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収穫祭とバゲットサンド

「お姉さん可愛い!マリーとお揃いだね!」



朝起きて、朝食用のパンや料理を仕込み終わったら、マーガレットさんに連れられて渡された服に着替えた。


毎年の収穫祭は、男性は特に衣装などはないものの、女性はこの地方独自の民族衣装を着るのが定番らしい。


シャロンさんが昔着ていたという民族衣装を、マーガレットさんが今日までに私用に仕立ててくれたらしい。


マリーちゃんと色合いはお揃いで、白の丈が短くめ胸元が広く開いたブラウスに、深緑色で花柄の刺繍が可愛い胴衣とミモレ丈のスカート、サテン生地のピンクベージュ色のエプロンをつける。


地球で言うヨーロッパとかの民族衣装っぽい感じなのかな。髪を2つに三つ編みにしたおさげスタイルのマリーちゃんはとっても可愛い。


さすがに黒髪おさげとヨーロッパ風の民族衣装は似合わないので、編み込みのポニーテールを赤いリボンでまとめた。


マリーちゃんは可愛いと絶賛してくれたけど、慣れない格好に違和感。


胴衣は水色のリボンでキュッと締められて、胸元の開きが広いから谷間がもろ見える。日本人体型な私だと足も短いし、間違ってもセクシーな体型ではないからこの衣装はハードルが高い。


アンソニー家の女性陣にはべた褒め頂いたし、せっかく仕立ててくださったので今日はこれで1日頑張ることにした。


朝食の時間が終わったら、食堂の外の入り口付近に出店の準備をする。


黄金道を眺めると、他にも多くの人が家や店の前に出店を出している。収穫祭はその名の通り、今年の豊穣に感謝して、人々がお祭りを開く。美味しいものを食べて、美味しいお酒やジュースを飲んで、作物を生み出してくれる大地に感謝の意を示す。


商人や観光で黄金道に訪れる人は、収穫祭ならではの美味しい食べ物と、豊かな大地の恩恵にあやかるために来ている。


お祭は万国、異世界も共通で楽しむものなので、私も気合が入る。


食堂の朝食の時間帯が終わる頃には、男性陣の収穫作業も終わったらしく、出店や少し腰掛けられるように椅子を運ぶなど、力仕事はお願いする。


女性陣で仕込みが終わったものは順に運んで、準備が整った。



よし、頑張るぞと気合いを入れる私の側に、リトがやって来る。



「ゆりはその格好で表で売るんだよな。」


私の姿をまじまじと見ながら呟くリト。う、そんなに似合わないかな。


「似合わないのはわかってるもん。」


そう私が返すと、なぜか大きなため息をつかれた。む、なんか失礼じゃないか。


ちなみに勇人は仕事の邪魔になるといけないので、リトの腕の中だ。


「いや、すげー似合ってるし可愛いから、いろんな野郎にゆりが見られて、絡まれないか心配だ。」


なんか時々リトの中で私が美化され過ぎてる気がする。


「マリーちゃんの方が可愛い過ぎて攫われないか心配だよ。私なんか誰も見ないって。」


なんか呆れた視線で見られてるけど無視。



「そんなに心配なら、エプロンのリボンを目立つように前面の右側に付けとくといい。」


そう言ってマーガレットさんがエプロンのリボンを結び直してくれた。


「仕事用も兼ねて付けて貰ってたから後ろで結んでたけど、本来は既婚者は右側、独身者は左側、未亡人や仕事は後ろ、前だと処女の意味があるんだよ。」


お祭りなだけあって、出会いの場でもあるらしいので若い未婚の女性は左前面にリボンを結んで男性にアピールするらしい。


まだ結婚とかしてないから少し照れるけど、リトが安心した顔してるから右前面に付けとこう。私に声かけるような人って少ないと思うんだけどな。




そうして始まった出店の営業。

アンソニー家で売るのは、バゲットサンドとクッキーだ。


アンソニー家の看板メニューは美味しい小麦を使ったパン。このパンを収穫祭に相応しいものにするために、様々な種類の具を挟んだ豪華なサンドを売ることにした。クッキーは毎年出していて好評なので、近所の人の期待に応えるべく作る。


中に挟む具のアイデアは私が出して、組み合わせはマリーちゃんが中心に考えた4種類のサンドを売る。


バゲットサンドは、ゴールデンターキーのローストと野菜のマスタードサンド、ベーコンとゆで卵とかぼちゃサラダのサンド、生ハムとチーズとフルーツジャムのサンド、りんごと甘芋のカスタードサンドの4種類だ。


クッキーは、季節のジャムやドライフルーツを使ったクッキーにしている。


作り置きするとバゲットがしなしなになってしまうので、バゲットサンドは注文を受けたらその場で挟む。



ちょうどお昼どきなので、アンソニー家の男性陣に宣伝がてら、店前で食べてもらうことにした。


人が食べてると、やはり気になるのかお客さんが集まってきた。ランチにちょうどいいので、見にきたら買ってくれる人が多い。


手で持って食べれる手軽さから、買った人は黄金道の他の店を見に歩きながら食べているので、それを見た人が買いに来てくれる人も増えた。


収穫祭ではクッキーなど出来合いのものを売る店がほとんどなので、その中で異質なバゲットサンドはすぐに黄金道中に広まった。女性陣総動員で対応して、想定以上のお客さんに買ってもらったことで、日が沈むだいぶ前にはバゲットサンドは完売となった。



残りはクッキーだけなので、シャロンさん達だけで大丈夫との言葉に甘えて、リトと収穫祭を見て回ることにした。




「リボン付けてても声かけられてたな。」


その様子を思い出して、むすっとした顔をするリト。


「シュダットの森について情報を聞くのに、私が話しかけたりも多かったからだよ。」


実際のところ、忙しくてあまり聞けなかったが、たまに情報を教えてくれる人はいた。


「そのあとに口説かれてたけどな。」


「珍しい髪色だから揶揄ってただけだよ。」


フレンドリーに接してくれる人が多かったので、その延長で一緒にお祭りを見ないか誘ってくれる人も多かった。


「たまにリボンの効果も出てはいたけど、それくらいじゃ諦めねぇか。」


「それより、本当にたくさん人がいるね。お店もたくさんあるから、いろいろ気になるなぁ。」


黄金道は、この日は収穫祭のために馬車の通行も制限されていて、収穫祭を楽しむお客さんが道に溢れている。


キョロキョロしていると、キュッとリトに手を取られる。


「逸れそうだから、繋いでおく。」


「うん。」



道を歩きながら、たまにお店を見たりして過ごす。


なんか、地球でも体験したことない王道なデートをしているのが不思議な感じだ。繋いでいる手が熱い。


リトに妖精のお守りを買ってもらったりして、収穫祭を漫喫した。



夜は短時間だけ営業して、その後は家族の中で収穫祭を祝うべく、豪勢な晩御飯を食べた。


家庭で収穫祭の時に料理するものとしては、ゴールデンターキーの丸焼きがある。


マーガレットさん特製のゴールデンターキーの丸焼きと、夜の営業の残り料理だけでかなり豪華な食事になる。



バゲットサンドがかなり好調だったので、収穫祭では過去最高の売り上げになったそうだ。小麦の出来も今年は最高とのこと。


依頼報酬として一部売り上げを私達に払うという話が出たけど、丁重にお断りをした。こちらも宿と食費が浮いてるのは大きいからね。


お互い感謝の言葉を述べあいながら、夜遅くまで収穫祭の晩餐は続いた。



仕事をやり切った達成感と、楽しかった高揚感を感じながら、黄金道の収穫が終わった。

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