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アマドリと攻防

翌日も天気は生憎の雨。


豪雨で空は濃い灰色に覆われて、外は夜でないのに暗い。風は強くないので嵐ではないが、冷たい雨で視界もままならないのと、冒険者小屋という安息地もあるため、天気が少しでも回復することを願って出発は明日に見送ることにした。



朝ごはんは手づくりマカロニのサラダとハムエッグ。連日の旅の中で、パンの貯蓄は底をついた。小麦粉は大量にあるので、比較的に作るのに手間がかからないパスタが最近の主食だ。


朝食を終えたら、私は暖炉で旅用のパンのストック作り。空間収納があるからこそ出来る内容だ。ついでに旅先の調理の手間を省くための下処理や仕込みもしておく。タッパーとかあると便利なんだけどなー。ないものは仕方ないので余っているポーション用の陶器の瓶に小分けに詰める。


ポーションなどの必要なアイテム作りも忘れない。



途中でリトはウィースと雨の中で狩りに出かけた。旅での基本は自給自足。この先も集落の情報がないので、なるべく食糧は現地調達したい。先に進む旅だと雨の視界の悪さは困るが、一箇所を拠点にして分かれるならば位置探索のピアスで戻れるので可能になる。


「あうー!!」



勇人は久々のベットの上をイナリと一緒にコロコロと転げ回っている。ずっとウィースの上で大人しくしている分、こういうところで思いっきり身体を動かして欲しい。




「ぱんぱー!!」


しばらくすると、リトが狩りから帰ってきた。


視界が悪いのと、この雨の中なので魔物にはほとんど遭遇できなかったそうだ。捕まえたのは『アマドリ』。晴れの日は何処かに隠れているが、雨の日に活発に活動する変わった鳥の魔物だ。見た目は水色のニワトリで、柔らかい肉質が特徴なんだそうだ。


ちょうどアマドリの群れに出くわしたので、4羽程を捕まえて戻ってきたらしい。


戻って早速着替えて、服を乾かす。


リトが動くたびに、少し歩けるようになった勇人がよちよちと後ろからついて回る。親の後ろをついて歩くアヒルみたいだ。


微笑ましく見ていると、リトが暖炉の前に座る私の横に腰掛ける。それを真似して、勇人もトテンと座り込む。


「今朝から真似っこが勇人の流行りみたい。」


くすくす笑いながらリトに勇人の様子を告げる。

ちなみに今は膝の上のイナリのブラッシング中だ。


「真似てるついでに剣術でも教えてみるかな。」


「まだ歩けるようになったばかりだから、剣は早いんじゃない?」


「意外といけるかもしれねーぞ?なんたって勇者だからな。」


冗談なのか本気なのか分からない調子でリトが勇人を見つめながら言う。案外本気な気がする。



じーっとリトを見つめる勇人。

何を思ったのか、私の肩を抱き寄せてチュッとキスをするリト。



う。最近不意打ちが多い。というか頻度も糖度も高いよ。


未だになれずに赤面する私。



何故かドヤ顔で勇人の方を見るリトさん。何がしたいの!?



それをじーっと見ていた勇者が、リトの膝を伝って立ち上がって私の前までトテトテと歩いてくる。抱っこかな?と私が考えていると、勇人はふわりと浮かんでそのまま顔を近づけてきた。


天使の顔がドアップ。可愛い。


なんて思いながら、恐らくリトの真似してチューしようとした勇人の前に大きな手が差し出される。


それを退けようとするけど、動かないリトの手。


「うー。ぱんぱーやー!!」



邪魔するリトに勇人がお怒りだ。


「ゆりのチューは俺のだ。」


どんな理屈やねん。

思わず関西弁でつっこむ私。


それからも2人の攻防が繰り広げられて、勇人が大泣きしたり、リトがそれを教育だと厳しい態度で接したり、それでも可哀想になったのか最終的にリトが勇人をあやしたりして、平和に冒険者小屋の一日が過ぎていく。



夜はアマドリの骨でとった鶏がらスープ、ジンジー、にんにくでお米とアマドリの肉を炊き込んだシンガポール風のチキンライス。同じく鶏がらスープに塩やハーブで味付けしたアマドリ肉団子と野菜のスープも添える。


昨日に引き続きお米料理。タイ米に近いのでエスニックな料理にしてみた。


施設での夜ご飯レシピに困って、世界の料理を迷走して作った日々が懐かしい。


アマドリの肉はジューシーで柔らかい。火が通ってもジューシーさがなくなっていないので、非常に美味しくお米と食べることができた。



夜に寝る頃には、土砂降りの雨も勢いをなくして、小雨程度の雨に変わっていた。この調子であれば明日は大丈夫だろうということで、明日の早朝に冒険者小屋を出ることにした。



「まんまー。」


夜のベットの中で、私の胸にぐりぐりと頭を擦り付けてくる勇人。こういう甘えた仕草は母性本能をかなり擽ぐる。かわいいよー!!


思わずぎゅーっと抱きしめて、慌てて窒息してないか確認する。


「勇人、代われ。」


勇人ごしに横に寝転がるリトが割とガチな声音で言って、勇人の身体に手をかける。


「やー!!!」


勇人は私の服の胸元を掴んで抵抗する。

ちょっ、服が伸びるし、胸が見えちゃうから!


慌てて勇人を引き寄せる。


と、眉を顰めて私を見るリトさん。いや、不満そうな顔してもダメなものはダメだからね。



その代わり…という私にはよく分からない理屈で、その後はリトから執拗なキス攻撃を受けて、久しぶりに平和な夜が過ぎていった。

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