夏らしい話など
ちょっと涼しくなろう
深夜、階下で物音がする。誰かが家探しをしているような、ゴソゴソと。
そのうち、やたら派手な音を立てて遠慮なく階段を上がり、わたしの枕元へ……。
「にゃーっっ」
ちりりんっと鈴の音を鳴らして、お気に入りの猫じゃらしを枕元へ置く猫がいる、午前三時。
おいっっ!
今年の夏は、異常気象なのか西日本では記録的な豪雨で甚大な被害が出たり、加えて猛暑続きだったり。
北東北とはいえど、盆地という地形ゆえに夏は真夏日が数日続くくらいは暑い。
そんな暑さもお盆が過ぎれば、いっきに秋めいて日中は蝉と虫の声が混ざりあう。
夏も終わりだろうか(BGMは森高千里の「sweetcandy」で)。
暑さの名残に、猫関連のちょっと涼しくなる話をば。
第一話『バスルーム、くいっくいっ』
猫はわたしについてまわる。風呂にもついてきて、脱衣室の足マットのあたりに香箱を組んでまっていたり、時には浴室にまで入ってきて浴槽の縁に座っていたりする。
ある晩のこと。猫が合図したらわかるように、扉を少し開けて入浴していると、扉がくいっくいっと動いた(我が家の浴室の扉は浴室側へ二つ折りになるタイプ)。
「はいはい、すぐ開けるよ」
と、開けると、何もいない。あれ?
確かに、くいっくいって動いたのに……。
さて、子どもの頃からSF現象と付き合いのあるわたしは、思った。
「……はい、はい」
ま、ひとまず置いておくのだ。そのことは。
そういえば、数日前に実家から歴代の猫たちが愛用した籠をもらって来て、りともすぐに気に入っていたなあ。
たぶん、まえの猫の誰かが遊びに来たんだよ。
お盆だし。
第二話『暗闇、しょりしょり』
猫との散歩は主に夜だ。基本装備は、猫にはリード、わたしはペンダントタイプの懐中電灯。
数日前から電池が弱ってきたのか、灯りが暗くなってきたと思っていたが、その夜はついに電池が尽き、明かり無しで出かけることになった。
六月のこと。ちょうど月もなく、暗い夜だった。
猫にはお気に入りの散歩コースがいくつかあるが、その晩は「草」コースだった。道沿いのお隣さんの庭に首を突っ込んだりしてご機嫌な猫に連れられ、歩いていた。と、いつも匂いを確認する大切な草むらまできたとき、
「しょり、しょり、しょり……」
と、盛大に草を食む音がした。
ん? なんだろう。葉っぱのしたから、しょりしょりと絶え間なく音がする。興味に駆られて、確認しようとしたが、懐中電灯は使えず、ガラケーで照らそうと思ったが、そんな光量ではまったくたりず。
そのうち気味悪くなってきた。
なぜなら、しょりしょりの音が絶え間なく聞こえるからだ。
ちょうどその季節には、近所の栗の木に毛虫が大量発生して葉を食べていたのだが、何百という虫が一斉に食事をすると、周囲が静かになった夜にはハッキリ「しょりしょり」と聞こえる。
しかし、それより数段大きい音なのだ。
何? ほんと、なにが葉っぱを食べいるのか?
暗いと余計に悪い想像をする。巨大な毛虫、あるいは……横倒しになった生首が葉を食べているのでは……!!
ぎゃーっっ、と逃げようとすると、猫は意外と平気な顔してそこへ近づこうとする。
あわてて猫をだっこして、自宅に逃げ帰ったのは言うまでもない。
そして後日、同じ場所を確認したら、特別盛大に食べられていたわけでもない、という。
ほんとに、あれはなんだったんだろうか……。
第三話『義両親』
お盆で帰省したおり、義理の両親が我が家で猫を飼い始めたのをとても羨ましがった。
「それで、うちでも犬か猫を飼おうと思っているんだが」
……やめてー!!
「おとうさん、最近の猫は十五年くらい生きますからね」
ご自分の年齢を考えてと釘をさす嫁。
ほんと、やめて。動物飼うとか。すげぇコワイ。
第四話『近所の変態』
とは言っても、やはり一番コワイのは生きている人間か。
猫のお気に入りの麦畑の横に新しく家を建てて越して来た家族がいるのだが、先日麦畑でリードを離して猫を遊ばせていると、その家の住人・青年が軒下に出てきた。
えーとね、下半身出してね、奇声をあげてね。
……生きている人間、ほんとコワイ。
なんかなー( 一一)
こんど出てきたら、動画を撮って駐在に相談しようと思う。




