かまどを作ろう④〜ついに完成〜
小屋へとやってきた美少女、何やら修羅場の予感!?
そしてついにかまどが完成!
、、と思ったらまた新たな問題が、、
農業高校の優等生と美少女の訳あり農業ライフ、ぜひご覧下さい!
そんなこんなで、小屋へと戻ってきた3人。
戻ってくるや否や、先ほどの美少女が何やら小屋の中を忙しく散策し始めた。
それを怪訝そうに見つめるルイ。
マリアはその隣で、結局持って帰ってきた卵を大事そうに撫でている。
マリアが両手でギリギリ抱えられるほどの大きさか
流石に飛竜の卵だけあって、中々の大きさである。
ーーーほんとに羽化するのかな、、、
しばらくすると、スウが小屋から出てきて言う。
「確かに、、、2人で住んでる形跡はないけど、、、」
まだ何か引っかかるような表情を浮かべていたが、次第にその顔も晴れ、ため息をつく。
「あの、、、お名前はなんて言うんですか?」
キョトンと見つめていたマリアが、首を傾げて聞く。
ーーーーお、でかしたマリア
立場的に俺からは聞けないからな
「私はスウ、よろしくね。あなたは?」
「はい!私は魔ーーーー」
そう言いかけたマリアの口を、ルイが急いで塞ぐ。
もごもごとするマリア
「ま、、?」
「マ、マリアって言うんだ!」
ーーーーーおいおいおいおい!!
ここで魔王ってバレたらジ・エンドだぞ!
慌ててフォローするが、その2人の様子を、怪訝そうに目を細めてじーっと見つめるスウ
明らかに何かを怪しんでいる。
ーーーーやばい、、、遅かったか?
「ど、どうした、、?」
その言葉にも返答せず、2人を見続ける。
ーーーえぇ〜、、、
やばいやばい
頼む、、バレてないでくれ、、
無理だめっちゃ見てる、めちゃめちゃ見てる
もう終わった、、、
「、、、やっぱ怪しい、、」
スウはそんなことをつぶやく。
怪しがっていたのは2人の関係性だった。
まあそれもそれで誤解されると面倒くさいが、、
「だ、だから違うって、、なあマリア?」
マリアに助けを求める。
「?何がですか?」
キョトンと首を傾げるマリア。
その顔を見てると、自分だけがこんなに焦っているのがバカバカしくなってきた。
「、、、まあいいや、それで?このレンガみたいなのは何に使うの?」
スウが足元の板を指差して言う。
ーーーそうだ、すっかり忘れていた
俺たちはこのレンガを作りに行ったんだった
「あぁ、これでかまどを作ろうと思って、、」
「かまど?」
キョトンと首を傾げて、さっきのマリアと同じ反応をするスウ。
この世界にはかまどがないのか?
「かまどって言うのは、鍋とかを煮炊きするための設備なんだけど、、
まあ簡単に言えば火を留めておけて、色々料理ができる場所って感じかな」
スウはイマイチピンとこないのか、眉尻を下げる。
「ふ〜ん、、」
そう説明すると、ルイはしゃがんでレンガを手に取った。
ーーーまあ、強度に問題はありそうだが、一応固まってはいるな
なんとか作れそうだ
「どうですか?」
その隣で、マリアが中腰になって聞いてくる。
「うん、ちゃんと固まって、、、ブッ、、!」
そう言いかけてマリアの方を向いたルイは、速攻目をそらす。
マリアが前屈みになったことで、Tシャツの首元が下に垂れ、
マリアの可愛らしいさくらんぼがちらっと顔を出したのだ。
ーーーちょっと見えちゃったよ、、
つーかなんでノーブラなんだ!?
まあラッキーっちゃラッキーだが、、、
、、、いかんいかん!
ブンブンと首を横に振り、自らの妄想をかき消す。
「?どうしたんですか?」
鼻を抑えながら下を向くルイを、心配そうに覗き込むマリア。
「だ、だだ、大丈夫だよ!!」
その様子を不機嫌そうにじーっと見つめていたスウは、ルイの横へちょこんと座ると、
ルイの腕に抱きついて言う。
「ねぇねぇ、そのかまどってどうやって作るの〜?」
上目遣いでルイの方を見つめる。
たわわなお胸が容赦なくルイの腕に押し付けられていた。
ーーーーーうぉおおおおおお
胸が、、胸が当たってますねぇさん!!
