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巨大な森と巨大なヘビ

翌朝は雨は止んで、代わりに外は霧が出ていた。


大雨よりはマシだということで、出発の準備をする。


朝食は昨日のアマドリをミンチにして、ハーブを加えて混ぜて、ロングシープの腸に詰めたアマドリソーセージ。ナッツと野菜をオリブオイルで和えたサラダ、そして暖炉で焼いたパンにジャムを添えた。


屋内だと手の込んだ料理が出来るからありがたい。勇人は育ち盛りだから、なるべくバランスのとれた食事をさせたい。


2日間お世話になった冒険者小屋を掃除する。

リトにはそんなことしなくてもと言われたけど、そこはまぁ気持ちの問題で、次のメンテナンスがいつかわからないけど、別の冒険者の人にも気持ちよく使って欲しいしね。マナーです。



リトもそう言うと手伝おうとしてくれたけど、浄化魔法でさっとやるからと勇人を任せた。



それならとリトは勇人とトレーニング。

最近、リトの親バカぶりが激しいというのか…


リトは勇人が将来に勇者として困らないように、赤ん坊のうちから体力づくりのトレーニングをしている。当の勇人は遊んでくれてると思ってるから、何も不都合もないんだけど。


魔物や魔王なんかが存在する世界だから、勇人には自分の身を守る術は持っていてほしい。



「よく見てるんだぞ、『火の妖精よ、戯れの力を我に。火玉(ファイアボール)』!」


「あうあうあー!」


リトと勇人の手から火の玉が暖炉に向かって飛び出す。



「よし、上手に出来るようになったな。」


そう言って勇人を抱き上げるリトさん。

あの、あんまりうちの弟に危ない魔法を軽々しく教えるのはやめてくれませんか。



準備が終わったので、ウィースに跨り、冒険者小屋を後にする。



霧の中、足元は昨日の雨と朝露で濡れた雑草が生い茂る。霧で視界は悪いが、イナリが耳がいいので森の音が聞こえるという方向に進む。その代わりに私が探索魔法を周囲に展開して、着実に森へとたどり着くことが出来た。


森は赤と黄色の葉をもつ木々が続いて秋の色をしている。これだけなら、懐かしい日本を思い出す景色なんだけど、近づくにつれてその思いはなくなった。



「ねぇリト。この森の木って大き過ぎない?」


「大きいどころじゃねぇな。巨大すぎる。」


目の前に広がるのは森。でも、それぞれの木のてっぺんは遥か上空。ウィースに乗った私達の視線だと、目の前は木の根っこで、その根っこですら私達よりも背が高い。


木の一本一本が都会のオフィスビルのような大きさだと思えば分かりやすい。木々の間は互いの根っこが張り巡らされていて、この森を通るなら木々の根っこの下を通るしかない。


「これがシュダットの森が、別名『小人の迷い森』って呼ばれる理由か。」



黄金道でお客さんや街の人から聞いた話だと、シュダットの森は近隣の人達からそう呼ばれるらしい。


マンテノウス山脈へ行くルートが、なぜポトムルートが主流なのか。


理由は3つ。1つはこちらのルートがマンテノウス山脈を登るのに険しく舗装されてないのもある。このルートで必ず通るこのシュダットの森が広大過ぎるのでかなりの備えが必要なことも1つの理由だ。最後の理由は、このシュダットの森を抜けることが困難なことだ。


木の根の迷路を進むため、思った方向に進めない上に、森が大き過ぎてマンテノウス山脈が見えない。特殊な地質故に大きく育った森は、方位磁針がぐるんぐるんと回るくらいに磁力を含むので方角も特定できない。


