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ボアのトマト煮とシャンプー

夜営地は川の側で、進行方向には少し進むと森があり、その手前数十メートルほどの距離に設置された。



各々の男手がテントや薪拾い、水汲みを率先して行い、女性人はゆりの周りで晩御飯作りを開始した。



夜営といっても、明かりのない場所での作業は非常に効率が落ちるので、日が暮れてしまう前に下処理は済ませなければならない。



今日は道中に仕留めたマウンテンボアの肉をメインにする。ビッグボアよりも一回り大きくて強い魔物だ。


肉の解体作業は、タルメアさんとミレーナさんに手早く処理してもらう。



リベアさんには野菜を切る作業を手伝ってもらい、マラナちゃんにはトニーノさんから食材を貰ってきてもらう。



食材は事前にトニーノさんと話して、傷みが出てきているものから使うことにした。


オニン、トマト、数種類のキノコ、キャロを次々と切っていく。


少しだけ水を沸騰させた鍋に、ハーブなどを入れて、ミレーナさんに切った肉を入れていってもらう。



肉が一煮立ちしたところで、アクを取り除いて野菜を投入する。塩と赤ワイン、蜂蜜を投入したらあとは放置だ。



別の鍋で茹でておいたバレショ芋を皮を剥いて潰す。鍋の横でイナリとマラナちゃんに作って貰っていたバターを芋に混ぜて、少し塩を混ぜ合わせる。


残った低脂肪乳には、ゼラン草を煮た液体と蜂蜜を混ぜ合わせて、川の水で冷やす。



あっと言う間に夜になったので、全員で集まって晩御飯だ。



今日はマウンテンボアのトマト煮にマッシュポテト添え、各自必要な人は固パンをさらに添える。デザートは低脂肪乳のゼリーだ。


大人達はトニーノさんの振る舞いでワインを、子供達にはブドの実ジュースが配られた。



焚き火を囲む形で、それぞれ倒木や岩を椅子が代わりに座る。



この宴の主催者であるトニーノさんが中央へ出てくる。




「皆さん、私は商会をしておりますトニーノと申します。まずは今夜、素晴らしい食事を用意してくださった女性人に大きな拍手をお願いします。」


そう言って、一礼と共に拍手がおこる。


「旅の目的は様々ですが、この馬車に乗り合わせたのも何かのご縁です。短い旅路ではありますが、旅の安全と皆様のこれからの旅の幸福を祈って、ささやかながら美味しい食事とお酒で景気づけましょう。我らの旅に祝福を。乾杯!」


トニーノさんの合図で、小さな宴が始まった。



冒険者グループを筆頭に、御者やトニーノさんが会話を盛り上げながらワイワイと食事をする。



「いや〜旅で美味いもん食べれるって最高だね。」


隣に座るタルメアさんが、細い見た目に似合わずにガツガツと食べ進める。


「基本的に干し肉と固パンばかりですからね。温かくて栄養のあるものが食べれるのは有り難いです。」



ミレーナさんも続ける。



長く旅に出るほど、食材の日持ちがしないので質素な食事になる。


今回はトニーノさんが商人として、食材も豊富に運ぶということで、贅沢に料理をさせて貰った。


ハーブは私の自前だけど、量があるので問題はない。



「お肉の臭みが全くないんですね。どうしてなんですか?」



リベアさんに尋ねられたので、薬草術の知識ということにして、臭みを消すハーブやアクを取り除く効果などを知ってる範囲で話す。


あとは解体してくれたタルメアさんやミレーナさんの腕で、血抜きがしっかりされてるからだと説明した。


この世界では家庭料理はシンプルなものが多くて、凝った料理はそれこそレストランや食堂に行くことになるそうだ。


ボア肉も基本は焼くか、加工肉にするかなので、煮込むことに驚きがあったらしい。



手っ取り早くて栄養が取れるから煮込んだんだけど、もしかして珍しかった?


そういえばトニーノさんが、昨日のクリームシチューを見て、私に頼みにきたことも思い出した。



リトを見ると、仕方ないって顔で笑われた。



みんないい人たちだから、喜んでくれてよかったことにしよう。



食後のミルクゼリーも、女性人に大人気だった。やっぱり甘いものはいいよね。甘味は高いものだけど、トニーノさんの太っ腹具合いで多めの蜂蜜を拝借できた結果だ。ありがたい。





片付けが終わると、女性人で固まって天幕を張って水浴びをする。



昨日はさすがに初対面だったので、強い要望も出ずに身体を拭くだけだったが、大分打ち解けたこともあり、水浴びをすることになった。



ちなみにイナリが早々に水浴びをして、見張りをしてくれている。



勇人はリトに預けているので、本当に女性のみだ。



「もし、覗こうとする輩が入れば、私が射るのでご安心を。」


物騒なリアーナさんを窘めながら、川に入る。



川は浅くて水の流れも緩やかだ。

森から流れてきていて、水温は冷たい。


さすがに温泉みたいに浸かることは出来ないが、汚れを流せるのは拭くだけより気持ちいい。


「ママ〜冷たいよー!」


マラナちゃんも楽しそうだ。



岩に腰掛けて、自作のシャンプーで髪を洗っていると、視線を感じる。


顔を上げると、リアーナさんとタルメアさんに見つめられていた。


シャンプーが珍しい…のかな?


「あの…?」






「天は二物を与えず…どころか、三物以上与えるのね。」


「可愛くて、料理上手で、胸も大きくて…ここまで完璧だと悔しいとすら思わないわね。しかもあのイケメンと並んでお似合い夫婦だし。」



「幼くて小柄かと思いきや、着痩せしててあんな武器を持ってるなんて…やっぱり羨ましい。」




冒険者の2人は良くも悪くも動きやすい絶壁だった。





なんかこっち見ながら喋ってるけど聞こえない。



「お姉さんの石鹸いい匂いするー!」


マラナちゃんが近づいてきて、シャンプーを眺めている。


「マラナちゃんも使ってみる?お姉さんが作ったから、肌に合うかわかんないけど。」


「いいの?」とぱぁっと顔を輝かせるマラナちゃん。リベアさんがすぐに謝りに来るが、やはり女性なので気になるようなので、同じくシャンプーを勧めてみる。


もともと、空間収納もあるから多めに作ってきたので、今後の改良のためにも使ってもらうことにした。



その流れで、タルメアさん達にも勧めた。




「凄い。髪の毛がサラサラになった。」


「いつもみたいに髪の毛絡まないよー。」



評判は上々のようだ。

むしろ、女性陣の目が光ってる。な、なんか怖いんですが。



「「この石鹸、買わせてください。」」


「へ?」


ま、まいどあり〜?




特にお金を貰うものでもないって断ったんだけど、リベアさんからは街についたら、自家製野菜を分けて貰うこと、冒険者2人には魔法や体術の指導をして貰うことで、物々交換となった。




ふにゅ。


ほへ?


「お姉さんのお胸、やわらかーい。」


「こら、マラナ!いきなり人様の胸を触る子がいますか!やめなさい。」



リベアさんからすかさず、お叱りが入る。



「お姉さん、触ってもいい?」


「聞いたらいいってもんじゃありません!」



ふにゅ。ふにゃり。



喋りながらも手が動いてるよーマラナちゃん!


「私たちも混ぜていただきますわね。」



へ?


ちょ、リアーナさん達まで何!?


「ひゃ。ちょっと皆さんやめてー!!やん。」






ちなみに川での会話は、男性陣にも筒抜けで、戻った頃には顔が真っ赤な私を、怖い顔したリトがテントに直ぐに連れて引っ込んで、朝まで出ることはありませんでした。


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