親子とはちみつジンジー
「あいー♪」
「ママ〜!赤ちゃん可愛いよ!」
乗り合い馬車は、冒険者の護衛の体制によって席が変わる。
リトと女性冒険者のタルメアさんは、昨日の夜見張り番だったこともあって、午前中は護衛はしないそうだ。前方と後方に残りの冒険者の4名が座り、間の私たちは適当に座る。
リトは乗り込んで早々に、私の肩にもたれて寝ている。私は全然いいんだけど、体制辛くないのかな。
イナリもリトに抱かれて寝ている。
そして冒頭。
私の隣には、お母さんと娘さんの親子が座っている。女の子は勇人に興味津々。勇人もびっくりしながらも、遊び相手が出来たと思ったらしく大喜びだ。人見知りじゃなくてよかった。
「周りに赤ちゃんはいないから珍しいみたいで、ごめんなさいね。」
お母さんはリベアさん、女の子はマラナちゃんと言うらしく、チョコレート色の髪に天然パーマがかかっていて可愛らしい。よく似ている親子だ。
「かわいいー。」
マラナちゃんが勇人の手を握って目をキラキラさせている。
「ママ〜!私も赤ちゃんほしい!」
「赤ちゃんは欲しいからってすぐには出来ないのよ?」
お母さんがたしなめる。
そうだよ。私もまだ出産経験はないからね。
ケホンケホン。
お母さんが咳き込む。
マラナちゃんが途端にお母さんの背中をさする。
「ごめんなさいね。流行り病とかではなくて、持病で咳が出るの。」
なんでも、お母さんは咳持ちだそうで(喘息ってことかな?)、症状が酷くなるたびに大きな病院のあるオリエンテまで馬車で出掛けるそうだ。
夫婦で畑で作物を育てているので、家族全員でソヨンを離れる訳にも行かず、マラナちゃんもお母さんを心配してついて来ているそうだ。
ただ、薬は高価なので量は買えず、今回も1ヶ月の量を1年ぶりに買いに来た状態だそうだ。
薬って続けて飲まないと効果ないだろうから、あんまりその使い方はよろしくないだろう。
「マラナちゃん、お姉さん少しだけ薬草術出来るから、気休めかもしれないけど咳に効く薬草調べてみるね。だから勇人と少し遊んでくれる?」
「本当!?お姉ちゃんありがとう!遊ぶ!」
荷物を漁る振りをして、空間収納から薬草図鑑を取り出す。
新たに採取するのは難しいだろうから、持っている薬草から咳に効くものを探す。
オオバコン。持ってないな。基本的にはこの薬草が咳薬として処方されてるんだ。
うーん、効能から検索できないのが辛い。
そこからは咳に効く様々な薬草の効能や効果的な処方を読み込んだ。
お昼休憩のために馬車が止まる。
夜営をしていた小川は大きくなって川になっている。夜営地の周辺は草原で草ばかりだったけど、この辺りは野花も咲いていて景色も綺麗だ。
「リト、イナリ、お昼休憩だよ。」
熟睡していたリトとイナリを起こす。
イナリはプルプルと身体を振って起き上がる。
リトも、んーと唸りながら目を開ける。
まだ眠たくてぼんやりしているのか、リトが身体を起こしてなぜか私の頭をなでなで。
そのまま頭を引き寄せられて、口が塞がれ…んーーーーー!
「はよ。」
「おはよう…じゃない!人前!」
真っ赤になって抗議しました。
リトに勇人を預けて、リベアさんとマラナちゃんをお昼御飯に誘う。
リベアさんのために、今日のお昼はヨモギーとソシとジンジーランチだ。
トニーノさんにから、おろし器を調達した。国のお抱えシェフなどからしか需要がないので、一般的には出回っていないそうだが、珍しいので仕入れていたらしい。
リトに頼んで購入させてもらいました。
ダイコの根と、ハスの根、オニンをそれぞれおろし器ですりおろす。おろしかたをマラナちゃんに教えて手伝ってもらった。
その間にネギーとジンジーを刻み、ビッグボアの肉を薄くスライスする。
マラナちゃんにおろしてもらったダイコの根、ハスの根、刻みネギー、小麦粉、卵、チーズを混ぜてタネを作る。
ずーっと、イナリに牛乳を入れた水筒を持たせてフリフリしてもらっていたので、出来たバターをフライパンに敷いて、タネを少しずつ入れて焼いていく。
焼き終わったら、ジンジーとオニンに漬け込んでたビッグボアを焼く。作り置きのトマトソースと塩胡椒で味を整えたら完成だ。
名付けて根菜おやきとボアのジンジーオニン焼き。
足りなさそうな人達には温めたパンとバターもつける。
あとは食後に飲むためのはちみつジンジー茶と、道中のためにソシのジュースの原液を作った。
「ママ〜!すっごく美味しいよ!」
「本当ね。お家でも出来そうだし、私もトニーノさんからおろし器を買おうかしら。」
親子にもご好評だ。
食後にはちみつジンジー茶を配る。
匂いにつられた他の乗客達にも配る。
「ピリッとするけど、甘いし身体が温まるし美味しいわ。」
リベアさんには、生姜が咳に効くのでレシピを伝えて飲むように勧めた。
はちみつ生姜湯って冬になると私もよく飲むんだよね。風邪とか他の病気の予防にいいし、身体も温まる。
リベアさんも苦い薬よりもかなり気に入ってくれたらしく、喜んでくれた。
昼から馬車に戻ると、女性冒険者の人達にも夕飯の手伝いの協力をお願いする。
リベアさんとマラナちゃんには既に了承を貰っている。
1人は今朝挨拶をしたタルメアさん。もう1人は水色の長髪に、タルメアさんとは対照的に色白なミレーナさん。エルフって言う種族と人のハーフで、ハーフエルフらしく、耳が少し尖っていてかなり美人だ。
「私はもともと団で料理担当だから力になれると思うけど…。」
タルメアがね、と流し目でタルメアさんを見るミレーナさん。
「私だって本気出せば料理の一つや二つできるさ。」
どう見ても目が泳いでいるタルメアさん。
タルメアさんには簡単な作業を任せることにして、ひとまず協力してもらうことにした。
旅路は長くて短い。
馬車に揺られながら景色を見て、乗客と喋りながら時間を過ごす。
時折現れる魔物を見つけて、襲われたら冒険者達で対応する。
川沿いに馬車は進み、日が暮れる頃に夜営地に到着した。