それでもここが1つのルートとなっているのは、抜ける方法がゼロではないからだ。


稀に偶然抜けることが出来た強者もいるが、大半の人はこの森のエルフに案内してもらう。


エルフは閉鎖的な種族なので、物々交換の容量で食糧や日用品を売る商人が、お金の代わりに案内を頼むケースが一般的だ。


エルフもタダで道案内するほど優しくはない。それに道案内をお願いするにはエルフの里に行く必要があり、そもそも里にすらたどり着けなければ森を抜ける希望はない。


「しかも聞いた話じゃ、少し前にエルフの里に行った冒険者が、道案内を断られて里を襲ったって話だったか?」


「うん、死者は出なかったけど、怪我人が多く出たみたい。その冒険者達はエルフに返り討ちにあったけど、そのまま森に逃げたって噂だよね。」


この話は、ちょうど商人としてこのルートを通って、マンテノウス山脈から降りてきた商人に聞いた話だ。


サルガーナさんという、一見は商人ではなく冒険者だと100人に聞いたら100人が思うような、筋骨隆々なおじさんだ。


ちょうど収穫祭当日に黄金道に着いて、食べたバケットサンドが久しぶりの食事だったらしく、何個もバケットサンドを頬張り、感動の涙を流しながら教えてくれた。


サルガーナさんがエルフの里に着いた時が、ちょうど冒険者達が逃げた後だったらしい。



冒険者達は怒りに任せて里中に火を放ち、多くのエルフの家や周囲の木々、畑が焼かれて、自然を愛するエルフ達は悲しんでいた。


サルガーナさんはその状況を見て、少しでも役に立てばと食糧や薬草、マンテノウス山脈で手に入れた商品の一部を里に寄付したそうだ。サルガーナさんは顔馴染みだから大丈夫だが、初めて行くならこれを持って行けと、サルガーナ商会の印の入った商品をいくつかと、紹介状を頂いた。



これを持って入れば、可能性はあるからと協力してくれてサルガーナさんに感謝だ。





森の中を進む。


正確には木の根を掻き分けて進む。

気分はアリにでもなった気分だ。



と思っていたら、フォレストアントと呼ばれる緑色の巨大なアリに出くわした。大きさはウィースより少し小さいくらいだ。



リトがなんなく倒し、再び進む。



「あうあうあー!」


「キシャー!」




さらに進んだ先で出くわしたのは、巨大なヘビ。

木の根と同じ色だったので分かりにくく、いきなり襲われた。



と同時に、勇人が練習していた魔法を発射。ヘビを倒すように大きさもコントロール出来るようになったのか、巨大な火の玉がヘビに当たり、ヘビは焼かれて絶命した。


「あーうあー!」


火が木の根に飛び移り、あたりが焼けそうになっていると勇人がまたもや魔法を発動。



小さな雲が出来て、火の着いた木の根にその雲が雨を降らして消化する。


「リト、勇人に雨を降らす魔法まで教えてたの?」


「俺は火と光属性しかないから、雨の魔法は使えねぇよ。」



じゃあまさか。勝手に魔法覚えて使ってる感じ!?


ひとまず赤ん坊ながらも巨大ヘビを倒すという偉業を成し遂げた勇人を抱っこして褒める。撫でる。


「まんまー。」



このプリティな天使が巨大ヘビを瞬殺したとは信じ難い。でも事実なんだよね。



リトがウィースから降りて、巨大ヘビの亡骸に近づいて、ペタペタと確認している。


「勇人が焼いちゃったけど、何かお金になる部分がある魔物なの?」


ヘビだから蛇皮がお金になるんなら、焦げてるから使い物にはならないと思う。


「たぶんこいつはジャイアントルートっていう魔物だな。初めて見た。たぶんこの森にしか生息しない魔物だ。」


レアな魔物ってことね。


「ウィースが、『きば』と『ち』がきちょうだっていってましゅよ。」


「ウィース知ってるの?」


「むかちにきいたことがあるみたいでしゅ。とくに『ち』はきちょうなくすりがつくれるそうでしゅ。」


「それなら採っとくか。」


さすがにまだ血は見慣れないのでリトに採取はお願いした。うー、あの血の入った容器はもう使えないかも。


劣化させたらよくないので、空間収納にしまうのはやりましたよ。ちょっと涙目になっちゃったけど。


そしてなんと、リトがヘビは食べれるからと解体して渡してきた。今日はヘビ料理だなと笑顔で言われて、断りきれませんでした。


リトが食べれるって言ってるんだから信じよう。




だんだんと頭の上を覆う木の根の隙間から差し込む光が無くなって、遂には真っ暗になった。



歩いているとちょうど幹に突き当たった。進んで来た道以外に進む道がない。つまり行き止まり。もう少し手前にあった道を逆に進むべきだったらしい。


この暗さで進んでも危険なので、今日はこの行き止まりで野宿。幸いにもこの行き止まりはある程度の空間が出来ている。


こんな風にシュダットの森の一日目を迎えたのだった。

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