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君の目的と事情

そんな感じでまったりとたくさんお話しよう!と意気込んでたら、勇人が泣き出した。


「うあーーーー!まぁーーーー!」


はいはい。


オムツが汚れたって泣き方ですね。

手際よく、オムツを替える。



布おむつなので、要らないものはトイレに流したあと、汚れた部分は手洗いする。


昨日作ったネロリ洗剤を試しに使ってみる。

今まではシンシアさんから分けて貰った石鹸を使ってたんだけど、やはり専用のものは違う。


汚れも落としやすいし、何より香りがいい。

時間があるうちに量産、追加で採取もしに行こう。


オムツを干して、部屋に戻ると勇人とイナリがベットの上を駆け回って遊んでる。


イナリが賢いから大きく見えるけど、実際はそんなに歳は変わらない。


お互い遊びたい盛りで、相手がいて楽しいんだね。いいことだ。


ソファから2人を眺めるリトの隣に腰かける。


「2人とも楽しそうだね。」


「朝からあんな感じだからな。」




遊んでる2人を邪魔するのは気がひけるので、昨日から話したかったことを話し始める。


「ずっと聞きたかったんだけど、私達と一緒に旅することになってリトはいいの?昨日もイナリを仲間にするって話も私が勝手に決めちゃったし、リトも何か目的があって旅してるんなら、邪魔になってないかと思って…。」


リトによくないって言われたら、比喩抜きで生きてけないかも。冒険者としては魔物に食べられて終わりそうだし、街でも目立ってるみたいだから、最初に言われたように実験体になりそうだ。



「俺もそこのところ話そうと思ってたんだ。俺の旅の目的と、これからのことも具体的に話したい。」


そう言って、リトはかばんの中から何かの紙を取り出す。いかにも年季が入っていそうな、古びた茶色い一枚の紙だ。


「まず、先に謝っとくというか、言いそびれたんだが…」


そう言ってバツの悪そうな顔をするリト。


え、なに…。


「おトキさんに鑑定してもらった俺のステータスなんだが、鑑定偽装のピアスしてたから、隠してたり間違ってたりするんだ。俺は2人の純粋なステータス見たのに、騙したみたいになって悪かった。」


そう言ってリトが頭を下げる。


え、そんなこと。


「このお揃いのピアスくれた時に、俺のしてたのとお揃いって言ってたでしょ?その時になんとなく気づいてたよ?」


そう言うと、意外そうな顔をされる。

む、そんなに抜けてるように見えるのかな私。


「あとは、イナリのステータス見た時に確信した。」


「は?なんでイナリ?」


不思議そうな顔をしている。

ふむ、そんなにおかしいかな?


「2人の直接対決とかは見たことはないけど、素人の私でも、イナリよりリトの方が強いことくらいわかるよ。…勘もあったけど。」


「納得出来るような出来ないような理由だな。」


理由を言うと苦笑される。

だって、自然とそう思ったんだもんね。


「俺もしばらくは純粋に鑑定してもらったことはないからな、おトキさんは信用してもいいだろうから、旅に出る前に鑑定してみんなに見せるよ。」


そんなに凄いこと隠してるのかな?

見せてもらえるなら楽しみにしとこう。



「あとは、俺が冒険者になって旅をしている理由がこれだ。」


そう言って、茶色い紙を広げる。


そこに描かれているのは小さな地図と、その周りにある書き込み、そして目的のものが箇条書きで記されていた。


地図はかなり大雑把に描かれてるから、書き込みも疑問符だらけだ。おそらくリトが書いたものだろう。


特に地図に何かが記されてる訳じゃなくて、その場所の特性から探したいものの目星をつけている感じだ。


「リトはここに書かれているものを探してるの?」


「ああ。正確には、手に入れるか協力してもらうかして、戦力にしたい。」


リトの顔が少し曇る。


「実際は必要ないのかもしれないし、そこに書かれているものも存在しないかもしれないし、とっくに手遅れなのかもしれない。」


そう言って地図でいう西側を指す。


「俺が生まれたエストランドという国は、西側の国では最大の国で、世界で最も発展した超大国として知られている。



…俺はその国で孤児として育った。」


世界は違うけど、そこは私達の共通点だな。


「俺が孤児になったのも幼かったから、俺は家族の記憶も何もない。ただ、見た目でわかることが一つだけあった。俺は西の大英雄の血を引き継いでる。」


「西の大英雄?」



「…世間じゃお伽話として語られてる、伝説に出てくる英雄のことだ。その昔、魔王の力が強まって、世界が混沌の闇に包まれた時代があった。そんな時に、世界に勇者が誕生した。」


