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アウトロー  作者: ダブルシュガー
第1章 中央大陸
5/15

アウトロー2

 暗い・・・・

 何も見えない・・・・・・

 え?どこだここ・・・・?

 いや、ちょっと見える!ぼんやりとだけど見えるよ!


 そこで意識が覚醒する。


 俺の名前は車谷悦也。突っ張り歴13年のプレイボーイ。


 そうだ!そうだった!アバンチュールな恋をしてたんだった。いや、違うおちゃめなおじさんと追いかけっこしてたんだった。


 え!?てことは何?もしかして掴まちゃった感じ!?

 おいおいおいおい!もうちょっと頑張れよ!


 いやいや、その前に俺ダンプカーに撥ねられたんだったな。


 ちょっとヤバい。頭が混乱してきた。先ず落ち着いて現状整理!


 ⓵悦也はアバンチュールな恋をしていました。

 ⓶失恋→アウトロー

 ③お茶目なおじさんと遭遇。

 ④突っ張りどすこい →鬼ごっこ

 ⑤ダンプカーに撥ねられる

 ➅倉庫みたいな場所で目を覚ます。


 現状に頭が追い付いた瞬間、悦也をかつてないほどの不安が襲う。


 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい


 不安に駆られるがままに逃げ出そうとして気づく、足が無い。


 あっれ~、と頭を掻こうとするが、腕が無い。


 (・・・・・・・)


 これは詰みとかいうものなんじゃないか?


 いや、待て!諦めるのはまだ早いかもしれない。

 まだ使える器官があるか確認。


 口・・・・見当たらない

 耳・・・・同じく

 鼻・・・・同文


 そして体のラインだが丸まっこい。付けくわえると各機関も無くなったというよりは元から無かったって感じだ。


 (うーむ。これは・・・・・どういう状況だ?)


 考えれば考える程分からなくなってくるので悦也は考えるのを止めた。


 (取り敢えず、こっから逃げる!)


 そもそも足が無いのだが、そこはツッパリらしく気合で何とかすることにした。


 ふんぬらば!?


 全身の神経に活を送り、無理やり叩き起こす。すると―――――――――――――――


 (お!?おおお!!!う、浮いた!!!!!)


 予想の斜め上を行く展開に、さしもの悦也も驚愕を隠せない。さしものとかいうほど大した男じゃないんだが。


 高くなった目線であたりを俯瞰すると隙間から漏れ出る光を捕らえた。

 フワリふわりと光に近づき脱出を試みる。が、懸念が一つ。


 (これ、通れるのか?)


 途中で挟まったりしたら、洒落にならん。

 とはいえ、他に選択肢などない訳で・・・。何より暗い場所にこれ以上居たくなかった。


 (えーい、ままよ。)


 すっぽ! そんな擬音が聞こえそうなほどあっさりと通り抜けた。


****************************************


 (!? 眩しい!・・・)


 予想以上の光量に思はず目を塞ぐ(気持ちの上で)。


 2~3分くらい経ったと思う。

 次第に目が慣れてきた悦也は違う意味で固まっていた。


 目の前に広がる光景、それは豪華としか言いようがないワンルーム。悦也が10000人は寝れる程のだだっ広いベッド。天井には淡く神々しい光を発する半透明のクリスタル。壁面には種々折々の装飾品がずらりと並べられていた。どれ一つとっても悦也のような庶民が一生拝むことの叶わない傑作。しかし、そんな豪華さが霞むほど悦也の脳内は一つの言葉で占められていた。


 (でかい!)


 語彙が無くなるほど全てが巨大だ。巨人の国にでも迷い込んだのかと、割とマジに不安になる。


 もしかしてこれ不味いんじゃないの?不味いんじゃないの?


 倉庫から抜ければ何かわかるかと思ったが、倉庫に居た方が賢明だったんじゃないの?


 戻ろうかな、という考えが頭をよぎるが、ツッパリ歴13年で培ったプライドが邪魔をする。


 (いや!ビビってねえし!ビビってねえし!)


