見えない敵との果てなき闘い でもたまに見える編
主な登場人物
わたし……語り手。アイスクリームが好き。しかしお腹が弱いのでたくさん食べられない。でも喰う。
猫……先日八月八日で、我が家に来てから半年が経過。すっかり大きくなった。
猫の粗相がおさまった……と前回書いたけれど、正しくはきちんと終結したわけではなく、月イチくらいで布団に失敗をする。だいたい月初めに起こるようなので、十日あたりまでは気が抜けない(しかし、なかなか防げない)。
そんなわけだけれど、ともかく日常の平安を取り戻しつつある我が家、我が家族とその猫。
しかし、猫を飼う大変さはまだほかにもある。
うちの場合は、とにかく散歩に出たがること。
これは今まで飼っていた猫もそうだったのだけれど、とくにも雄は縄張り意識があるので、外へ出てマーキングをせずにはいられない。
しかし、我が家のりと氏はすでに取るものを取っているので、マーキングの時の動作――しっぽをまっすぐにあげておしっこをスプレーする、というのができない。いや、動作自体はするのだけれど、おしっこが出ている気配がない。
でも本人は「してやったり」な気分になるのか、家の車や植木などにせっせとデモンストレーション。
実際は出ていないわけだから、どれほどの効果があるのか不明だが。
我が家の猫はリードを付けて歩くお散歩なので、わたしも一緒についていくのだけれど、猫が満足するためには一時間くらいは外にいなくてはならない。仕事の関係もあるので、でかけるのは勢い夜となり、だいたい八時半前後から一時間くらい闇の中、ご近所を徘徊することになる(そのうち職質されそう……しかし、そういう土地柄でもない。田舎だし)。
りと氏が家の周りを散歩するようになってから、近所在住の猫たちも微妙に反応し始めた。
わたしの仕事場の入り口の扉には、しっかりマーキングされており、とにかく匂いがする。消えたかなーと思うと、補強されている。まめだな、おい。
また、庭の隅っこにそれはそれは立派な「落とし物」をこれ見よがしにしていった輩もいた。砂をかけずに、見ろと言わんばかり。
ま、うちの猫はまだ子供だから、どういう意味なのかイマイチ分からずに、キョトンってしていたんだけど。
とにかく、近所には猫がいるらしい。けれど、姿は見えない(この時は)。たしかすぐご近所のお家には一匹いた。雄のトト。それぐらいしか思いつかない。自分が知らないだけで、実はわんさか住んでいるのだろうか。
夜の散歩でも、たまに気配を感じるのか、りとは尻尾をブラシみたいにふくらませたりする。うなるのは、わたしが抱っこしてから、というあたりがヘタレ。
三月から始まった夜の散歩。四月のある晩、近くの運動場を散歩していたら、りとの足が止まった。
うなりはしないが、地面にペタッと伏せた。
りとの視線の先には街灯があり、その下に生き物がたたずんでいた。
それは、猫にして大きく犬にしてはなんだか丸っこいシルエットだった。毛は白いような茶色いような……。
「タヌキ!!」
狸だった。田舎とは言えそこそこの住宅密集地に狸出現!!
わたしとりとが戸惑っているうちに、タヌキはすすーっと行ってしまった。
……狸、どこから来たんだろう(そしてどこへ行ったのだろう)。
そんな狸との邂逅の後、家の敷地ギリギリのところと、散歩コースで見慣れぬ糞を見つけた。木の実の種らしきものがたくさん含まれている……たぶん、先日の狸のものだろう。
狸もまた、テリトリーを主張しているようであった。
私「家の近所でタヌギ、いだったー!!」(いえの近所に狸が居た!)
兄「んだってがー。おれはえのまえでキヅネみだった」(そうだったか。おれは自宅の前で狐を見た)
てな会話をした。意外と野生動物多いな!!