思わず勇人を見る。

疲れたのか、イナリと一緒に眠ってる。

さっきまで遊んでたのに…よく遊んでよく寝て、健康的だ。


「勇人と勇者の関係性はわからないが、その勇者が魔王を倒して、世界に平和が訪れたと語られてる。勇者と共に魔王を倒した仲間の1人に、竜の騎士がいる。それが俺の先祖だ。」


「竜の騎士って…リトって竜だったの!?」


なぜか肩を落とすリト。


「俺が竜の子孫だったら、それはそれで凄いかもしれないが…俺は正真正銘、まぎれもなく人間だ。竜の騎士は、竜の背に乗り、雷の如く魔物を蹴散らした騎士のことだ。」


うーん。


「馬の代わりに竜に乗ってたから騎士ってこと?」


「それもあるが、当時は姫を守る騎士だったから、竜の騎士と呼ばれたらしい。」


なるほど、お姫様を守るために、竜に乗って戦ってた騎士ってことね。


それはそれで凄いな。


「他にも仲間はいるんだが、特に勇者と騎士がクローズアップされて、今は語り継がれてる。大昔の話だからお伽話とされてるが、竜の騎士は実在する人物として認知されてる。」


「それがリトなの?」


「俺自身はそんな先祖の話どころか、親の顔すら知らないけどな。けど、この紺色の髪と、紺碧の眼が一族の特徴と言われてる。」



確かに綺麗な紺色だもんね。


「紺色って珍しいの?」



「眼や髪の色が、潜在的な魔力や魔法を表してるっていうのは話したよな?」


確か、初めて会った時に言われた。私と勇人もそれも理由で珍しいんだよね。


「紺色も、同じ理由で希少なんだ。髪色と眼の色の組み合わせで、竜の騎士の血筋って言われてる。」



「それと、この地図?と何が関係するの?」


「…この地図は俺の親友に託されたんだ。ここに書かれているものや人物達を集めて、エストランドを滅ぼして欲しいってな。」


え…。


「滅ぼすの?」


「ああ。エストランドは表向きは先進的な超大国だが、裏では魔王の息がかかり、犯罪組織の拠点にもなっている、悪の巣窟だ。俺も孤児の時は酷い目にあった。」


そう話すリトの手が震えてるので、そっと握る。


「そんな俺を助けてくれたのが、エストランドの王子だ。国王は魔王に支配されて、大臣達も毒されてるが、王子は神の加護を受けてるからまともだった。それでも、国を変えるほどの力はなくて、今も陰から国を必死に守ろうとしてる。」


「その王子が、リトの親友なのね。」


「王子も俺も同い年で、俺も一時期は王子の元で一緒に国の為に戦ってた。けど、相手が魔王じゃ太刀打ち出来ない。打てる策は打とうってことで、俺に命令が下った。」


それがこれだ、とリトが示す。


「おそらく純粋な竜の騎士の血を引いた俺なら、伝説上のものや人物達でも説得できる可能性があるって結論になった。…それも建前だろうけどな。」


「建前?」


「俺が国を出る時点で、エストランドにまともな奴らはほとんど残ってなかった。何かと理由を付けて、王子は自分の下の連中を国外へ出て行くように仕向けてたんだ。自分は残る気なのにな。」


そう言って寂しそうな顔をする。


「俺も最初は必死に抵抗した。俺だけ助かっても意味ないしな。ある時に本気で喧嘩になっちまって、勢いで出てくことになったんだ。今思えばあいつの思い通りなんだろうけど。」


リトが私の手をぎゅっと握る。


「その時に吐いて出てきた言葉が、俺が伝説の通り、英雄を再現してやるってさ。無い物はなくてもいい。あの国を、あいつを救える戦力を揃えることが俺の旅の目的だ。」


結構な話だろ、とリトが笑う。


確かに凄い話だ。壮大だし、まだどこか別世界の物語のように感じる。


「エストランドに乗り込む時まで、ゆり達を引きづり回すつもりはない。この世界で落ち着ける場所が出来たら、そこに住めばいい。」


そう言って私を見る。


「それまでは、俺に力を貸してくれ。2人…イナリ入れたら3人か。3人は俺が全力で守るから。」



見る人が見れば、イケメンに守るって言われて、きゃーな話だろう。


でも…。



「私は不服。いやだ。拒否する。」




リトの顔が悲しそうに歪む…どころか、呆気にとられてる。


わからん奴には容赦しない!

覚悟しなさい!

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