表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/76

浮遊と根の上の世界

「リト…もしかして寝てないの?」



いつも通りに朝早く目がさめると、いつの間にかテントで寝ていた。しかし、隣に1番存在感のあるリトが居なくて首を傾げる。


リトは基本的には朝は弱い方なので、私が先に起きることが多い。そのぶん寝るのは私の方が早いけど。


リトの毛布は使われた形跡がない。ていうことは、寝てないってことだ。



「おはようでしゅ。」


そう言って、ぽてぽてと私の側に歩いて来て、顔を擦り寄せるイナリ。少し声が小さいのは、夜中ずっと寝ていたからだろう。


「おはよう、イナリ。よく寝れた?」


擦り寄るイナリを撫でながら尋ねる。

本当にイナリの毛並みはやばい。気持ち良すぎて手が離れない。


もふもふ。


そしてこの尻尾が堪らない。朝から癒される。



「ははさま、まほーつかうのはずるいでしゅ。」


「だって、うるさいとイナリ起きちゃうでしょ?私の我儘なの。イナリはこういうとこ頑固だけど、私はイナリに休んで欲しかったから後悔してないよ。」


「うー。わかったでちゅ。でも、こんやはイナリががんばるでちゅからね!」


そう言って、ツンとそっぽを向く。

でもその尻尾は高速でぽふぽふと動いている。


可愛い奴め。



外に出ると、座りながらリトが寝ていた。体勢辛いだろうからテントで寝たらよかったのに。



朝食にパンと昨日のスープの残りを食べたら、テントも閉まって出発の準備をする。


全員がウィースに乗ったところで、リトが勇人に話しかける。


「勇人、お前の日頃のトレーニングの成果を試すときがきた。魔法でウィースごと俺たちを空まで浮かせるんだ!」


そう言って上空を指し示すリト。最近リトと勇人の関係が親子より師弟関係の色合いが濃くなってきた気がする。


「ぱーぱー!」


うん、勇人は手を挙げたパパの元までふわりと飛んで指先に抱きついた。


「流石に一発じゃうまくいかないか。」



リトはそのまま勇人に高い高いをしながら、考えている。



勇人が賢いって言っても、みんなを浮かせることまではまだ出来ないんじゃないかな。


「あうー!!」


きゃっきゃと勇人の笑い声が大きくなる。


リトが私の後ろに乗っているので、私も考えていたら少し目を離してしまっていた。


「よし、これだな。勇人、いけーーーー!」



リトの叫び声で後ろを振り返ると、リトが勇人を上空へぽーーーーんっと放り投げているところだった。しかもかなりの力で。



「ゆ、ゆうとーーーー!!!」


思わず悲鳴をあげる私。



ぐんぐんと上昇して、ついには勇人は木の根のない上空へと到着した。


「ストップだ勇人!!」



リトがそう叫ぶと、勇人は上空でピタッと止まった。


「よし、勇人!俺たちもそこまで行きたいんだ、浮かせてくれ!」


そう言って勇人に向かってリトが手を伸ばす。



「うー?」



じっと空から見下ろす勇人くん。

空に浮いてると本当に天使だわ。



しばらくするとキョロキョロしだした勇人は、上空で何かを見つけたらしく、そのまま浮かんで…


「ちょっ、勇人待て、危ないから1人でどこか行くなよ!」


リトが下から叫ぶけど、聞こえないのかふわふわと何かに近づく勇人。



ゆうとー!ゆーうーとー!!


下からは私とリトとイナリが必死に勇人を呼ぶ。



なんで私、飛行魔法とか覚えなかったの!?私のバカバカ。



自己嫌悪に陥りながらも必死に勇人を呼ぶ。



しばらくすると、叫ぶ私達に気づいたのか、勇人が急降下してきた。



いや、勇人!そのスピードは危ない!


普通に落下するようなスピードで降りてきた勇人は、あっという間にリトの腕の中に収まった。




はーーーーー。



全員の安堵の溜息が出る。



「まんまー。ぱんぱー。」


そう言って、上空を指差す勇人。



すると、ウィースがぐらぐら揺れる…ではなく、ウィースごと徐々に浮かんでいく。



急に浮いたウィースは思わず悲鳴をあげていた。


流石に重いと魔力も消費するのか、それとも浮かすことが大変になるのか、ゆっくりゆっくりと上昇していく。



「やっぱり勇人はすごいな。」


そう言ってリトは微笑むけど、私は笑えない。



だ、だって、もうかなり高いよ?もしこのまま勇人の魔力が切れて落下したら、大怪我どころじゃない状態になっちゃうよ?


あわあわと震えていると、漸く先ほど勇人がいたであろう高さまでたどり着いた。



そのまま木の根が密集している位置まで移動すると、漸くウィースの足が足場にたどり着いた。



目の前に広がるのは、ところどころに穴が空いた木の根の上の景色。それでも木の根の迷路の中に比べたら、1つ1つの木々が巨大過ぎて間隔が空いているのでとても拓けた空間だ。


そして、根っこの迷路は茶色い世界だったが、木の根の上は緑豊かに植物も多く生息していた。



「うー!やーう!」


いつも収まっている籠という定位置に戻った勇人は、ウィースにまるで指示を出すようにぺちぺちと籠を叩く。



とりあえずということで、かなりの重さになっている私達全体に軽量化の魔法をかける。これで木の根が折れて落下する心配はなくなるだろう。



なぜか勇人が行きたい方向があるらしいので従ってみる。




たどり着いたのは、一輪の巨大な花の前。


かなり大きなチューリップ型の花だけど、ちょうどウィースに乗っていると花の中が見える。


「羽根の生えた小人?」



その中には透明に近いキラキラ輝く羽根をもった、小さな女の子が眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