名づけと、トラブルの予兆
主な登場人物
わたし 語り手。自営業のひと
旦那 ポ〇ゴで、基本帰宅は遅い
娘 高校生、三月生まれ
猫はおとなしく娘に抱っこされて、我が家へとやって来た。
なんというか、とにかく人懐っこい猫で、珍しく早めに帰宅した旦那に抱っこされても大人しくしている。もちろん、わたしにも。
うーん、やっぱりおとなしい。よかった良かった……と思ったのは束の間。
家の中を探検して走り始めた。突っ張り棒で下げていた暖簾に飛びつき、見事に落としたり。……なんだか、元気がいいなあ。第一印象となんだか違う。
それで、しっぽを持ち上げて確認すると……そこには丸いものが二つコロコロン……と。
あれ!?
オス!?
もしかして初対面のあの時は、保護されたばっかりで体力が回復していなかったor文字通り猫をかぶっていた?
『おっとりとしたメスを飼う』という当初の目的は外れてしまったけれど、申し分ないほどカワイイ。いーじゃん、別に。
(アイリスオオヤマの上から)トイレの位置、段ボール製の爪とぎの位置、場所も使い方もすぐに覚えて、よかったと胸をなでおろす。
わたしがいちばん苦慮したのは、とにかく壁で爪を研がせないということ一点のみ。
実際、猫飼いの友人宅がその昔新築からわずか数か月で壁紙がほとんどボロボロという状況になったのを目の当たりにしたことがある。実家も歴代の猫たちがなぜか同じ建具・柱で爪をとき続けて、木材が抉れたようになっていたし、たかが猫の爪とぎと思ったら大間違いなのだ。
しかし、この猫は木製のものより布製の方が爪とぎをしやすいようで、椅子のカバーとかでバリバリやる。
布なら掛けかえればいいじゃない。爪とぎはクリア。
あ、名前を決めよう。
「どうする? ちとさん? ケニーさん?」
と、いずれも弘前が舞台の某漫画の猫たちの名前を出してみる。
「ちとさんは、メスだよ」
そうだね。娘は初めて飼う猫には素敵な名前を付けたいと真剣に考えている。片や母は、トラとかそういうのでも十分と気楽に考えている。
「じゃあ、りと。男のだから、りと」
「おお、いいね、可愛いね」
と、わりとあっさりと決定。りとは来た日から愛想を振りまき、ごはんを食べ、夜はわたしの布団で寝た。
ああ、猫と寝るなんて……十数年ぶりの感覚。幸せ過ぎる。
しかし、そのときにはすでにトラブルの種をわたしは目撃していたのだ。
そう、重要視していないだけで。
りとは、我が家に来てから一週間ほどして、大失敗をする。
掛け布団の上に粗相してしまったのだ。
突然の嵐、猫の粗相とお散歩と、鰹節