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勘違いと決意 side リト

ふにゃふにゃと微笑みながら幸せそうに眠るゆり。同じくゆりに抱きしめられながらすやすや眠る勇人。


予想外に同じベットに眠ることになって、全く眠くない俺。


2人が寝てるのをいいことに、そっと2人まとめて腕の中に収めて、観察しながら回想にふける。



------------


オリエンテの街に着くと、やはり元の世界とは違うのかゆりも勇人もキョロキョロしていた。


そして圧倒的に視線を集めていた。



赤ん坊連れの旅人が珍しいのもえるが、まずは親子揃っての綺麗な黒髪。そして整った容姿に目がいく。


本人は元の世界の服や靴が珍しいからだと言っているが、実際はこの世界も様々な鍛冶師がデザインを競ったりしてるから、服装や靴のデザインの違いくらいではこんなに人目を惹かない。


明らかにあやしい視線も混ざってるので、慌てて勇人にパパと教え込む。


純粋にパパの座を奪いたい気持ちもあるが、街の住人や冒険者への牽制だ。子連れは結婚してるのが常識だから、仲睦まじい様子で好意の視線を集めるのも狙いだ。


「パ〜パ〜!」


本気で嬉しくて泣きそうになったのは内緒だ。


それからも冒険者ギルドでも老若男女問わず視線を集める中、おトキさんという鑑定師に鑑定してもらう。



正直ゆりのステータスだけでも大混乱だ。


出生不明って誤魔化しにくいステータスだよな。しかも光と闇の両属性持ちってどういうことだ。無属性まで持ってるし。走るのが得意って言ってたのは速さに繋がってるんだろうな。レベルの低さを補うかのように、スキルの数も多い。料理人てスキルはあれば食堂に限らず、冒険者内でも引っ張りだこだろうな。魅了もよほど容姿が優れてないと発現しないスキルだ。


何よりも気になるのが、勇者の育て親。後に勇人が勇者とわかって納得がいったけど、スキルの説明を見る限りでは勇人が成長すればゆりも成長する。つまり勇人を育てるだけでもゆりの能力が上がるという謎なスキルだ。どういう仕組みなのかは実際に経過を見るしかなさそうだ。



勇人のステータスも、もう隠す方向性しかないだろう。


竜の谷生まれ。ドラゴンの故郷とも呼ばれ、周囲を世界最大級の山に囲まれ、その山には強力な魔物が多く住み着いているという。傾斜も急な上に気温の変化も激しく、山を越えることも相当の強者でない限り命を落としかねない過酷な環境。


人類未踏の地、幻の谷とまで呼ばれている伝説の土地だ。


赤ん坊なので谷の情報は持ってないが、貴重な人材としてバレたらすぐに囲われる。


しかも、レベル1にして魔力:S。まだ魔法を使ったことすらないだろうから、潜在的な魔力だけでこれだと正直身震いするくらいだ。さらにその魔力の使い道もある証明として、全魔法属性適応あり。しかもなかなかの相性の良さで、ゆりとまとめて王宮魔法使いに捕獲されかねない。


勇者スキル。前例すら過去になり過ぎて残っていないだろうレアスキル。バレたら国家に囲われるだろう。しかも赤ん坊で今は無力だが伸び代しかないので、本当にバレると危険極まりない。


守護者というスキルも聞いたことがない。現状はゆりを守ることが出来るスキルなんだろうが、効果は謎だ。なんせ勇者スキルが波乱に満ちた運命なんて書いてるのだから、巻き込まれるゆりがどこまで幸運でいられるのか謎だ。


2人のステータスはなんとしてもバラしてはいけないと決意して宿を探す。



実際は夜泣きを理由に断られ、泣きそうなゆりを連れてかなり苦労した。最終的にシンシアさんの好意で労働力を対価に住居と食事を提供してもらえたので、俺としてはかなりの収穫になった。


