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三頭の魔物と新たな仲間

ブヒーン!


ンモー!


ヒヒーン!


キュイーン!



「家畜って人懐っこいんだねー!」


「あうー!」




いや、それはゆり限定だと思うぞ。



食堂を後にして、家畜を飼ってる牧草地にやってきたら、あらゆる家畜用の魔物に囲まれた。



最初は襲われるかと心配したが、どの魔物もデレデレだ。勇人も魅了効果からか家畜に可愛がられている。



「ははさまからはなれるでちゅー!!!」


隙あらばマーキングする勢いの家畜にイナリが切れた。



イナリが飛び込んだら、家畜達は一目散に逃げ出した。小さくて可愛らしい姿だが、家畜とは比べ物にならないくらいに強い子狐だからな。



「みんな逃げちゃったねー。」


「あうー。」



「イナリにビビるようなやつらはいらないでしゅ!ははさまのおともはイナリだけでじゅーぶんでちゅ!」


ぷりぷり怒るイナリが、ゆりや勇人の身体を尻尾ではらいまくる。あれがイナリのマーキングなのか?




「魔物にすぐに懐かれるとは面白い奥様ですね。」


牧草地で飼育をしているマルセロさんが声をかけてきた。トニーノさんにあらかじめ勧められた酪農家で、昔は魔物使い(テイマー)として冒険者をやっていた変わり者だそうだ。馬だけじゃなく、様々な魔物を育てていて、そこらへんの家畜よりよっぽど丈夫で質もいいとお墨付きだ。


見かけはヒョロリと背が高い爺さんだ。


「トニーノから話は聞いてますよ。赤ん坊と子狐を連れた若夫婦がきたら、もてなしてくれと連絡がありましたからね。」



トニーノさんから話は通っているみたいだ。


「家族全員が乗れる丈夫な馬を探している。馬車を引かせるつもりはないから、乗りやすくて逃げ足が速いか、自衛手段があると嬉しい。」


まずは最低限の要望は出しておかないとな。



「なるほど。冒険者の移動手段として役に立つ子ですね。奥さんや息子さんが懐かれやすそうなので、魔物の種類は問わずにいけそうですが…」


そう言ってちらりとイナリを見る。


「あの白狐に怯えないとなると、格段に数は縛られますね。私も長年旅をしていましたが、白狐は初めて見ましたよ。」


そう言って楽しそうに目を光らせるマルセロさん。何か気配を感じ取ったのか、イナリが尻尾を逆立てて威嚇モードに入っている。


「いやはや可愛らしい白狐だ。あとでぜひモフらせて頂きたいものです。」



笑顔が怪しいぞ爺さん。



そのままマルセロさんの案内で、牧草地を横切る。



「そこの白狐ちゃんがいる時点で、恐らく他の畜産家やブリーダーの魔物ではお眼鏡に叶う子はいなかったでしょうな。私も腕がなる。」


「イナリって凄いんだねー。」


「ねー。しゅごー!」


フフンとイナリが得意げにしているが、イナリの所為で難航しているともいう。


まぁ、魔物と出くわした時に怯んで暴走するような奴ではなくなるから、事前に候補が絞れてある意味よかったかもしれない。



「私のとっておきの3頭を紹介しましょう。あとは単純に会ったときの相性で決めて頂ければと思います。」


「楽しみだねー。」


「あいー!」



ひとつの獣舎の前に到着した。


「普段は仲が悪いので一緒にはしないのですが、せっかくなので全員と会えるように一箇所に移したんですよ。」


獣舎の中に入ると、大きな魔物が3頭仕切られて並んでいた。



「はっきりと言うと、この3頭は私を主人とは認めない暴れん坊達でね。1頭でも連れてくれるならこっちも願ったり叶ったりなんですよ。それぞれ紹介しますね。」



そう言って、まずは左にいる魔物の前に移動する。



「この子はシルバーディア。見ての通り、銀色の2本の角に、灰色の大きな身体の雄鹿だ。角による攻撃力が高く、元々が森に生息しているから足場が悪くても走れる。物理攻撃には弱いが、魔法攻撃への耐性はある。頭はいいが、この3頭の中では一番臆病かもしれないな。」


確かに俺とゆりが乗っても余裕がありそうなくらいに身体が大きい。銀色の角もまるで剣のように鋭く光っている。



マルセロさんが自信を持つだけあって、イナリが少し威嚇しても睨み返す度胸はある。




「次の子はビッグドードーだ。二足歩行の飛べない巨大な鳥で、主に地上を走ることに特化した鳥だ。様々な種類がいるが、ドードー種の中でも身体が大きいのがこのビッグドードーで、足の速さだけなら3頭の中では一番だ。ただ、1番スタミナはないから、山道などストレスがかかる道だと休息が必要になる。」


