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ミルフィーユカツと晩餐

ご馳走かつ旅先では食べられない料理を今回は作ります。



まずは前菜から。

様々な葉野菜を適当な大きさにちぎって、トマトと焼いたベーコンを乗せる。さらに細かく刻んでサッと揚げたパン…クルトンを乗せる。


先ほど手作りしたマヨネーズ、レモの実の汁、牛乳、塩、胡椒を混ぜ混ぜしてソースを作る。


サラダにかけたら、さらに硬いチーズを細かく刻んだものを振りかける。残念ながらおろし器は無いので少しチーズが大きい。


浄化(ピュリフィケーション)の魔法をかけてから茹でた温泉卵を乗せれば、一品目のシーザーサラダの完成だ。



旅先だと手の込んだサラダは食材が限られるし、食べにくいから出来ないので、ボリュームもあるシーザーサラダをチョイスした。





次はメインを2種類作ります。


一つは揚げ物。これも旅先では出来ない。


ボアの肉をバラ、ロースなどの部位に関わらずひたすら薄切りにする。



薄切りのスライスで売られている日本の豚のパックが恋しい。とにかくひたすら薄切りにする。



薄切りにした豚肉を重ねて、半分に大量に採取したソシの葉とチーズを乗せて、乗せてない方の肉を折り畳む。


ソシの葉とチーズが包めたら、小麦粉をつけて、溶いた卵をつけて、パン粉をつけて揚げていく。


揚がったら、ソシとチーズのミルフィーユボアカツの完成だ。



そんなに手間をかけるなら普通のカツでよかったのでは?と思われるはずだ。


ただ、この世界に流通している魔物肉は、強い魔物ほど地球の高級肉のように美味しい肉に近づくらしく、この周囲の私でも倒せる魔物の肉は底辺に位置する。


この前ボアカツを作った時も、美味しいんだけど肉としては硬くて、勇人はかなり細かくしないと噛み切れない状態だった。


そこで考えたのがミルフィーユカツ。1枚1枚が薄ければ火も通りやすいし、硬さも軽減される。手間もかかるからご馳走に値するだろう。



「やわらかくてあちゅあちゅでおいちいでしゅ。」


味見にイナリに食べて貰ったら大好評だった。


小さい身体で大食いなイナリに食べ尽くされると困るので、つまみ食いしないように釘を刺してから次の料理作りを開始する。


次は先ほどのビッグボアの残りと、ブルーブルの肉をナイフで刻む。めっためたに刻む。


ハンバーグの時も恒例だったひき肉作りだ。この作業の経験値が上がったのか、魔法のように一振りでミンチが次々と出来上がる。


出来上がったひき肉の固まりに、パン粉と牛乳を少々加えて、小さな団子状に丸める。


鍋に大量のトマトと、にんじんなどの野菜を加え、作った肉団子も加える。塩胡椒とニンニク、いくつかのハーブをいれて煮込めば完成だ。


トマトのミートボールシチューの完成。


かなりこってりなメニューだけど、シンシアさん達の口に合うといいな。


あとはパンを温めたら完了。




イナリに頼んで皆を呼んできてもらって、ゆっくりと夕食を取り始める。


「このサラダのソースはいいね。ボリュームもあって美味しい。」


シンシアさんに時折作り方について聞かれながら、和やかに食べる。


「こんなにボアの肉が柔らかくて美味いのは初めてだ。」


「ミートボールもじゅーちーでおいちいでしゅ。」


みんなにも好評で何よりだ。



「それにしても、あんた達がいなくなると寂しくなるね。2人目当ての客も多かったからな。」


今日はお休みなのでビールを飲みながら食べていた、娘のアメリさんがポロリと零す。


「確かにそうだな。仕事としての戦力もそうだが、朝はゆり目当ての男性客、夜はリト目当ての女性客が定着してきてたからな。明日で最後だと知ったら悲しむだろうね。」


言葉で言いながらあまり悲しそうではないシンシアさん。


そして、持っていたジョッキを置くと、改めて私たちに向き直った。雰囲気を察して私とリトも姿勢を正す。


「あんた達のおかげで私達も改めて食堂の料理や接客を見直すきっかけになったよ。ありがとう。」


そう言って頭を下げるシンシアさん。


「私からも、特にゆりの料理を見て、料理の可能性を感じることが出来てすごく刺激になったよ。」


微笑むアメリさん。



「こちらこそ、途方に暮れていた俺たちを泊めて、よくしてくれてありがとう。本当に助かった。」


リトも感謝の言葉を述べる。


「勇人もいるし、本当に困っていたところを親切にして頂いてありがとうございます。シンシアさん達の優しさはこれからも忘れません!」


「あうー。」


私も勇人を抱きながらお礼を言う。




「まぁしんみりするのも、頭を下げ合うのもこの辺にしようか。私達の素敵な出会いに、再び乾杯だ!」



シンシアさんの号令で再び宴の雰囲気になった。



短いけど、異世界に来て最初の濃い2週間。

この街で、この人たちに会えて、この世界で生きて行こうと決心した。



不安もまだまだいっぱいあるけど。


ひとつひとつの出会いに感謝して。




その日は夜遅くまで、マダム・シンシアの明かりは消えることはなかった。

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