ひとり散歩と窓越しの邂逅
猫のなかでは、すでに春。
ここのところ、冬にしては暖かい日が続いています。
なんたって、雪が少ない! 降雪が多い年には、除雪した雪の高さが一階の屋根辺りまでになるのに、今年は地面が見えるくらい。たまに雨など降って、まことに冬らしくないのです。
それでも、降る時には除雪車が出動するほど降りますし、吹く時には雪まじりの冷たい風がふきます。
そんななか、「猫の時計」はすでに「春」を指しているらしく、りとを始めほかの猫の動きも活発になって来たようです。
先日は、早朝カーテンの向こう、リビングのガラス窓に張り付いて外を見ていたりとが、突然唸り始めました。
それが、まあ、とんでもない声でして。
「んがぁぁぁ、にゃおぅぅぅぅ、しゃーっっっ」
二階で寝ていた旦那も、思わずうるさくて目が覚めるほど。
えらい権幕だ、と朝食を作る手を止めてカーテンを開けてみるとそこには。
近所の古参猫、トトさんがいました。
トトさんはOさん家の猫で、ハチワレで、丸っこい体をしています。フリーに近所を散歩しているのです。りとが来る前から、我が家の庭を散歩コースにしているので私も顔なじみです。
そのトトさんが、外からりとの顔をじーっと見ていました。微動だにせず、とはこのこと。
トトさんからすれば、新参者へ「ここは前からオレのテリトリーだから。忘れるなよ」といった感じのデモンストレーションのように見えました。
仕事場の玄関先にいつもマーキングしていくのは、トトさんだろうなと目星をつけている私です。猫の縄張り争いは仁義なき戦い。でも、わめき散らすりとを見ていて、弱い犬ほどなんとやら……と。りとさんは喧嘩は弱そうです。
雪が降って面白みを感じるのは、雪上に残された足跡を見ることです。
大きな足跡は、きっと毎日お散歩している道路向こうの黒ラブラドール(ご老体)でしょう。並行して人の足跡がついています。
小さな足跡は、猫かな。りとの足あとも近所の原っぱにあります。
あさイチで庭をみると、すでに猫足スタンプ。くだんのトトさんが通った後でしょう。
しかし、中には謎な足型もあります。
なんつーか、鋭角的なものが。猫のように丸くなく、犬のほど大きくなく。原っぱを横切って民家にまぎれていずこかへ消えていく足あと。
去年の春に見た、タヌキでしょうか。
雪の上は匂いが残りやすいのか、りとは熱心にいつまでも足あとの匂いを嗅ぎます。
今は雪の上に「カタチ」が残っているから、足あとを嗅いでいるんだと分かりますが、雪のない間も、そんなふうにヒトには見えない足あと、動物が通った痕跡を探っていたのかもしれないと気づきました。
野生の勘って凄いな。
最近のりとは、休日であればわたしが対応するので、日中二時間くらいお散歩に出ています。
夜はわたしと出たり、途中まで一緒だったり。
相変わらず心配は心配なので、ひとりで離すときには「道路に飛び出さないこと、車に気を付けること、高い所には上がらないこと」などを、無駄とは知りつつ声をかけずにはいられない、私なのでした。
でも、やっぱり車はコワイ。交通量の少ない時間帯に出しています。