確かに鳥にしては巨大だ。二本足なので乗り心地も安定しそうだな。ただ、目的地がマンテノウス山脈なので、体力がネックなのは辛いな。



「最後はユニコーン。かなり凶暴で希少な馬だが、それだけパワーもスタミナもある。巨大な白馬で、鋭い一角を持つ。角には癒しの力があると言われるから、盗賊に狙われる可能性もあるが、自衛も出来る馬としてはユニコーン以上は天馬くらいだろうな。魔法耐性も高い。」


馬としてはこれ以上強い馬はいないくらいに、スペックのいい魔物だ。むしろ、イナリと同じくらいに希少な魔物なので、連れ歩くことも大変そうだ。手懐けられるかが問題だな。



3頭とも、イナリに対する恐怖はないので、まずはそこは合格だ。むしろ巨体に見下げられてるイナリがかなり威嚇モードになっている。


あとは全員との相性か。


「ゆりと勇人も、どいつがいいか確認してみてくれ。」


まずはゆり単体で全員と触れ合う。



結論からすると、3頭とも雄なのでゆりにはメロメロだった。


「ユニコーンは処女が好みなんだが、不思議なもんだな。天性の才能かもしれん。」



勇人がいるから勘違いされているが、ゆりはユニコーンの好みどんぴしゃってことだな。少なくとも俺はまだそこまで手を出してない。



次に俺が触れに行く。


結果としては、全員に嫌な顔をされた。

恐らくゆりが大好きな時点で、俺は敵…までは行かなくても、いけすかないポジションなんだろう。


次は勇人の番だ。ゆりが勇人を抱いて触らせに行く。ついでにイナリも仲良く出来るか含めて確認してもらう。


「キュン。」


勇人が近づくと、シルバーディアは逃げ出した。予想外だな。



「あれ。勇人嫌われちゃったのかな?」


「うー。」



次にビッグドードーに近づく。


「イナリはこいつはいやでちゅ。」


イナリからNGが出た。マルセロさんにはイナリが喋れることは見破られたので、イナリには意見を言うように伝えている。


「なんでなの?」


「じぶんのちからをかしんするバカはだめでしゅ。」



なかなか手厳しい。イナリは魔物と会話できるから、余計に詳細な性格がわかるんだろうな。



最後はユニコーンだ。


「あいー。」


勇人は触らせてくれるので合格みたいだ。



何やらイナリとユニコーンは話し込んでいる。


「えらそうでちゅが、イナリはいいでしゅ。でもじょうけんがあるみたいでしゅ。」


「条件?どんな条件なんだ。」



「えっと、ちゅうせいをははさまにちかいたいでちゅが、すでにイナリがいるでしゅ。ととさまをしかたなくあるじにするけど、まもるのはははさまがいいそうでしゅ。」


ははさまモテモテでしゅね。というのがイナリが聞いた内容らしい。


思わずじと目でユニコーンを見ると、ヒンと鳴いて顔をそらされた。生意気な馬だ。



「俺が嫌なら勇人を主人にしてもいいんじゃないか?」


「えと、ゆーとはちゅきだけど、いっちょにたたかうならあいしょーがよくないみたいでちゅ。ざんねんなことに、ととさまとはあいしょーばつぐんみたいでちゅ。」


残念とはなんだ。残念とは。


「あとは、ははさまにブラッシングはおねがいしたいそうでしゅ。」



「ご指名ならがんばるよ!」


ゆりが意気込む姿を見て嬉しそうに尻尾が揺れている。


なんか微妙な下心を感じるのは俺だけか?



「あと、たびしゃきでねらわれるのがめんどーだから、ととさまの剣と同じ名前をつけてほしいそうでちゅ。」


剣と同じ名前?


「ユニコーンは高位の魔物だから、物体と同化が出来る。同じ名を持つ剣に宿ることで、魔剣とすることもできると聞いたことがあるな。」


「そなたがたいせつなものをまもるかぎり、われはそなたのつるぎとなろう。だそうでしゅ。」



イナリの言葉を聞きながら、ユニコーンを見つめる。いい目をしてる。


「それなら俺からもお願いする。俺の剣となり、俺の大切な人たちを守るために力を貸して欲しい。お前の名前は、『ウィース』だ。」



ヒヒーン。



こうして旅の仲間がまた増えた。





「ウィースに付ける鞍や手綱はあてがあるからこちらで用意しよう。明日取りに来てくれ。」



マルセロさんとウィースに別れを告げて、冒険者ギルドに従魔登録をしに行く。明日ウィースを引き取りに行く際に同行して登録してくれるそうだ。



「ウィースに乗るの楽しみだな。」


「あいー!」



ゆりと勇人もご機嫌だ。



「あんまりはしゃぐなよ。」


俺としては、ユニコーンが仲間になったことに今更少しビビってる。よく考えれば幻の魔物って呼ばれてるんだぞ。




まぁ、仲間になるのは嬉しいことだ。深く考えるのは辞めよう。

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