むと元気になるんだ、熱いから気を付けて飲むんだぞ」
頷く3人
「これ飲んでゆっくり寝な、よく寝れると思うぞ」
とだけ言って店に戻る
風邪をひいてる時の味覚なんて微妙なもんだ、美味い不味いなんてのはこの際どうでもいい
「早く良くなれ、寂しいじゃないか・・・」
一人呟く俺だった
「俺はどうするかな・・・」
厨房で今日の昼飯を考える。
とりあえず3人のお粥は作っておくとして・・・
ん~、残り物で適当に済ますか・・・
そんな事を考えてると勇者達が店に入ってくる。
「ハル、お疲れ」
「昼飯リクエストしていい?」
「なんか肉が食いたいな」
「何を作るか悩んでたんだ、言ってくれていいよ」
「「「ラーメン」」」
ふむ、G系が食いたいかな・・・ニンニクマシマシで・・・
「ラーメンの種類は?」
「野菜マシニンニクマシマシアブラカラメ」
「全マシマシ」
「野菜マシアブラカラメ」
見事にG系だ・・・
「ちと時間貰うぞ・・・」
そう言って厨房に入った
さて、スープ作りから入るか・・・
市販の濃コク醤油ラーメンスープと白湯ガラスープを合わせて使う事にする。
肉の方は時間短縮の為、圧力鍋で作る事にする。
そういえばベヒモスの肉がまだあったな・・・
オリハルコンのミートハンマーでベヒモスのバラブロックを満遍なくどついていく
煮る時に刻み背油も大量に突っ込む
G系極太麺で検索すれば手頃なのが出てくるからそれをチョイス
大鍋で野菜を茹で、フードプロセッサーで刻みニンニクを大量に作る・・・
煮豚さえできれば後は盛るだけ・・・
家でG系も余裕で作れる。
「3人の様子はどうかな・・・食えるようならお粥持って行くが・・・」
そう呟いてそっと自室の扉を開ける
玉子酒が効いたのかいい感じに眠ってる3人
「起きた頃にまた来るか・・・」
そう呟いて厨房に戻った。
煮豚の方もいい感じに出来上がりの時間かなって所で麺を茹で始める。
丼にスープを用意して麺の茹で上がりを待つ
煮豚の方もいい感じだ・・・
盛り付けたら完成だ。
勇者達に持って行く・・・
「悪い、煮豚に時間が掛かった」
さぁ!実食だ。
各々顔を見合わせると無言で食っていく・・・
俺の方は油とかえしで作った追加背油を別容器で持って来る。
それに野菜をつけながら食っていく・・・
「ハル!俺にもそれをクレ」
カズキ達も気になったらしい・・・
俺が持って行くと同じようにつけながら食っていく。
店中にニンニクの匂いが漂う・・・消臭スプレー必須だな・・・
とりあえず、カズキ達の勢いで俺もちゃんと飯を食えた。そこは感謝だな・・・
「3人の具合はどうだ?」
「ん~熱は下がらないかな、栄養はかろうじて取れてるけど・・・」
「市販の熱覚ましもあんまり効いてないみたいだな」
市販薬の話に触れると賢者は何かを考えはじめる・・・
「だな、無駄に体力使わないように玉子酒飲ませて眠らせたけど」
「この風邪も魔族の攻撃とか?」
「流行り病にまで魔族ってか?いくらなんでも・・・」
「一応、そっちの方でも調べてみるか・・・」
勇者一行の方針は決まったらしい・・・頑張れ勇者!期待している(こんな時だけ)
3人は最後の一滴までスープを飲み干し店から出て行った
俺は洗い物を始める・・・いつもならハンティがいるんだが・・・
ほんっと居るのが当たり前になってるなぁ・・・
そんな時後ろから声を掛けられる
「はるさ、あ~おなかがすいたかも~」
足元がふらつきながらも自力でここまで来る
「ハンティ、無理せず俺を呼びなさい、俺の部屋にここと繋がるインターホンついてただろ?」
「おトイレにおきちゃったから・・・そのままきたの」
「そうか、他のみんなは起きてるかい?」
「フィリアンおねぇちゃんとフェルにいはおきてたよ」
そうか、なら持って行ってやるか・・・
「3人分持って行くけどハンティは一人で部屋に帰れるかい?」
最悪、俺が運んでやるか・・・そう思っていると
「いまはだいじょうぶ、ひとりでいけるよ~」
と言ってゆっくり部屋に向かっていった。
俺はお粥を温めなおす。
お粥に加え、オカカ梅干し、切り昆布、ほうれん草のおひたしを小皿で3人分
お盆に乗せて部屋に向かう・・・
「調子はどうだ?食べられそうか?」
お盆を各ベッドに持って行く
「お手数おかけしてすいません」
「ハルさま、ありがとうです」
「ハル様、ありがとうございます」
謝らなくていいし礼は治ってからにしてくれと思いながら
「食える時に食ってくれ、うちの家訓は『食える時に食え、負ける者それは食わぬ者』だ」
冗談みたいな家訓を言って厨房に戻る俺
まぁ、休みの日もレベリングだのなんだのと動きたがるから、この機会にゆっくり体を休めてくれ。
客の入りもあるから、このまま続くとしんどいんだが・・・
そう思う俺だった・・・
次話
発生源と侵入経路




