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雨とホットミルク

「あーめー?」


「お、よくできたなー勇人!」



ただいま移動中、そして天気は雨。


ザーッと気持ちがいいくらいに雨が降り注いでいる。



ちょうど3日目は森を抜ける行程らしく、森の中なので雨によってさらに暗い雰囲気になっている。



朝から降り続く雨は、止む気配を全く見せず、昼過ぎになってもこの調子だ。




この雨の天気で、やることがなくて暇なイナリが今は見張りを買って出ている。リトの向こうで、イナリの耳がぴょこぴょこ動き、尻尾は忙しなく左右に揺れている。



朝から雨の中で火を使うことはできないので、昨日の晩に茹でておいたマウンテンボアの茹で豚と野菜のサンドイッチを、昨日の騒ぎのお詫びがてら皆さんに配った。お詫びどころか、凄い勢いでお礼を言われたけど。


とにかく雨の日は必ず質素な食事、が旅の基本らしく、朝から変わった朝食が食べれて喜んでくれたのでよかった。



昼間はこの雨の中で休憩する場所もないため、途中のトイレ休憩で止まるくらいで、昼休憩もすっ飛ばして馬車は走っていた。



リトは勇人に、トレーニングと称して言葉を教えたり、身体作りをしているそうだ。




昨日の夜、リトにテントに連れ帰られて、主に私があっぷあっぷさせられているところを助けてくれたのは勇者な勇人君でした。


なんと勇人が立ち上がって、リトの側までよろよろしながらも歩き、ポカポカとリトを叩いてくれた。


リトが起き上がる反動で倒れた勇人の泣き声で、リトのその行為は終了。



私は勇人が歩けるようになったことに感動していた。だって勇人が立つばかりか、歩いたんだよ!


リトのむすっとした余計な一言がなければ。


「今さらだろ。旅立つ前から、勇人歩いてたぞ?」




弟のはじめての勇姿を見逃した。そして、なぜかそれを黙ってたらしいリト。


そこからは形成逆転。



現在進行系で私は不貞腐れています。

勇人のはじめての立っち。はじめての歩き。


両方を見逃すなんて、母兼姉としてはあるまじきこと。


「勇人さんは可愛らしいし、頭もいいですからね。あっという間に成長しそうです。」


「それ、フォローになってないと思うよ。」



ミレーナさんの一言でさらにダメージ。

成長が早いからこそ、見逃した事実は大きい。





「ゆり。」


隣から、リトが呼びかける。


ふん。



「ゆり、勇人がゆりに用があるってよ。」



ちらり。


くりくりのお目目が、こちらを見つめてる。



…かわいいよう。



リトの腕から奪うように勇人を取り上げる。

最初から渡すつもりだったからか、すんなり勇人を抱っこした。



体重も重くなったなぁ。



「まんまー。」



膝の上で私を呼ぶ勇人。少し離れて勇人を見下ろす。




くりっとした目で、私を見上げる勇人。



「まんまー。ちゅきー?ちゅき!」




ずきゅーん!!!





馬車が小さなモンスターに襲撃されました。

わたし、重症です。



か、可愛すぎる。何なのこの子!


うーーーーー。



「ママも勇人のこと大好きだよーーー!!」



基本的に、勇人の周りは親バカです。

ふにふに頬っぺたに頬ずり。


「さすが勇人だな。元気出たか?」


隣で苦笑いしながら、私の肩に腕を回して、そのまま私の頭を撫でるリト。



勇人にこの言葉を教えたのはリトだろう。

悔しいけど、単純な私の機嫌は直った。


こくりと頷いて、リトの肩に頭を預けた。





曇りと森の中の薄暗さで、時間の感覚が掴めないまま、森の出口に到着した。


既に日暮れの時刻らしく、風も強まってきたので風除けのためにも森の出口で今夜は夜営することになった。


さすがにこの雨の中でみんなで晩餐は出来ないので、トニーノさんからホットワインとホットブドジュースが配られて、各自で晩御飯になった。


冒険者組である、私たちとタルメアさん達は道の端に止まっている馬車の前後を挟む形で、テントを設置した。ちなみに前に私たち、後ろがタルメアさん達だ。


外套のおかげで、服が濡れることは最小限で済んだけど、強い雨なのでテントを設営し終わった頃にはビショビショになっていた。


毛布などの荷物をテントに運んで、濡れた外套や服を乾かす。こういう時に、リトの温熱(ヒート)は便利な魔法だ。


さらに雨水を溜めた鍋を魔法で温めて、お湯に布を浸して勇人やイナリの身体を拭いていく。ついでに浄化(ピュリフィケーション)も忘れない。


直ぐに乾かして、イナリの毛を少しブラッシングする。


テントは大きくはないので、リトと交代で見張りをしながらそれぞれ身体を拭いた。



他の乗客と今日の見張りである、冒険者の1人で巨体のコトルキンさんに挨拶して、テントの中で一息つく。


さすがにテントの中で火を使うのは怖いので、晩御飯は冷たいパンにジャム、切った干し肉とチーズを混ぜたサラダだ。


温熱(ヒート)は使えるので、牛乳を温めてもらって、パンはホットミルクに浸しながらジャムと一緒に食べる。



「ゆりと一緒だと、飯がうまいし身体が温まるから本当に助かる。」


雨の日こそ体力が奪われるので、身体を温める食事は大切だが、火が使えないので食事は冷たい。トニーノさんの配ってくれたように、ホットワイン等で暖をとるのが基本だそうだ。


成長盛りの勇人がいるから、私としては食事はなるべく手を抜きたくないから、ちゃんとした食事になるんだろう。それに…


「私の料理スキルで疲労回復するなら、なるべく作った方が作る手間よりも大切だからね。」


見張りが出来ないぶん、こういうところで役に立たなければ。



食事が終わって片付けたら、早々にみんなで身体を寄せ合って眠りにつく。



雨の夜はかなり冷え込む。寒さに強くて暖かいイナリには、大きめのくまさん着ぐるみの中で、勇人の抱き枕になってもらった。



最初はそんな2人を挟んで寝ていたんだけど、さ、寒い。


腕の中の勇人達は暖かいけど、全身は暖まらないのでポジションチェンジ。


背中からリトに抱きしめてもらって、勇人達を抱きしめる形で、ようやく眠りについた。

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