当然俺が言い出したことなので、俺だけ働くつもりだったが、何故かゆりも働くことになった。本人がやる気だからいいけど、あまり目立たせたくないんだよな。この世界にもまだ慣れてないので体調や精神面でも心配している。あとでこっそりシンシアさんに裏方中心にしてもらうようにお願いしよう。あと世間知らずだからいろいろと教えてくれとも言っておこう。


あまりに過保護すぎてもシンシアさんに苦笑いされそうだけど。


俺のステータスを見て、凄いと興奮気味なゆり。実は俺もあまり人に見せられたステータスじゃないので、偽装したものをおトキさんが鑑定した結果が紙に書いてある。


それでもおトキさんの鑑定が鋭いのか、偽装した情報の中から、かなりの精度で視られて紙に書かれた。特に統べる者は隠したかったスキルの一つだ。ゆりはかっこいいねーくらいにしか思ってないが、世間はそう捉えないので伏せるようにもお願いした。



それからはゆり達のステータスの希少性を説いて、ステータス隠蔽の魔道具を買うことに決めた。



お金の話をしてると、申し訳なさそうにするゆり。見た目はどこかの国お姫様のようだが、傲慢さはカケラもなくてむしろ謙虚すぎるくらいだ。


お金の心配はするなというと少しずつお礼をするという。


「まぁ気長に待つよ。ゆり達が離れていかない限りはずっと一緒だし。」


だから無理はするなよ?という意味を込めて言ったのだが。


「離れないよ!リトのこと大好きだもん。」


完全に構えられなかった。無自覚ってこえぇ。

ゆりに他意がないことはわかってるが、身体は勝手に動く。


驚くゆりを腕の中に収めて、自分を落ち着けるためにも息を吐き出す。


腹のあたりでもぞもぞしてるのは勇人だろう。ゆりは最初は固まってたが、だんだんと身体の力が抜けてきて俺の胸にコテンと頭を預けてる。


おい、もうちょっと警戒しろ。無防備すぎる。


吐き出したい息をこらえて、気になっていたことを尋ねる。



ステータスを見て気づいたこと。出生から勇人はこちらの世界の人間で、ゆりは別の世界の人間だとわかった。勇人がゆりの子供だとしたら、出生が竜の谷というのはおかしな話だ。


それに、ゆりのスキルである勇者の育て親。生みの親でもあるなら、わざわざ育て親と表記されるのだろうか?スキル名なので深い意味はないかもしへないが、俺の中で嬉しい希望を持つきっかけにはなる。


ゆりに勇人が息子なのか尋ねた。


違っていてほしいという自己中心的な想いに支配される。懇願するようにゆりを見つめると、なんだか罰が悪そうに語り出した。



ゆりと勇人は血の繋がらない兄弟。ゆりが母親代わりとして勇人を育てた。



そう理解すると、堪えきれずにさらにきつくゆりを抱き締める。


腕の中で慌てるゆり。心臓が飛び出そうとか、嬉しい言葉が出てくる。



「俺も。」


嬉しくて、希望がみえて、心臓が飛び出そうだ。


聞こえなかったらしいゆりに適当に誤魔化して、またふにゃふにゃと力を抜くゆりの柔らかい身体を抱き締める。


細くてすぐに折れそうだけど、いい匂いがする柔らかい身体。小柄だが、出るところはしっかり出てる。


抱き締める感触を楽しんでいると、罰なのか強烈な頭突きをお見舞いされた。


一悶着あったあと、今後の方針を決めた。俺も余裕があればとは考えていたが、ゆりの方から講習を受けたいとお願いされるとは思わなかった。冒険者は危険と隣り合わせだし、俺も教えられることは限られている。プロに教えて貰えるならこの機会を逃すのは惜しい。


