クールジェルとくまさん
前章で完結設定を誤ってしていました。申し訳ありません。まだまだ続きますので引き続きよろしくお願いします。
ぱちっと目が覚める。
目の前には愛しい人達。
勇人とイナリの頭にキスを落とす。
リトは…うん、唇はハードル高くて無理。
ほっぺたに、そっとちゅっとして起き上がる。
本日は『マダム・シンシア』の定休日。なので私達の仕事もお休みだ。
昨日眠りに着く前に、シンシアさんに厨房や調理機器を借りていいか確認した。
基本的にお休みはゆっくり過ごすか、外に出かけるそうなので厨房は好きにしていいとのこと。
朝から厨房に降りて、鍋やおたま、自分のナイフを取り出す。そして、皮袋に入った薬草達も取り出す。そして、最後に薬草図鑑を置いて準備万端。
そうです。今日は朝から薬草術のスキルを上げるべく、調合したいと思います。
作るのはポーション、ネロリ洗剤、毒消しの3つをおさらいしながら作成。あとは、薬草図鑑を頼りに新規作成。おトキさんには、基本的に薬草術は実験の繰り返しで、道具を作るものなので挑戦あるのみとのこと。
旅に出たら、新しく調合なんてやってる余裕はないだろうから、今日がチャンス!鍋を火にかけたりする必要があるから、部屋では出来なくて困ってたんだよね。
昨日リトと昼ごはんの食材を買いに行った時に、小さな薬瓶のセットとポーチを購入した。
薬瓶は指2本程の大きさで、陶器で出来ている。陶器の瓶にコルクで蓋をする形でセット売りされている。
リュックにも薬瓶を入れるけど、いざという時にすぐに使えるように小さなポーチを買って、ベルトに付けられるようにもする。間違って踏んだり、転んで割らないように気をつけないと。
おトキさんに教わった通りに作成。
ポーションは今回作ったものを合わせると、小さな薬瓶で7瓶分になった。3瓶はイナリに使ったから無くなったから、1回で5瓶ほど出来る。
毒消しは6瓶、ネロリ洗剤は9瓶になった。
あと薬瓶は8瓶ある。
薬草図鑑を眺めて、作りたいもののイメージを膨らませる。
薬草はそのまま使っても効果があるものばかりだ。その薬草の効果を把握して使用できる知識、調合することでさらに効果を高める知識が薬草術と呼ばれている。
ネコタビは特に調合する必要はなさそうだよね。効果を上げる必要性も感じないし、猫系モンスターにしか効かないし。
コガネ花は根っこが黄金色。血圧を下げる効果があるらしく、東の大陸では薬としてよく調合されるそうだ。流石に専門家じゃないから、血圧を下げる薬を作っても使い所がわからない。これもパス。
マリーローズやソシの葉は、どちらかというと料理に使う目的の方が強い。
となると…。
薬草図鑑通りに調合する。
使うのは、クール草、エタール草、ヌルヌル草。
それぞれを分量通り、順番通りに鍋に投入。
混ぜ混ぜすると、ヌルヌル草の分量が多いからジェル状になった。
完成したのは冷却ジェル。例えるならジェルタイプの冷却湿布だ。身体の熱を下げるだけでなく、効果が続く間は熱耐性も上がる。
ちょうど8瓶ほどの量だったので、朝の薬草術タイムは終了。みんなが起き出す時間になってきたので、後片付けをして、朝ごはんを作って部屋に戻った。
今日の朝食はベーコンエッグとトースト、ブドの実だ。食べながら、今日の予定について話し合っていた。
「じゃあ今日の予定をまとめるぞ。午前中は勇人の冒険者服の受け取り、イナリ用の武器や防具、ゆりのブーツの買い出しだ。」
コクコクと頷く。アイシャさんにお願いしてた勇人の服が出来上がってるので取りに行く。どんな服が出来ているか楽しみだ。
イナリはもともとの魔物としての守備力や攻撃力もあるけど、従魔の目印にもなるので、合うものがあれば武器か防具を購入しようということになった。
「午後は依頼と採取、旅のフォーメーションの確認も兼ねて、外に出る。ゆりや勇人のレベルアップにも繋がるし、魔物は積極的に倒す方向で。」
この街では仕事をしていたり、装備を整えたりしてた都合で、一日中空いてる日がなかった。
私の講習もないので、みんなで冒険者としてスキルアップしようということになったのだ。
朝食を食べ終わると、冒険者服に外套を羽織って、早速出かける。
まずは勇人の冒険者服からだ。
お店を訪ねると、ナタリーさんが出てきてすぐにアイシャさんの元まで案内してくれた。今回はリトも一緒にお店の中まで着いてくる。
「待ってたよ。珍しいオーダーだからちょっと張り切り過ぎちゃって…小物もあるからよかったらサービスだと思って貰ってくれ。」
そう言って、出来上がった冒険者服を見せてくれる。
まずはロンパースが2枚。赤ん坊用の股の下にボタンがあって、股から肩までの身体全体を覆うものだ。これは元の世界でも重宝してたからかなり嬉しい!
温度変化に強いカメレオンワーム糸と、肌触りのいいシルキーコットンに防御力と魔法防御の付与効果。付与効果はそれなりのレベルの鍛治師しか持っていないスキルらしく、付けるとかなり値段が上がるらしい。
それを聞いて私が少しビビってると、軽い付与効果ならよく使うので心配いらないとのことだ。それに冒険者用のロンパース作りという貴重な経験が出来たのでおまけだと思ってくれとも。男の子なので青と緑のロンパースだ。
冒険者服のはセパレートの服で、動きやすそうな白と黒のロングTシャツが2枚ずつに、茶色の毛皮のベスト、ベージュのチノパン2本だ。
かっちりした場面でも使えそうで、何よりかっこいいし可愛い。Tシャツの色で雰囲気も変わるのがセンスがある。
勇人用の冒険者服としては満足…と思ったら、別でもう1着出てきた。あれ?2着でお願いしてなかったっけ?
「赤ん坊用だからついつい創作意欲が湧いちゃってさ。可愛いけど防御力も高いものを目指したら、これも出来て捨てるのが惜しいし、他に売れる客もいないから貰ってほしい。」
そう言って出てきたのは、着ぐるみ!?
凶暴で毛皮の防御力が高く、お腹に三日月マークがある、ムーンベアという熊の魔物がいるらしい。
この素材を使えないか検討していたところ、この着ぐるみにたどり着いたようだ。ちなみに毛皮のベストもこの魔物の毛皮で作られてるそうだ。
最初は外套を目指してたみたいだけど、守る部位など検討しながら作ってたら、この着ぐるみバージョンになったとのこと。
全体的には茶色く全身を覆うもこもこの服に、フードが付いている。フードには丸い耳が付いているので、かぶるとくまさん勇人の完成だ。
お腹にはムーンベアの象徴の三日月型のポケットまである。もちろん保温性も抜群で、雨にぬれても弾く素材らしい。
か、可愛い。
くまさん勇人可愛い。
むしろお金を払おうと思う程の出来栄えに、アイシャさんにお礼を言いながら伝えたが、趣味からきたプレゼントとして受け取って欲しいとのこと。
グッジョブですアイシャさん。
本当にありがとう。
勇人も気に入ったのかキャッキャしてる。
そして、なんとついでとのことで、イナリを見たアイシャさんは、勇人とお揃いのベストをイナリ用にも作ってくれた。
もともとイナリ用の防具を探してたので、これはかなり有難い!
このベストは購入させて貰って、お礼を言って店を後にした。