なんだこの状況!!
左にさくらんぼ、右にマシュマロ、、、
スイーツパラダイスかここはッッッ
やばいクラクラしてきた、、、
ルイは気を取り直し、説明に入る。
「ま、まずこのレンガを2列で上に重ねていって、その塔を2つ作ってくれ」
「は〜い」
2人は言われた通り、レンガを2列で重ねていく。
「できたよ〜」
「できました!」
「お、ありがと。そしたらこの2つの塔を50センチくらい空けて置いて、、、
後はこの間にさっきの帰り道に拾ってきた落ち葉や木の枝を出来るだけ入れる」
手際よく作業を進めるルイ。
「そしたら最後に、、」
そう言って、ルイは小屋の中へと入っていく。
それを不思議そうにまじまじと見つめるマリアとスウ。
小屋の中でルイは、キッチンを漁っていた。
ーーーえっと、、、確かさっき見た時、このグリル用のコンロに、、、
、、お!あったあった!
小屋から出てきたルイは、取ってきたものを2人に見せる。
「この金網を、2つのレンガの塔の上に置いて、、、これで完成!!」
ーーーここで思った人もいるかも知れない
ちょっと待て、それで完成なのか?
それってほんとにかまどなのか? と、、
確かにこれは往来現実世界で〝かまど〟とされているそれとは明らかに異なる。
共通点は火を留めておけることぐらいだろう
どちらかというとバーベキューセットに近い
これをかまどと言えば、かまど職人に
「かまど作りを舐めてんのか!」
と一喝入れられそうなレベルだが、
どうか許してほしい。
まず俺は、農業高校の生徒であって、決してかまど作りを専攻していた訳ではない。
課外授業で軽く触れた程度の知識だ。
それに加えこの環境、材料なんて揃ったもんじゃない。
逆にここまで作ったことを褒めて欲しいくらいだ。
一応これだって、鍋で煮炊きしようと思えばできるし、肉だって魚だって焼ける
むしろこっちのほうが有能なんじゃないだろうか
そんな誰に向けてなのかも分からない保険をかけるルイ
「よし、後は最後の行程だ。
ーースウ、あのかまどの少し手前を火炎矢で打ってくれ」
「え?あそこを?」
不思議そうに首を傾げるスウ
ーーーそう、スウをノコノコと小屋に連れてきたのは、何も考えなしだった訳ではない
このかまど作りの最終行程には、スウの火炎矢が必要不可欠なのだ
、、、まあ、正確に言えばあると便利という程度だが、、、
スウは疑問を感じながら、背中の弓矢を手に取ると、構えに入る。
その様子を、息をのんでじっくりと見つめるマリア
狙いを定めたスウは、弓矢を離す。
シュバッ
と放たれた火炎矢はレーザービームの如く
かまどめがけて飛んでいき、かまどの手前の地面へと突き刺さった
次の瞬間
ボォオウッ
と燃え上がる炎
その熱は3人の方まで届き、3人は目を細める。
その炎は、かまどの下の落ち葉や木の枝に燃え移り、
やがて3人が目を開けた頃には、
見事にかまどに深々と燃え盛る火が灯っていた。
かまどの完成である。
テレテレッテレ〜
《かまどを手に入れた》
あれだけかんかん照りだったお日様はいつのまにかすっかり傾き、
薄暗くなり始めた辺りを、ほうぼうと燃え盛る炎が照らす。
その火に照らされたマリアは、言葉をこぼす。
「、、、すごい、、、すごいですルイ!!」
純粋に感動しながら、ルイの方を振り向くマリア。
よっぽど興奮しているらしい。
スウもその燃え盛る火に感嘆しているのか、弓を構えたまま動かない。
ーーー良かった、、、
「かまどを作ろう!」
などと主人公っぽくカッコつけて大袈裟に言った手前、
な〜んだこんなもんか
と拍子抜けされたらどうしようかと思っていた。
とりあえず一安心、、
するとさっきまで言葉を失っていたスウが、
バッ と抱きついてくる。
「さっすが私のダーリン!もっと好きになっちゃった!」
例によって胸が押し付けられる。
「ば、ばかっ、、!やめろ、、!」
ーーーほんとはやめて欲しくないけど、、
「ルイ!これでどうやって料理をするんですか?私もうお腹がペコペコです!」
マリアがお腹を抑えながら言う。
ーーー確かに、あのアリスのおにぎりを食べて以来何も食べてないからな
散々動き回って精神的にも体力的にも疲れたし、そろそろ何か食べないとか、、
「よし、じゃあさっきの火竜の肉を、、、」
ーーーーーあれ?
