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馬車の旅とクリームシチュー

ガタンッゴトンッ。


パカラ。パカラ。




覚悟が足りなかったんだと責められても文句言えません。


想像以上に乗り合い馬車…つらい。



私も現代の女子高生。


通学には舗装された道を自転車で通ってました。

買い物にバスや電車に乗ったりもしてました。



道が舗装されてないってだけで、ガタガタの道の衝撃がダイレクトにお尻にくる。


もちろんクッションなんて洒落たものはないから、もろにお尻にダメージを食らってます。



さらにこの臭いが辛い。

馬やこの荷車が臭うんです。



馬は牧場にいる動物の臭い。

お世辞にもいい臭いとは言い難いので、この異常にゆれる荷台と密閉された空間で酔いそうだ。



唯一の救いが、草原なので風が吹き抜けているので酔わずに済むことだ。


これが蒸し暑いとかなら、確実にやられてるけど、幸いなことに気温はちょうどいいし、風が臭いを緩和してくれる。



「ねー。あーうー。」



勇人がイナリに構ってアピール中だ。


普段ならすぐに応じるイナリだが、人前ではなるべく人語を話さないように約束してるので、喋れない分はぺろぺろと勇人の頬を舐めて答えている。



構ってくれて嬉しかったのか、勇人もきゃっきゃと笑っている。




隣の席から強い視線を感じたので、声をかける。


「あの、うるさくて申し訳ありません。」



勇人は意味不明でも喋れるようになってから、よく喋る。周りからしたらうるさいと思う人もいるはずだ。


「いやいや、そういう意味で見てた訳じゃないんですよ。はじめまして。私は旅商人をしてますトニーノです。私にも娘がいるので、娘の小さい時を思い出して微笑ましく見ていたんです。」


商人のおじさんは、そう言って優しそうな笑みを浮かべる。娘さんが大好きなんだろう。


「私も旅の商人なので、結婚して、子供ができてからも家を空けることが多く、会う度に娘が成長していたので、会える時が本当に大切でかけがえのない時間でした。なので、一緒に旅する皆さんが羨ましいと思いましてね。」


「娘さんが大好きなんですね。あ、私は冒険者をしてます、ゆりです。この子は勇人です。こんな仕事をしていますが、なるべく家族みんなで一緒に居たいと思っています。」


チラリとリトにも視線を送りながら、話を続ける。


「トニーノさんは、ご出身はどちらになるんですか?」


「出身は遥か北方になりますが、妻と子供と住んでいる家は、この馬車の行き先であるソヨンなんです。」


嬉しそうにトニーノさんが語る。


「お帰りになられるところだったんですね。」


その後もいろいろとソヨンの街について教えて貰った。トニーノさんはソヨンの街では一番の商人らしく、様々な街に出かけてはソヨンの街のニーズにあったものを仕入れ、ソヨンの名物である家畜や農作物を売っているそうだ。


一度旅に出ると、数カ月は家を空けることもザラにあるらしく、その代わりに数カ月は家族と過ごす時間を取るようにしているそうだ。



「赤ん坊連れだと宿も困るでしょう。私の家はそこそこ大きいので、皆さんがよろしければ我が家に泊まられてはいかがですか?妻も人をもてなすのが好きなので、客人がいると喜ぶのですが。」


さすが商人さん。誘い方が嫌らしくなくて上手い。


チラリとリトに視線を送る。


「赤ん坊連れではありますが、見ず知らずの冒険者です。本当に泊まらせて頂いてもよろしいんでしょうか?」


リトが念押しで尋ねてくれる。


「ここで出会った時点で、見ず知らずではありませんし、私も長年こういう商売をしているので人を見る目は確かです。それに、赤ん坊連れだと宿探しが難しいことも、昔に妻と経験したので認識があります。」


せっかくの申し入れなので、受けさせていただくことにした。



街に着く前に宿をゲット出来た。

きっと街に着いたらくたくただろうから、宿が決まっているだけでもありがたい。



いろいろと話している間にお昼になった。


昼休憩ということで、草原のど真ん中に乗り合い馬車は止まって、各自でランチタイムだ。



ちなみにトイレはどうするのかと思っていたら、ご想像にお任せするまでもなく、青空トイレ、汚く言うと野糞だった。



うら若き女子高生には大変苦痛だったよ。でも女性にとっては、この世界の人でも青空トイレは苦痛らしく、女性冒険者や親子のお母さんと共感し合ってかなり仲良くなれた。


「これ今朝少しだけ調理場借りて作ったの。」


リトとイナリに包みを渡す。


中身は、バケットにベーコン、レタス、トマトを挟んだBLTサンドと、ゆで卵、ブロッコリー、特製マヨネーズを挟んだタマゴサンドだ。


自作の保冷袋に入れてたので鮮度は抜群。

旅が疲れるものだとしても、美味しいものを食べて元気出さなきゃね。



昼からもひたすら同じように馬車は進む。



かなり揺れる中でも勇人とイナリはたくましくお昼寝をしていたり、魔物が現れてリトと冒険者パーティの方で討伐したりしながら進んでいった。






夜になると方角もわかりにくく、危険度も増すため、暗くなった時点で夜営することになった。



人が行き交う行路らしく、ちょうど小川の側での夜営となった。



乗り合い馬車に登録しに行った時に、テントの有無を尋ねられた。


人によってはテントを持つ余裕もない人や人数の場合があるので、テントの有無でもバランスをとれるように仕組まれているらしい。


今回は私たちと冒険者パーティ、御者の2人がテントありで、他の人たちは馬車の中で眠るそうだ。



夜営は基本的には自由らしいので、適当な場所にテントを設置して、火を起こすための枯葉や木の枝を集める。



冒険者パーティの皆さんはすでにお酒を取り出して宴モードだ。


親子と僧侶も知り合いらしく、共同で火を起こしている。



トニーノさんは御者の2人と懇意にしているらしく、こちらもお酒を提供して宴会が始まろうとしている。


飲酒運転は気をつけてください。



イナリに火をつけてもらって、私も調理を始める。想像以上に疲れたので、小麦粉とバターを鍋で炒めた中に、ざくざくと野菜と鶏肉を切って投入する。小川から汲んだ水に浄化魔法をかけてから、鍋に投入。鶏肉と野菜が煮えたら、牛乳を加えて、塩胡椒とハーブを少々入れて一煮立ち。出来たものは深皿に盛る。


合間に炙ってもらってたバケットを添えて完成だ。クリームシチューとバケットトースト。


シンプルに美味しいよね。



ガツガツと食欲旺盛なリトとイナリが食べて行く。私と勇人はちまちまと食べる。ちなみに勇人には今はスプーンやフォークを使えるように特訓中だ。顔の周りがベトベトだけど。



後片付けをしたら、少しだけ川の水で身体を拭いて、あとは浄化魔法で身体を清める。



やはり慣れないので体力を使っていたらしく、皆でテントに入った頃にはすぐに眠りに落ちてしまった。

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