夜泣きとピザトースト
「ふぎゃーーーー!!!」
ただいま真夜中の2時頃。
予想通りに勇人の夜泣きが始まった。
元々旅で音や気配に敏感なのか、すぐに飛び起きるリト。
こっちに来る前、2ヶ月前から続くこのイベントにもう慣れているので、のっそり起き上がる私。
「勇人どうした?腹減ったのか?」
リトがあわあわと勇人を抱っこしてあやしている。最近は夜泣き減ってきてたんだけど、急に変わった環境に馴染めてないからかな。
まだ覚醒しきれない頭でボーっと考えながら2人を見つめる。
「…夜泣きだから、しばらく相手してあげればそのうち泣き止むよ。勇人疲れてるでしょ?私が相手するよ。」
とりあえず勇人をこっちにと手を差し出す。
「そういうもんなのか。」
「ふぎゃーーーー!」
…
なぜか渡してくれないリトさん。
両手を差し出した状態でフリーズって、地味にしんどいんですが。
「そのうち泣き止むなら俺が相手しとく。ゆりは寝てろ。明日も朝早いし、終わったらすぐに冒険者ギルドの講習だろ?寝とけ。」
そんな男前な育メン発言をする。
確かにまだこっちに慣れてないからか、やたらと眠いけど。
「リトも疲れてるでしょ?いいの?」
やっぱりありがたいより、申し訳ないが上回る。
物心ついた時には施設にいたし、自分のことは自分でやろう、下の子の面倒を見ようが施設の方針だった。
ちょうど私が施設にいた時は、私より上の子が居なくて、甘える相手もいなかった。
施設長の佐藤さんもときどき相手はしてくれたけど、いい意味でも悪い意味でも、差別なく子供達に接していて、手のかかる幼児達の世話をする割合が高くなるのは仕方のないことだった。
そんな環境だったから、少しでも佐藤さんによく見られたくて、お姉ちゃんぶって下の子の世話をしてたから、現役女子高生にして育児に手慣れた私が出来上がった。
基本は女性の佐藤さんと、たまに来るお手伝いのおばさん達しか関わりがなかったから、子供の頃に身につけているはずの甘え方がとことんわからない。
しかも歳は近くても男の人なら尚更だ。
「そんなやわじゃねぇから大丈夫だ。夜は構ってやれなかったし、男同士もっと仲良くなりたいしな。」
そう言ってにかっと笑って、さりげない気遣いの出来るリトは大人だ。
環境によるのか、元の世界の高校の先輩達よりもさらに大人に思える。
こういう時もうまく言い返すことは出来ないけど。
「ありがとう。次は私が勇人とラブラブしたいからかわるからね!」
そうお礼を言ってから、本能のままにすぐに深い眠りについた。
翌朝、目が覚めると手を繋いで眠ってるリトと勇人。朝からイケメンとプリティで素敵な光景だ。目の保養になる。
2人の為にがんばろうと、支度をしてから食堂へと降りていく。すでにシンシアさん達は起きて準備を始めていた。
「おはようございます!」
「おはよう、ゆり。朝早くから悪いね。昨日と同じく洗濯から頼むよ。」
「はーい。」
返事をして、作業に取り掛かる。
朝は早いけど、元々朝型なので苦痛はない。
朝からいい運動になってるくらいだ。
洗濯や掃除が終わると、モーニング用の仕込みが終わったシンシアさん達からリクエストを受ける。
私やリトは遠く離れた街の出身ということにしてるので、この街とは違う料理があれば教えて欲しいという。
シンシアさん達が作る料理も種類は豊富だ。材料が豊富だからこそ、毎日違う食材を使った料理が出るのでリピーターも多い。
ただ、調理法が焼くが煮るだけだったりして、調理の幅が少ない。日本じゃないから醤油や味噌とかがないのはわかるんだけど、揚げ物や蒸し料理とか、焼くのもいろいろ工夫したらもっと広がると思ってる。
私でよければ役に立ちたい。
ひとまず私が仕事をするのが朝なので、シンシアさん達と食べる朝ごはんを私が担当することにした。余分にリトと勇人の分も作ろう。
和食の朝ごはんは食材を見る限り難しいので除外。簡単で量産できるような朝ごはんが食堂では嬉しいよね。
朝ごはんは基本は焼いたパンとスープとメイン。スープは前日に仕込んだもの。メインは腸詰めやハム、ベーコン、オムレツや目玉焼きなどをローテーションしているらしい。
使えるものを確認。今日はハムがメインの予定だったみたいで、野菜はオニン、パプカ、ブロリー、卵とチーズがある。パンは食パンみたいな大きめのパンが大量にある。いつも朝にパン屋さんから仕入れてるらしく、焼きたてホワホワだ。
スープはコーンスープが用意されていて、昨日のディナーのメインで使っていたトマトソースが余っている。
あんまり変わったことは出来ないけど、賄い分だけでいいので作り始める。
お湯を沸かして、卵を茹でる。別の鍋でブロリーも茹でる。茹でてる間にパンにトマトソースを塗って、次にスライスしたオニン、パプカを載せて、チーズをトッピング。トースターはないので、オーブンを少し借りて焼き目をつける。
茹であがった卵は殻を剥いてみじん切りに、ブロリーも適当な大きさに切る。本当はマヨネーズがあれば嬉しかったんだけど、塩胡椒と少しのビネガーを加えて、卵とブロリーを混ぜる。
卵とブロリーのサラダと、ピザトーストの完成だ。
ゆで卵はポピュラーではないのと、パンはおかずと一緒にというのが基本スタイルなので、パンそのものを調理するのが新鮮だったようだ。
シンシアさん達にも好評だったようで、美味しいと言って完食してくれた。特にピザトーストはボリュームもあるので、早速メニュー化が決まりそうだ。
ゆで卵も、応用が効くのでアレンジしてみるらしい。役に立てて何よりです。
一通り朝の仕事が終わる頃に、リトと勇人も朝ごはんを食べに降りてきた。2人も美味しく食べてくれて、シンシアさん達に何やらリトはからかわれていた。
私はすぐに講習に向かわなければならなかったので、声をかけて街へと向かった。
初めての講習なのでワクワクだ。
がんばろう!




