1-4 黒髪メイド
さて、少しナイーブな気分になってしまったが、前向きに行こうじゃないか?
そもそも能天気な俺が悩むとからしくないって、・・・・誰が能天気だ!
落ち着いた。
まず、周囲の確認は終わったから、次は自分自身の確認だな。
身長140cmくらいの金髪美少女ってことは分かってるので、もう少し詳しい確認をする。
どこから確認するか?
テンプレ的に言えば胸とか、尻とか、。
いや、別に厭らしいことじゃないぞ!
これは自分の現状を把握するうえで避けられない試練のようなものだ。
本当だぞ、本当だからな。
いったっだっきま~す!!
胸を揉む。
あっ!・・・これいいかも。
なんか新しい扉が開けそうだ。
あっ・・・・ん・・・んん!
そこでふと気づく。
なんか冷たい視線を感じるような~
その予感にギギギッと首を動かすと、
黒髪のメイドさんと目があった。
こんにちは。
俺はぺこりと頭を下げる。
ノリでうやむやにする作戦は見事失敗。
さらに冷たい、値踏みするような眼で見られた。
人を殺せるほどの目線とはこのことだ。
が、今新しい発見をした悦也には些細なことであった。
すなわち――――
「ヤバい!冷たい目線で睨まれて、感じる・・だと!・・・これは・・・もしかして、実は俺・・・M・・・・だったのか!?」
「意味わかんないし、どうでもよさそうだから深くは聞かないわ」
視殺するほどの視線を受け悦也が考えたことは、
怒った顔を可愛いな、黒髪メイドさん。
悦也の残念な頭は置いといて、本当に作り物のような美少女である。
身長164cmの一般的な背丈、色白の肌、濃やかな漆黒の髪は腰まで届きそうだ。白と黒のメイド服を着、頭には白いカチューシャ、スカートの中から悪魔のような黒い尻尾が出ている。
盛り込み過ぎや~、盛り込み過ぎやろ~
「―――――――――――――――――えっ」
突然の少女の行動に一瞬思考が停止する。
目で知覚し、それを理解するまでの一瞬の思考の空白。
それが悦也の反応を遅らせた。
咄嗟に上体を逸らし、回避にかかるが、
頬に伝わる鋭い痛みが、避け切れなかったことを自覚させる。
「な、何の真似だ!?」
ナイフ振り回すサイコ野郎と殴り合った経験が無ければ、詰んでいた状況だ。
自然言葉に焦りが出る。
そもそも、悦也が知っているサイコ野郎とは動きの質が段ちである。
明確な殺意を持って、何のためらいも無く、振るわれた凶器は、
悦也が避けていなければ確実に頸動脈を切り取っていただろう。
「―――――くそっ!さすが異世界だな!メイドさんまで殺人鬼かよ!」
取り敢えず、心のままに叫びつつ、
距離を取るため、後ろにバック。
黒髪メイドは多少の驚きを見せるも、
「逃がすつもりはないってか!できれば、ナイフじゃなくてナニで会話したかったな!」
「下劣な上に不快だわ」
いっそ汚物でも見るように、
ダークブルーの瞳が悦也を射抜く。
悦也は少女の言葉に若干気づ付きつつも、何とかナイフを避け続ける。
「ちょこまかと、めんどくさいわね。」
「ちょっと待て!まずは話し合おう!何か行き違いがあるかもしれん!」
「必要ないわ、てゆうか、それ以上アデル様の体で不快な言葉を発しないでくれる」
アデル?え?
ちょっと待て!落ち着いて考えよう!
今までの話を統合すると―――――――
俺はアデルとかゆう美少女に転生して、そのメイドが俺が主人を乗っ取ったとかなんとか思ってんのか?
いや、俺悪くなくね?
だって、俺がやった事って言えば、
①トラックにはねられる、
②倉庫をこっそり抜ける。
な?俺悪くないだろ?
どや~
「さっきから、ちょいちょい挟むその顔、本当に不快だわ」
「お前もさっきから、ちょいちょい辛らつな言葉浴びせるな!?」
軽口をたたきつつ、悦也は反撃の一手を紡ぐ。