覚悟と恋人
「拒否するって…。」
呟くリトの言葉に、返せない。
だって。
だってだってだって。
うー。
だめだ、我慢していたものが溢れ出す。
ポロポロと涙が溢れる。
視界がにじむ。
ゴシゴシ。
目をこすってると、リトに手を掴まれる、
「目が傷つくだろ。何かあるなら言ってくれ。」
うー!!!
「何が言ってくれよ。リトのばーかー!」
リトの胸に引き寄せられて、抱きしめられる。
視界で涙がリトの服に染み込んで行くのが見える。
「私、落ち着いた場所に定住したいって言ってないもん。」
先を促すように、リトが私の背中をポンポン叩く。
む、また子供扱いしてる。
実際思ってることも子供だから、否定できないけど。
「私をエストランドに連れてく気がないのも気にくわない。」
リトの胸に顔をぐりぐりする。
「エストランドから先はお別れだ、それまでは力貸して欲しいけど、そっから先は役に立たないから着いてくるなって感じもやだ。」
「そういう訳じゃねぇよ。俺はお前達を危険な目に遭わせたくない。エストランドは想像以上に危険だ。だから…」
「それはリトも一緒じゃない。」
「俺はエストランドの為に旅に出たんだ。命を捨てる覚悟は出来てる。でも、ゆり達を失いたくないし、幸せになって欲しい。そこを譲る気はない。だから、安全な場所に住めるなら住んで幸せに暮らして欲しい。」
「リトの気持ちはわかる。…今から言うことがリトにとって迷惑以外の何物でもないこともわかってる。私の我儘なの。」
それでも。
声が震える。
怖い。
「巻き込んでよ。もっと頼ってよ。」
私はあなたに救われたの。私もあなたの力になりたい。
「置いていかないでよ。死ぬ覚悟で私の知らないところに行かないで。」
捨てないで。居なくならないで。
「安全な場所だから幸せになれるの?そこにリトはいないの?」
危険でもいい。辛くてもいい。リトと一緒にいたいんだよ。
「私もリトと一緒にエストランドを救いたい。リトの力になりたい。…ずっとリトと一緒にいたいよ。」
もし死んでしまっても。
何もしないことの方が私は必ず後悔する。
ああ。想像以上に私は不安定だったんだ。
急に異世界にやってきて、誰も頼れなくて、勇人も守らなきゃで、いきなり魔物にも襲われるわで。
それを救ってくれたリトに依存してるのかもしれない。きっとしてる。
でも、リトがリトだから一緒にいたいと思う。
元の世界に戻れるかなんてわからない。死んだら終わりで、この世界は元の世界よりも死が身近にある。
いつ死ぬかはわからない。
でも、どう生きたいかは選べる。
私は、リトを利用して安全に静かな場所を探して永住したいんじゃない。
リトを利用して、元の世界に帰れる方法を何よりも優先したい訳じゃない。
この世界にいられる限り、リトの力になりたいと思ったのが私がこの世界で頑張る原動力なんだ。
勇人のことを1番に考えるなら、安全が1番だけど、この想いは変わらない。
「まだ出会ったばかりなのに、リトのこと好きなの。いい迷惑かもしれないけど、もっと強くなるし、力になるから。最期までお供させてください。」
ぐすぐすと私の声が響く。
うー。引かれたかな。
鬱陶しいって思われたかな。
嫌われたかな。
そうだったら本気で立ち直れないかも。
心が冷たくなる。
記憶がフラッシュバックする。
だめ。
リトはお父さんとは違う。
邪魔になったかな。
どっか行っちゃわないかな。
置いてかれないかな。
リトはお母さんじゃない。
嫌われるのが怖いの。
要らないって言われるのが怖いの。
「自惚れてもいいのか?お前が俺のこと好きだって。」
こくんと頷く。
さっき言ったじゃないか。
「望んでもいいのか?いつかエストランドを救って、ゆりや勇人やイナリ、そして王子達とエストランドで過ごす未来を。」
こくんこくんと頷く。
むしろそれは私の望みだもん。
「俺も好きだし、ゆりとずっと一緒にいたい。」
仕切り直しだと言って、身体を離して向き合う私たち。
「俺と一緒にエストランドを救って欲しい。そしたら、俺と結婚してくれ。」
ぷ、プロポーズ!?
なんかぶっ飛んでない!?
いろいろ飛び越えすぎでは?
でも、私もよく考えれば似たようなことを言ってるし…お互い様かな。
「…はい。」
そう答えると、とろけそうな笑顔のリトの顔が近づく。そっと唇が重なった。
と言うわけで、晴れて恋人兼婚約者になりました。
うん、自分でも猛スピードなフォーリンラブでびっくりです。何よりこの外見も内面もイケメンなリトと両想いなのが信じられない。
真っ先に結婚してもいいけど、けじめをつけたいみたいなので待ってくれと言われた。
ほんまにイケメンどすなリトさん。
あとはいろいろ遠慮しないとも言われたけど、勇人が泣き出したので中断。
イナリも起きたので、みんなで昼ごはんを食べることにして、その後でリトの目的と今後のことを決めることにした。




