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リア姉とエルフ

その日の晩は、里の集会所で有志を募っての歓迎会を開いてくださった。


基本的には家族での食事が主なので、家を失った家族も含めて20名程のエルフの方と共に食事をすることになった。


里での晩餐はベジタリアン向けで肉や魚の料理はない。家系によっては牛乳や卵もダメなエルフもいるそうだ。


「はじめまして。リアナです。昼間はご挨拶出来なくてごめんなさい。」


サーシャさんそっくりの美人さんはヨハンさんが言っていたもう1人の娘さんだ。金髪翠眼は共通で170cmはあるだろう長身のスレンダー美女だ。金色の長い髪を三つ編みで一つにまとめている。


年齢は20歳だそうで、この里でも下から数えた方が早い若者で、エルフの成人である100歳まではまだまだ先とのことだ。


ちなみに成人は一人前と認められる歳なので、婚姻や飲酒などとは関係ないらしい。まぁ里の人からしたらまだまだ子供と言う歳だそうだ。


私の出身や旅の話をしながら晩餐は進む。エダの豆のスープ、薬草サラダ、ヒヨ豆腐、ハーブパン、様々な野菜ときのこのソテー、茹でもろこし。


里で取れた新鮮な野菜を使っているので、素材がいいから美味しい。


飲み物はブドの実ジュース。リトはヨハンさんにに勧められて里で作ったワインを飲んでいる。


「いいなー。私も旅に出たーい。」


美味しい料理で会話が弾んで、私とリアナさんはすっかり仲良しになった。年齢もエルフの感覚だとほぼ同じらしいけど、歳上なのでリア姉、わたしのことはゆりちゃんと呼び合うことになった。


他のエルフの人とも話したけど、リア姉が異色なのは話していてわかった。見た目は誰よりもエルフまんまなのに、里から離れて旅に出ることを望み、好物はお肉で、魔法がまったく使えないらしい。


魔法以外にいろいろと手を出した結果、里では一二を争う弓の名手、特技は格闘技という可憐な見た目に反して男前な女性だ。


「子供の頃から訪ねてくる人たちに外の世界の話を聞いてね、すごーく面白くて、私もいつか見てみたいし行ってみたいって思うようになったんだー。」


リア姉はワイン片手に私にもたれながら語る。


あー、ゆりちゃん柔かーい。とかいいながらぐりぐりともたれてくる。酔ってるのかな?


「でもこの里も大好きだから、だからこの前の事件に負けないような里にしたいの。それに仇も打ちたいし。」


まだ例の事件を起こした冒険者はシュダットの森にいる可能性が高いらしい。


里の住民に危害が加わらないように、リア姉も所属するエルフの護衛団は活動を活発にしているそうだ。



そう話しているうちに寝息が聞こえてきた。

語り疲れて寝てしまったみたいだ。


リア姉の向こうに座っているサーシャさんが話しかけてくる。


「ごめんなさいね。この子、あんな事件の後だし、しばらくは外界の人とは話せないと思ってたから嬉しかったみたい。」



そう言ってリア姉を見るサーシャさんの目は優しい。


「私も話していてとても楽しかったです。」


「そう言って貰えると嬉しいわ。同年代のエルフは数が少ないし、この子は変わり者だから昔からいろいろ言われてきたの。この子なりに考えて受け止めて今があるけど、まだまだこの子の個性を受け入れられない大人達は多いわ。」


明るいリア姉もたくさんの苦労があるみたいだ。


「この里はまだ中立な里だけど、それでも閉じられた環境を好む人の方が多いわ。南のエルフの里はエルフ史上主義で、西のエルフの里は正反対の他種族も混ざった自由主義。時代の流れで他種族と混ざってきて、外に出るエルフも多くいるけど、かなりの労力がいることなのよね。」


この子はお肉好きだから問題ないと思うけど。


日本っていう閉ざされた島国出身の私からしたら、民族を日常的に意識することは少なかった。それでも外国人の人とかと会うと、自分とは違うという意識は自然と持っていた。


民族問題ってどこの世界でも一緒なんだ。文化や習慣や信じるものが違うと、理解し合うのは難しい。それが同じ種族の中でも起きるんだから、世界中で見ると自然な流れでもあるんだろう。


「貴方もまだ若いから、自分の考えと違う人達にこれからも何度も出逢うでしょう。その時に、相容れないからと攻撃するのではなく、知る努力を忘れないで。」






「考えごとか?」


勇人やイナリを寝かせて、テントの外で夜空を眺めていた。


ヨハンさん達に気に入られたリトは先程まで飲みに付き合っていたみたいだ。



サーシャさんから預かったハーブティーを渡される。そのままリトは私の隣に腰を下ろした。



「私って何の為にこの世界に来たのかなぁって思って。勇人は勇者だから、世界を救うとか、魔王を倒すとか、目的はわかるんだけど。」


これで知識も豊富な大人なら、この世界の役に立つ知識を広めたり、役に立てる。


勇人みたいに特別な力があるなら、それを伸ばして目標に向かって進むのに。


勇者の姉っていう微妙なポジションが、私って何だ?と考えるようになってしまった。



「あんまり考え過ぎることじゃないんじゃないか?そんなこと言ったら、俺だって何の為に生まれて来たんだ、とかなるだろ。」


「リトはこの世界の人だもん。存在すべくして存在してるんだよ。」


「ゆりはたまたま出身がこっちの世界じゃないだけだろ?俺もゆりも変わらねえよ。」


「そういうもんなのかな。」


「そういうもんじゃねえか。」



ぽんぽんと頭を撫でてくれる。


「自分がすべきことなんて、結局は自分が思うことだ。ゆりはゆりが考えた結果で行動すればいい。間違ってると思ったら、俺が止める。」


「…うん。ありがと。」



焦らずに、この世界に来た意味は私なりに見つけていけばいい。



しばらくの間、2人で満点の星空を眺めていた。






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