確かさっきまでここら辺に横たわっていた火竜がきれいさっぱりいなくなっている
おかしいな、この辺だったはずだが、、、
「マリア、この辺に火竜が倒れてたよな?」
「あぁ!それならもう消えてしまったんだと思います!」
「え、、、消えた、、?」
「はい!倒したモンスターは時間が立つと消えてしまいますから!」
ーーーーええええええええええ
なんだよそのゲームみたいなシステム
そこまでリアルに再現してくんのかよ
頭を抱えるルイに、スウは疑問を抱く。
「どうしたの?倒したモンスターが消えるなんて別に普通のことじゃない、、、」
「あ、あぁ!そうだよな!うっかりしてたわ!」
「、、、まさか、その火竜の肉を焼いて食べようとしてたの?」
コクリ、、、
ルイは俯きながら頷く。
「ごめんなさい、、私が気づいて剥ぎ取っておけばよかったですね、、」
マリアはぺこりと謝る。
そんなルイを見て、スウはため息をついた。
「もうっ、、、でも、そんなちょっと抜けてるところが好きなんだけどね、、」
そう言って再び弓を構える。
「仕方ないな、ちょっと待ってて」
そして三本の火炎矢を手に取ると、目をつぶりじっくりと耳をすます。
明らかに先ほどとは空気の変わったスウを、
マリアとルイは息を呑んで見つめる。
風が木を揺らす音だけが辺りを包み、緊張感が漂う中、
バサバサッ
微かにその音が聞こえた瞬間、
スウは手に持っていた三本の矢を一気に空めがけて解き放つ。
その矢は三本とも空中で何かに刺さると、真っ赤に燃え盛った。
そして何かを射抜いた矢が落ちてきて地面へと刺さる。
その一連の様子を、ルイはあんぐりと口を開けたまま眺めているのがやっとだった。
正に野生児のような嗅覚と、針の穴を通すコントロールである。
その弓矢の先に刺さったものの正体は、鳥だった。
その鳥はこんがりと美味しそうに焦げていて、焼肉のようになぜかジューシーである。
そしてものすごくいい匂いが漂ってくる。
スウはその弓矢を地面から引っこ抜くと、ルイとマリアに渡す。
「はいっ ちょうどいい〝アブラドリ〟がいて良かったわ!」
ーーーその笑顔を見てルイは、食事が手に入ったことの喜びと同時に、
絶対この娘を怒らすのはやめよう
、、と、そう、心に誓った。
もうすっかり日は沈み、かまどに灯る火だけが辺りを照らす。
3人はそこら辺にあった切り株をイス代わりにし、かまどを囲むようにしてアブラドリを頬張った。
その味は、正にジューシーで肉厚。
噛めば噛むほどアブラが出てきて溢れてしまいそうだ。
こんな鶏肉が食べたことがない
ルイが初めて食べるその鶏肉の美味しさにがっついている中、マリアとスウは話を進める。
「ーーーなるほどね、それで道端に倒れてたルイをこの小屋に運んだって訳か〜、
命の恩人さんだったのね、疑っちゃってごめんなさい」
「全然大丈夫です!」
恐らく何を疑われていたのかも理解していないだろうが、満面の笑みで答えるマリア。
「スウは、ここで何をしていたんですか?」
「ちょっとこの近くの町に用があってね。そのついでにルイを探してみようかなって、、」
「ルイがここにいることがわかったんですか?」
「まぁね、推測だけど。だって、、、」
ピクッ
その時、スウの表情が一変して張り詰めたものとなる。
マリアもほぼ同時に似たような表情へと変わった。
張り詰めた空気に、ルイだけが困惑する。
「、、、いる、、」
「いますね、、」
2人はそう囁くと、辺りを見渡し、戦闘態勢に入る。
ーーーえ?え?え?
いるって何が?
ねぇ何がいるの!?
神経を張り巡らせる2人の横で、あたふたと分かりやすく焦るルイ。
ーーー何やら訳ありの展開です、、!
読んで頂きありがとうございます!
次回もぜひご覧頂けると嬉しいです!




