お散歩、春夏秋トゥ!!
今年は温かい。なんせまだ雪が降っていないから。
「猫にリードつけてお散歩なんて……」
と、以前のわたしだったら思っていた。自由気ままな猫に首輪とリードをつけて犬みたいに散歩させるなんて、すごい不自然で違和感があると。
しかし、人間なんにでもなれてしまうものです。猫の散歩、思えばもう半年以上毎日毎日しています。リードをつけて。やはりというか、初見の人には「え?」という顔をされますが。
最初の頃、りとさんはハーネスタイプの首輪に慣れず、着けるのにも毎回苦労しました。けれど、今はすっかりと慣れました。
「お散歩だよー」と呼ぶと、玄関に通じる引き戸のまえで待機して、わたしが首輪をつける間だまっています。心もち、キリッとして見えたりします。
玄関のドアをわたしが開けて、外へ出るときの軽やかさ。敷居をぴょんと飛んで外へ。わたしは靴を履くのそこそこに、外へ転げ出るような感じです。
散歩に出かけるようになった今年は、猫と一緒に自然観察もしていました。
雪解けがすんだばかりの春先、水仙が角ぐみ日一日と大きくなって黄色のラッパの花を咲かせたとき、春を実感しました。
いつも行っていた空き地の名前の知らない草から、ある日いっせいに白い雄しべ?雌しべ?が出ていて驚きました。家の庭にもよく生えている雑草ですが、こんな変化があるなんて。
そのほか、春は一気に草花が生命を爆発させるときなので、空き地のあちこちにはいろんな芽や葉が出始めました。最初は何か分からなかった植物が、成長につれて「あ、タチアオイだった」とか「名前知らないけど、なんだかカワイイ花だなあ」とか。
他所のお庭もよくよく見るようになりました。わたしの近所には特に手入れの行き届いたお庭が二軒ありまして、そこのお宅の奥さま方はとかく毎日お庭を整備しています。本格的にガーデニングをするのは土日くらいなのですが、通常は一日10分とか、ちょっと草を抜くとかそんな感じです。
しかし、塵も積もれば山となるというか、継続は力なりというか。色とりどりで季節ごとに花を切らさないお庭は、いつも素敵なのでした。
ひるがえって、我が家の荒れ果てた庭よ。結局、今年も草をとるのがやっとで終わってしまいました。来年はもう少し手を入れましょう。そして、りとさんは手入れのよい庭のほうが好きみたいで、とにかく突入しそうになるので止めるのに必死でした。
ま、りとさんはお庭もさることながら、目の前の虫たちが気になってしかたがないようでした。
五月の田植えの時期を迎えると、蛙の合唱が聞こえるようになりました。ついでに空き地の草むらにも蛙くんが登場。蛙、動かなければ猫の標的にはならないんです。でも、猫が近づくとやっばり動いてしまう。で、りとさんに見つかって自主規制。
蛙は春から秋まで長く、りとさんのトレンドでした。11月に入ってからはさすがに見かけなくなりました。
夏は、街灯に集まる虫たちを追いかけて回していました。
田舎なので、街灯に集まるのはごく一般的な虫ばかりではなく、クワガタとか大物もいたりします。
その中で、りとさんはコクワガタに初めて遭遇した時、好奇心から鼻を近づけたところ、ちょきっとわずかに反撃されました。飛びのくりとさん。以来、クワガタには手を出しませんでした。手を出さなかったのは、もう一種類。カメムシですね。ええ、一度臭いを嗅いだら、終了でした。
散歩していて閉口したのは、蜘蛛の巣です。
猫は狭いところを歩きたがります。それで50センチくらいの塀と生垣の間などを猫にリードを引っ張られて通ろうとすると……蜘蛛の巣に顔面から突入。
悲鳴をあげる飼い主、むろん猫は平気です。
広くても細心の注意が必要です。蜘蛛の大作に遭遇するからです。ほんと、蜘蛛のマメさには驚かされます。
街灯のあるところには、蜘蛛は巣を張ります。光に集まった虫を捕れるからです。また同じく虫を食べるカエルも集まります。そしてカエルと虫を目当てに猫が来る、という構造ですよ。盛夏には。
夏には蝉も来ましたしね。暑い盛りは夜でも鳴いている蝉の声を聴きつつ、虫よけスプレーで防御して歩きました。
徐々に虫も減り、ジョロウグモなど大きな蜘蛛でも氷点下の日を三度ほど過ぎればシーズンが終了します。
近頃はめっきりと虫も見られなくなりました。
りとさんも、なんだかつまらなそうに塀の上に乗ったっきりうずくまったり、気まぐれに木に登ったりするくらいになりました。
さんざんお世話になった桜の大木も、落葉がピークを迎えています。
大好きな空き地には、新しい家が建築中で、もう入ることは出来なくなりました。
春や夏は夜の散歩に一時間を費やしましたが、最近は45分くらいでもいいようです。
足の裏が冷たくて歩きたくなくなるのか、わたしの足にすり寄って、もの言いたげな顔で見つめてきます。
そして可愛らしーく「にゃん」と一声鳴くと……。
トゥっ! とわたしの肩をめがけて飛びついてきます。
わたしも近頃は気配を察して、りとさんがわたしを見つめたら、膝をわずかに曲げて両手を開きます。
さながら、某芸人さんの「どやさ」のように。あるいは某寿司チェーンの社長さんのように。
阿吽の呼吸です。
雪が降ってから、このお散歩はどうなるのか。まだまだ未知数であります。
「どやさ」というか「寿司ざ〇まい」というか。
ジョロウグモが氷点下三回云々は、自分の観察経験から。