 めちゃくちゃビビりながら、その一歩を踏み出したのだった。


----------------------------


 フワリふわり。

 俺は今目的も無く建物内をさまよっている。

 どうやらこの体には睡眠も食事も排便も不要なようで、長年苦しんできた十五肩にも開放され、割と自由気ままに生きていた。


 なんだかんだ探索始めてから一週間ぐらいたったんじゃないか?

 ずっと屋内に居るので時間間隔が可笑しくなっているが、多分そのくらいは立ったと思う。


(しかし・・・ほんと静かだな。)


 人影どころか生物の気配すらしない。そのくせ昼夜問わず煌々と電気がついているときた、無駄遣いにも程があるぞ!


 ま、いっか!地球の問題は横に置いといて俺はふかふかのベッドで惰眠をむさぼった。


 二週間ぐらい後・・・

 この日、俺の生活は動き出す。


 いつものように探索と惰眠を繰り返していると、超大型巨人も真っ青な巨人を発見した。


 「#$‘%$&’&%$‘’&%$$(‘&%(’&%$))」


 虚空を見つめ一人ごちる巨人。


 そういう時期なんだな、と生暖かい目で納得しつつ死んだふりをした。

 別に腰引いたり、芋引いた訳じゃ無い。ただ純粋に自身の戦闘力を分析した結果、最善の選択をしただけだ。いや、言い訳してる訳じゃ無いぞ。


 「“%&‘&%$%#&%$%$&%#$$$&$」


 相変わらず何言ってんのか分からねえな~、と耳を傾けていると、


 『神語を獲得しました』


 え?しんご?どゆこと?

 ファンタジーでよくある神の声のような、脳内に(頭ないけど)直接送られる音声に体がびくりと跳ね上がる。

 これがまずかった。


 「ん?・・・何でこんなとこにエデンが落ちてんだ?」


 不思議そうに首をかしげるという全く可愛くない仕草で近づいてくる巨人。俺はソロー、と逃げようと思ったが・・・


 あ!・・待て!・・・離せこら!


 抵抗むなしく捕まった。


 まいったぞー、と思いはするが、この状況では逃げ出す事も出来ない。

 巨人の手のひらの中、いつ握りつぶされるかと戦々恐々としながら、ガタガタと震えていた。




 はい!悦也です!

 今自分市民センターみたいな場所にいます!

 


 「それで、1557回廊にこれが落ちていたと。」


 女性型の巨人に俺をつれてきた巨人が首肯で答える。


 「なるほど・・・、では17110111BOXに入れてきてください。」

 「分かった。171101111だな。」


 一個多い!一個多いよ!


 「ええ、その通りです。」


 その通りじゃないですよぉ!てか、あんた!絶対適当に答えてるだろ!


 俺は何とか伝えようと、めい一杯体を動かす。が、如何せんサイズ差がありすぎた。どちらも気づくことなく悦也の行く先は決まったのだった。




 「ええっと・・・171101111111だったか?」


 気づいたかもしれないが、この巨人聞き間違いをさらに覚え間違えるという大変なことをしでかした。そして俺が連れてこられたのが此処だ。


 汚くは無い。けど、どこかじめッとした雰囲気の暗い場所。

 箱状の機械が所狭しと並んでいる。その一つ一つに象形文字のような文様が刻まれていた。おそらくこれがこの世界の数字なんだろう。


 「おっかしいな・・・。何処にもねえじゃねえか?」


 そりゃそうだ。回れ右して聞き直してこい。他の巨人に頼むと尚よい。


 「もしかして、聞き間違えたのか?・・・・・いやいや俺に限ってそんなはずは・・・・ん!はい、もしもしこちら田中です。・・・・え?ハニー?・・・OK-、OK!全然暇だよ!サントシティ?・・・うんうん!行く行く!」


 自己評価高すぎないか?とか、仕事舐めてんのか?とかいろいろ言いたいことはあるが・・・・・・これだけは言っておこう!


 俺が巨人の力継承したら・・・駆逐してやる!


 直後、車谷悦也の魂は「#$%$&%$#」と書かれた箱にねじ込まれた。



 その1週間後、天文学的確立によりゲートが開かれ、魂は下界へと落ちる。


 車谷悦也の第二の人生は此処より始まる。


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