冒険者ギルドといっても規模はまちまちで、このオリエンテの街くらいに大きくないと豊富な講習は受けられない。教えられる冒険者やギルド職員がいないからだ。


その点で言うとオリエンテの街に最初に辿り着けて幸運だったと思う。オリエンテは周囲の魔物が弱いから、ある程度のレベルに達した冒険者は拠点にはしない。その代わり、東西南北何処へでも抜けられる道へ続いているため、レベルの浅い冒険者からは『始まりの街』として親しまれている。


その土地柄からどの方面とも交易が盛んで、かつ魔物の弱さから安全面でも優れているので商人や鍛冶師の拠点として、装備やアイテムの種類が豊富だ。食べ物も美味しくて温暖な気候なので、引退した冒険者も、故郷に帰るように多く定住している。


本当はゆりや勇人の定住地をここで探してもよかったんだが、魔物のレベルと同様にこの街の冒険者や兵力のレベルも低い。もし国単位でこの街に押しかけられたらゆりや勇人は即捕まるだろう。それくらいに2人の黒髪黒眼が目立つことを実感した。


それからは必要なものを買いに街へ。


順調に買い物を進めて、服屋でゆりと分かれる。流石に女性ばかりの場所には居づらい。



お目当の道具屋に到着した。冒険者の扱う道具や小物もここで売っている。


ゆり用に小さめの女性用リュックを購入する。荷物も3人分になるのと、もともとボロボロだったので俺のリュックも新調した。


次はテントをみせてもらう。テントと言っても、機能性が良すぎるとかなり高い買い物になるので、三角形の頂点にロープを通してロープを木や岩場に括り付けて使うタイプにした。機能も最低限の雨風が凌げる程度にした。


あとは魔石。俺の片耳にはステータス偽装が出来る魔石のピアスがある。それと同じ魔石と位置探索用の魔石を購入する。どちらも1個5000リンと安くはないが、必要経費として購入する。どちらも買い求める客は多いので、大抵の店には常備されている。


魔石そのままだと使い勝手が悪いので、近くの宝飾店へ行く。確かゆりもピアスの穴は空いてたからと、自分のピアスと同じものを女性の型で頼んだ。勇人は赤ん坊だから口に入れられないでサイズの調整が効く腕輪にした。


どちらも既製品の台に石を加工して取り付けるので、その場で待たせてもらい、出来たものをすぐに受け取った。



食堂に帰り、楽しそうに食べ物の名前を聞くゆりと食事をしたら、すぐに寝ることになった。


さすがに同じベットは断固拒否したかったが、俺がソファで寝るなら床で寝る等言い出して、根負けしてベットで寝ることにした。


その前にと、買ってあった魔石のアクセサリーを渡す。せっかくなのでとゆりの耳にピアスをつける。人の耳にピアスを着けるのは思いの外難しくて時間がかかったが、なんとか着けることが出来た。


ピアスを着けたゆりを見ると、綺麗な黒髪に左右色違いのピアスがとても映えていて綺麗だ。


素直に似合ってると微笑むと、なぜか顔をそらされて、それからはひたすらお礼を言われた。




そうして現在の状況に至る。



どさくさに紛れて抱き締めているから、ゆりの顔が近い。眠っていると本当に幼く見える。


ゆりのおでこにそっとキスを落とす。いろいろ耐えてるのでこれくらいは許してほしい。



「パー。ゆぅー。」


勇人の目がぱっちり開いている。どうやら見られたみたいだ。



「ママには内緒だぞ。」


そういって、勇人のすべすべなおでこにもキスを落とす。


きゃっきゃと勇人が喜ぶ。


可愛いらしい反応に頬がゆるむ。

こうやって赤ん坊と触れ合うのは初めての経験だ。


無条件に、赤ん坊だからってだけではなく、パパとして慕ってくれる他でもない勇人自身を全力で守ろうと決意した。


もちろん、ゆりも含めてな。


「ぱーぱ、まーま。」


ゆりの頭を撫でていると、勇人が俺とゆりを呼ぶ。


その呼び名が早く本物になるように。


頑張ろうと決意して、また深い眠りに落ちた勇人を見ながら俺も眠りについた。

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