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ミートパイとこれからトレーニング sideリト

腕の中でくーくーと寝息を立てる愛しい3人。




今日は正直、怖かった。


俺やイナリはそれなりのレベルで、経験も積んでるから、よっぽどのことがないとこの辺りの魔物に深手をおわされることはない。



でも、ゆりや勇人は別だ。


特にビッグボアにゆりが吹っ飛ばされたとき、咄嗟にゆりを受け止めて、当たりどころが悪くなくてホッとした。


すぐに視線を向けた先には、俺と同じく怒りに闘志を燃やすイナリがいて、結局文字通りビッグボアを燃やしていた。



大切だから、失う怖さがある。


仲間が入れば心強いし、実際より強い敵に挑めるが、同時に失う危険性も伴う。


ゆりや勇人の成長も必要だが…



「俺ももっと強くなる。」


声に反応してなのか、へにゃりと心地よさそうに笑いながら、ゆりが俺の肩にすり寄ってきた。



…あと忍耐強くなろう。







ぺちぺち。


額を叩かれて目が覚める。


「ぱー!!」



目の前には、可愛い勇人のドアップ。


つぶらな黒眼、ふわふわしたまだ生えきってない髪の毛。女の子と言っても通じる可愛さだ。



それに血が繋がらないとはいえ、ゆりと勇人は似ている。髪や眼の色が同じだからとゆりは言うけれど、可愛らしいところとか、ふんわりした雰囲気とか、本当の親子や兄弟にも負けないくらいお互いを想ってることが伝わってくる真っ直ぐさおか。



勇人の脇に手を入れて、真上に持ち上げる。


きゃいきゃいと喜びの声を上げる勇人。


寝転がりながら、筋トレもかねて高い高いを繰り返す。


勇人の声で目が覚めたのか、白いふわふわした塊が動き出す。


俺の顔の横に来て、頬をペロペロと舐め出すイナリ。寝ぼけてるイナリは、こうやって甘えてくる。賢くてもこういうところはまだ幼さを感じる。


勇人をベットへ降ろすと、ハイハイでイナリに近づく。気づいたイナリは勇人のぷくぷくの頬っぺたを今度は舐める。


朝から微笑ましい光景を眺めていると、部屋の扉をノックする音が聞こえて来た。


時計を見ると…寝すぎた。

いつも食堂へ降りていく時間はとっくに過ぎていた。


急いで扉を開けると、ゆりが朝食を持って上がって来たみたいで、笑顔でおはようと挨拶された。


「悪ぃ。寝坊した。」


「特に誰も困ってないから大丈夫だよ。寝癖ついてる。」


ゆりが俺の跳ねた前髪を撫でる。


そう言われればそうなのだが、ゆりが早起きして働いてるのに申し訳なく感じる。


とりあえずゆりからお盆を受け取って、短い距離だが運ぶ。


勇人とイナリを抱えたゆりがソファに座る。



「今日はちょっと頑張って、ミートパイを作ってみたの!昨日たくさんお肉もゲットしたからね!」


ケーキのような形に切り分けられた、ミートパイと呼ばれる料理を指差して説明してくれる。


パイという、パンよりもバターを多めに使った生地を作って、厨房にある釜で焼いたそうだ。


「火加減が難しくて、少し焼き過ぎちゃったんだけど、味は大丈夫だと思うから食べてみて。」


みんなでゆりの国の食前の挨拶、いただきますをしてから食べ始める。


俺やイナリはかなり食べる方なので、大きめのサイズ、ゆりと勇人は半分の大きさのミートパイをそれぞれ食べる。


前にゆりが作ってくれたハンバーグに近いものが、中に詰まってる。




「サクサクでじゅーしーでおいちいでしゅ。」

イナリが、がつがつとミートパイにかぶり付く。



確かに肉を覆っているパイ生地が、サクサクしっとりしていてバターの香りがして美味しい。少しトマトが混ざっているが、シンプルな味付けでジューシーな肉汁が溢れてきて、パイにつけても美味しい。


「やっぱりちょっとボリューミーかな?」


ゆりが、そう言って上目遣いに見上げて尋ねてくる。



う、可愛い。理性を総動員して思ったままを口にする。


「俺は朝からがっつり食べれるし、美味いと思う。腹も膨れるから、冒険者には好評なんじゃないか?」


そう答えると、なるほどと頷きながら、あとはシンシアさん達の判断に任せることにしたらしい。




ちなみにゆりの料理は、料理人というスキルからか、食べると体力増強や疲労回復といった効果がある。


昨日も森の探索の途中で、ゆり手作りのサンドイッチを食べたところ、少しではあるが疲労回復し、その後の魔物狩りでも攻撃の威力が増した。



それに、ゆりの元の世界は、魔法がない代わりに、科学と発展というものを遂げて、この世界より料理も進歩しているとのこと。


シンシアさん達が毎回驚かされているように、どこぞの美食家がゆりの料理に目をつけたら、可愛らしい容貌もあって必ず囲われるだろう。



イナリが、野生の警戒心を捨て去ったように、腹を上にして寝転がっている。満腹になったらしい。


勇人はお腹いっぱいになったらしいので、残りを貰って食べる。


勇人の残りを食べてる途中、食べ終わったらしいゆりが身体ごと寄りかかってくる。


「お腹いっぱい〜。」


食べ終わると、ゆりを抱き寄せてしばらく休憩…したかったが、もう少し仕事が残っているらしく、すぐにゆりとの時間がおわってしまった。



仕事が終わったら、ゆりと勇人のトレーニングをする予定だ。何とかこの街にいる間に、全員でパワーアップしよう。

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