見えない敵との果てなき闘い 開幕戦
主な登場人物
わたし…語り手。甘いものが好き。
旦那…夫の人。短気。
娘…このたび、お姉ちゃんとなる。
猫が大失敗を起こす少し前。
我が家に来てすぐになじんだ猫のりとは、家族のアイドルになった。
もとから猫好きだったわたしや、動物を飼いたがっていた娘は言うに及ばず、何より驚いたことは旦那が翌日猫じゃらしやボールなど、おもちゃ数種類を買って帰宅したことだった(百均のだけど)。
あまり猫を飼うことに積極的ではない、むしろ反対……と思っていたので、夫のこの反応に正直驚いた。とにかく猫と仲良くなりたかったらしい。※いまだ片思いだが。
家族の会話は猫が中心になるのに、さして時間はかからなかった。生まれてこの方、一人っ子だった娘の呼称は「お姉ちゃん」になった。毛むくじゃらな弟ができたからだ。
猫は家に来た翌日、早速病院へ連れていった。実家の歴代猫からお世話になっている病院の先生の奥さんは兄の同級生で(兄の同級生は地元に多く残っている)、わたしが受付へ行くと、
「ついに飼ったのね〜? 実家の猫ちゃん?」
と、尋ねられ、我が家のですと照れながら伝えた。
さて、診察ではわかったことは体重は二キロ強、生後は四ヶ月ほど。最初、猫を抱き上げた先生が、雌……? と首をかしげるも尻尾をめくって、雄と確認。
「乳歯があるから、まだ子どもだね。去勢は乳歯が生え代わってから」
と、言われた。ワクチン一回目接種。しおしおとキャリーに戻る、りとであった。
健康診断は問題なし、元気な四ヶ月猫はSさん家からオマケで貰ってきたドライフードを食べていたが、鰹節をちょっとあげたら『ナニコレ、ちょーおいしいよ!!』って顔をして可愛かった。
猫がいる生活は、ただただ楽しく、日々潤いを感じてた。
しかし!
ある晩、寝ようとして二階の寝室へ入った旦那の大声が階下に響いた。
どうした、どうしたと娘と二人でかけつけ、目を疑った。
旦那の毛布(掛け布団のうえにかけていた)に、大と小をしていたのだ。
その時、わたしは悪い予感が的中したと思った。
実は猫が来た初日の夜、布団を敷くのにくっついてきた猫が、毛布の上で盛んに砂かけのような行動をしていたのだ。
猫を飼った経験のある方にはご理解いただけると思うが、猫はトイレで使用の前に砂を掘り、使用後に砂をかける。その動作は前足片方でやる。
そんな動きを布団の上でしていたのだ。
まさかな……と思っていた。いままでトイレの躾に手を焼いたことは一度もなく、「猫はトイレを覚えるもの」という揺るぎない確信があったのだ。
しかし、それは脆くも崩れた。あわてて片付けをしたものの、よくよく確認したら、わたしの布団にも小をしており、二月の寒い夜に二枚の上掛けをなくし、どうやって寝るんだ!? となったが、来客用の布団を階下の押し入れから引っ張りだして使った。
猫はちょっと離れたところから見ていたが、夜はいつも通りわたしと寝た。
翌日はコインランドリーで布団を洗ったりしたが、ネットで猫の粗相について調べると、愛情不足・ストレス、トイレが気に入らない、汚れている等々情報が出てきた。
いや、充分に可愛がっているし、トイレも日に数回片付けているし、ストレスたまらないように遊んでいるし。
原因はさっぱりわからない。けれども中でも一番の問題は、布団についた排泄物の臭いを消すことだった。一回、臭いがついたところは、猫はトイレと認識して何度も粗相を繰り返すからだ。
しかし、この臭い、スッキリと消えない。
ネットで洗濯時に酸素系漂白剤と重曹とを加えることで、消臭効果が絶大! とあったが気休め程度だった。ミョウバン水も消臭効果抜群、とあったが以下同文。むろん、割高な市販のペット用消臭剤も効果なし。
ともかく、これは「たまたま一度きりの失敗」と、わたしはまだこの時は楽観視していた。
しかし、失敗は週に一度くらいからサイクルをどんどん縮め、ついにはほぼ毎日まで悪化していくのだった。
次回予告
とまらない粗相に頭を悩ませる日々。
ママ友・あずちゃんママとのお喋りから光を見出したり、するのかなー……