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猫活!!  作者: たびー


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飼い猫の条件

はたして猫は家に来るのか。

いや、来たんだけどね。それのいきさつを。

 さて、とつぜん猫の斡旋にあっているわけだが。

 飼うかどうか、いまだ心が決まらないわたしだったが、「飼うかもしれない猫」がいるというのは、なんだかウキウキしてしまうものだった。

 りとさんが亡くなって、次の日曜日がくれば四十九日という節目を迎える。

 わずか一か月と少し。たったそれだけの間をおいて新しい猫を飼うのは、どうなんだろう。

 言い知れない後ろめたさと、それでももう一度猫を飼うかもしれないという希望と。

 わたしは思い切って娘と猫を引き合わせることにした。土曜日、娘をSさん家に連れて行った。


 Sさんは、二日連続でわたしが顔を出したものだから、もう期待値が高まっている。

「三毛猫ちゃんは、もう避妊手術してあるから大丈夫よ」

 三毛猫は、ちょっと臆病そうに見えた。そして一緒の箱に寝ているハチワレにくっついていた。

 娘は頬を緩ませて、猫たちをそっとなでていた。

 三毛はわたしの希望をクリアしていることになる。雌であること、避妊手術を済ませてあること。やっぱり、おとなしい女の子を室内飼いするのがいいだろうと、ひとり腹積もりをする。

 すると、だ。

「それでねぇ、このとおり兄妹で仲良しなの。出来たら二匹一緒に引き取ってもらえたらいいんだけど。引き離せないもの、かわいそうで」

 と、新たな条件をぶちこんでくるSさん。かわいい、かわいいと猫を撫でていた娘の手も止まった。

「二匹ですか!?」

 はなから一匹、女の子を引き取ろうと思っていたのに、いきなり二匹も!?

 聞けば、ハチワレと三毛は前年の秋あたりにSさん家のそばにある、公民館に捨てられていたとのことだった。最初は五匹くらいいたらしいのだが、事故などで二匹だけに。それを保護したSさんによって、半分戸外のような風除室で、ひと冬を越したのだということだった。

 撫でると、ハチワレも三毛も骨がごつごつと触ってわかるくらいの体格だった。大人猫に混じっての暮らしだから、満足にご飯を食べられていないのだろうと察しがついた。


 可哀想だなあ……と思った。でもなあ、二匹か。たしかに実家ではMax三匹の猫を世話していたことがあった。多頭で飼った経験もあるから、無理ではないと思う。しかし、夫がなんというか。

 それに、わたしはハチワレを飼ったことがない。

 りとを飼っていて自覚したのだが、わたしは白が多めの猫がことさら好きなのだ。それからしっぽ。しっぽはすーっと長いのが理想だ。しかし、二匹ともしっぽは短く丸い、あまりかっこよくない。

 出来たら、トラ猫がいい。白い部分が多いトラが。

 その点から言うと、りとは全くもってわたし好みのスタイルを持つ猫だったのだ。

 ハチワレ、可愛いとは思う。薄汚れてはいるが、白い部分も多い。洗えばきっとぴかぴかになるだろう。三毛も似たような感じだ。

 容姿はひとまず置いといてだ。

 トイレは大丈夫だろうか。また、りとのように失敗する性格だったらどうしよう。それに、爪とぎ。壁や柱で爪を研ぎはしないだろうか。

 理想とは違う二匹の猫。わたしは、この猫たちを心から愛せるだろうか。


 娘は、二匹引き取って欲しいという言葉に、びっくりしていたようだけれど、猫たちに視線が釘づけ。なんどもなんども猫の背中を撫でている。

「なあ、たび子よ」

「なに?」

「猫を二匹で飼うとな……」

「飼うと?」

「すげぇ、可愛いんだ」

 てな、アホな会話をして、その場は帰宅した。帰宅したら、旦那が帰ってきていた。

 物事には勢いというものがあるわけで、わたしはそのまま旦那をSさん宅へと連れて行った。


「お父さん、ほら、猫。猫かわいいでしょ」

 久しぶりに猫を見てボーっとしている夫に間髪入れずに言ってみた。

「猫、飼いたい。それで、この子たち二匹引き取りたい」

 旦那、凍り付く。

「バカか!」

 と取り合わず、そのまま車へと戻ってしまった。しかし、そんなに感触は悪くなかった。

 一先ず、土曜日はそれで終了。


 翌日の日曜日、りとの四十九日。その日、我が家は八幡平市までドライブに出かけた。温泉の入浴付きランチバイキングがメインだったけれど、その前に花の苗を見ようと、商業施設へと立ち寄った。

 そこには大きな温室があって、いろんな種類の花苗が売ってあり、同じ敷地内にアルパカや山羊が飼われていて、ちょっとした動物園のようになっている。食事やいちご狩りもできる、なかなかに大きな施設なのだ。

 庭に植える花苗を物色していたら、花苗の温室に大きなケージがあった。

 180㎝くらいの二階建てで、キャットタワーも内部にあり、二匹のトラ猫が寄り添って寝ていた。

 説明書きがあって、二匹は迷い込んできた兄妹であることやお店の看板猫として、活躍していること等が書かれてあった。

「お父さん、猫だよ」

 花を物色している夫を、ここぞとばかりに呼んで猫を見せた。

 猫たちは一つの寝床に、仲良く身を寄せ合っておとなしく眠っていた。

「かわいいね、かわいいね」

 わたしと娘が小さな声で話す。さわったりは出来ないけれど、猫特有の可愛らしさを堪能した。

 夫、めずらしく穏やかな顔で見ている。

 わたしと娘は目配せする。

(これは、いける!)

 猫を連れて来たなら、イヤとは言わないだろう、たぶん。

 あの猫たち、ハチワレと三毛猫を引き取ろう。

 トイレとか爪研ぎとか、飼ったことのない柄だとか……愛せるかどうか、なんてどうでもいい。

 猫と暮らしたい!

 善は急げ、明日引き取って来よう! 






次回「ネコチャンがやって来た」

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