華奢な骨格、きっと雌
そもそもの猫との出会い
猫に会ったのは、一月の中旬だった。
実家のお客さんから電話が来たのだ。
「〇〇さんの家、猫好きだったわよね?」
と。
それは兄の同級生の母うえからで、外猫を世話しているSさんからだった。捨て猫を保護しているから、飼わないかという。
我が家は猫が大好きだ。好きだけれど、実家のほうは数年前に立て直したばかり。我が家は築十年。
わたしの家ならば、飼って飼えないことはないけれど、夫は家が荒れるのを嫌がるから難しい。だから、無理だろうと思っていた。
しかし、ちょうど仕事でSさん宅へお伺いすることがあり、まあ猫がさわれたらいいや…ていどの軽い気持ちで父とわたしとで出かけた。
猫は、美容院を営むSさん宅の店舗スペースにいた。母屋では小型犬を飼っており、猫と分離するためだった。
「こんばんはー」と声をかけると、Sさんがよく来た、とばかりにさっそく猫を見せてくれた。
子猫と大人猫の間の大きさ、中猫。
あ、たびだ! と思った。
たびは以前飼っていた猫で、サバトラ、四本の足先が白く足袋を履いていた。
こちらのねこのは首、胸、腹と前足が真っ白で後足に内側から模様を巻いたけど正面まで届かず、といった風情。
たびとよく似たその猫は、わたしの腕に抱かれると暴れもせず、目を閉じて喉を鳴らした。
華奢な骨格、これは雌だな。そして大人しい。鳴きもせず暴れもせず。うん、いい猫だとその時思った。
私の次にだっこした父も、すぐにメロメロ。しかし、だからといって急にもらえるはずもない。
その日はそれで終了。後ろ髪引かれる思いで帰宅した。
猫は寒さが厳しい一月の夜に、sさん宅前に車から投げ捨てられたらしい。深夜鳴き続ける声に負けて保護したのだと。
飼い猫だったらしい証拠には、人なつっこくトイレもすぐに覚えた辺りでなんとなく。それに体もとても綺麗だった。
こんなかわいい猫、どうして捨てちゃったのか。
元の飼い主への怒りが沸々と込み上げたりもしたが、旦那に猫を飼いたいことを打ち明けられず一週間二週間と過ぎていったのだった。
勘違いは後にわかる。いまも相変わらず骨格は華奢。