アウトロー
人生何事も程度が大切だ―――――――それが死の間際、車谷悦也が思った言葉だった。
E〇〇N、LOSSON、Z-イレブンなどなど、多くの商店で賑わう繁華街。時刻は昼少し前。もう少し正確に言うのなら6月中旬、水曜日の午前10:15分だ。当然ながら今日は祝日なんてことも無く、学生ならば今頃授業を受けてしかるべき。
何が言いたいかというと、こんな時間に繁華街何てうろついている学生はどうしようもないクズである。
そして、そんな道をズカズカと歩く学生が一人。
学生の名前は車谷悦也。
性別は男、服装は上げパンにイートンジャケット(短めの上着)という、いかにもな格好だ。
黒髪黒目の平凡な顔立ち。
その服装と立派なタッパを除けば、どこにでもいる高校生である。いや、それは少し語弊があるな。言い直すと、「何処にでもいる超不機嫌そうな高校生」である。
そう。まさに今の彼は――――――――――――――『アウトロー』だった。
―――――――くそ!イラつくぜ!
ずかずかと大股で歩きながら、悦也は内心の怒りを地面にぶつけるかのように繁華街を踏み荒らす。
つい数分前まで。 「季節は夏!車谷悦也、熱いアバンチュールな恋の予感!」―――とか、やっていた面影はすでになく、怒りのはけ口を探すかのように、意味も無く繁華街をうろついていた。
悦也のいく道は、ダンプカーでも通るかのように人垣が分かれる。誰もが関わり合いになりたくないと思っているのだ。しかし、気づかずにぶつかってしまう人もいるのである。ぶつかるまで歩き続けるつもりだったのだから当然と言えば当然だ。
そんな不幸な一人目の犠牲者がこの女性だった。
「キャ―――――――――!」
身長二メトール近い悦也と肩がぶつかり、女性は尻もちを付く。
「ってーな!誰だ今ぁ!俺の肩に隕石ぶつけやがった野郎は!」
「い、いえ・・。あの、その・・・・。」
ガタガタと震えて、言葉にならない言葉を話すが、悦也からしてみたらいいかもである。
女をどういたぶってやろうかと、舌なめずりするが・・・。その前に――――――――――
遠巻きに二人を囲む人垣を睨み、
「くらぁ!!見せもんじゃねえぞ!愚民どもが!」
「ほう?それは俺に言ったのか?」
疑問に顔を向けると、白いスーツを着た強面のおじさんが立っていた。間違いなく『ヤの付く人』である。いつもの悦也なら土下座する勢いで謝る場面なのだが、彼は今アウトロー。
「だったらどうしたってんだ!?」
「小僧!粋がるのもいいが、相手を見て突っ張んな!」
「突っ張るってなぁ!こいつのことか?あぁ、のこった!のっこった!」
予想外の寄行に㋳さんは防御も取れず、見事頬を突っ張りが直撃。
馬鹿力に赤く腫れた頬をさすりながら、悦也を睨み、
「ガキがぁ!」
ガサゴソと懐からドスを抜く。
「ま、待ってください。ぼ、僕が悪かったです。」
一転平謝りする悦也の顔は真っ青に染まっている。
しかし、そんなことで怒りは収まらない。
「土下座だ。」
土下座。日本が生んだ最上にして、最低の和の心。それをここでしろと。
いや、死ぬよりはまし、死ぬよりはましなのだが・・・。
「あっ!UFOだ!」
やはりプライドが許さない。打開案として思いついたのがこのセリフであった。子供でも騙されないような幼稚なひっかけ。悦也も成功するとは思は無かった。
ヤさんが後ろを向くと同時に悦也は身をひるがえし、走り去る。後ろからものすごい勢いで何か追ってきていたが気にしない。
「ふはっ、あははははは!」
プップ――
「え?---------」
直後強烈な衝撃に脳が混濁、悦也は命を失った。