かくいう俺も何やら訳ありみたいです
──とりあえず状況を整理しよう
俺は今小屋の中にいる
床や壁が木で出来ていて、その造りから見るに、キャンプ場にあるようなログハウス的な小屋なのか?
そして、目の前には美少女。
真っ白な肌に蒼い瞳、くりっとしたアーモンド型の目できょとんとこちらを見ている
めちゃくちゃ可愛い。
身長は160くらいか?女の子にしては平均ほどの身長だろう
そして何より細い!抱きしめたら折れそうだ、てか抱きしめたい
体はすらっと細いのに、出る所は柔らかそうに出ている
俺はさっきこんな美少女のなんて所を触ってしまったんだ…………ちょっとラッキー
閑話休題。
服装はと言うと、麦わら帽子に動きやすい半袖半ズボン。
その簡易的な服装はやはり農業の格好であろう。
そしてまたそのTシャツが薄い。 そのため余計に胸の膨らみが露わとなっている。
中学時代、まだ学校に女子というものが存在した時にも思ったことだが、無駄に露出の激しい服装よりも、逆に体操着やTシャツなどの簡易的な服装の方が、意外に体の曲線がわかり、男心を刺激するものである
いかんいかん、問題はそこじゃない。
で、この美少女は自分のことを魔王と言った。
…………やべぇ全然状況が掴めん
そうだ!とりあえず名前を聞こう!
俺は、既に起き上がり、正座をしながら心配そうにこちらを見つめる美少女へ問うてみた。
「あのさ、名前はなんていうの?」
「はい!マリアです!」
マリア……名前もやっぱ可愛いな
「じゃあ……マリア」
普段初対面の女子を呼び捨てにすることなんて、そもそも女子と喋ることなんてないのだが、少し攻めてみる。
「はい!なんでしょう!」
その美少女、マリアは少し身を乗り出して、天使のような悩殺スマイルをうかべる。
身を乗り出したことでTシャツのだぶついた首元が開き、胸元がちらついた。純白な肌が垣間見得る。
まさかブラジャーを着けてない……なんてことはないよな……?
俺は首を振って気を取り直し、1番気になることを聞いてみた。
「あんま覚えてないんだけどさ、なんで俺ってここにいるんだ?」
「はい!この近くで倒れていたのでとりあえずここに運んだのですが……迷惑でしたか……?」
マリアは眉尻を下げ、困惑した面持ちで首を傾げる
いやいやいやいや!むしろオールオッケーです!
俺は全力で否定する。
とにかく俺がこの美少女に助けられたことはわかったが、それでもまだわからないことだらけである。
あ、大事なことを忘れていた。
「俺の名前はルイ。日暮ルイ、よろしく」
俺はアニメの主人公にでもなったかのようにドヤ顔で決める。名前を言った後にフルネームを言うと、何かかっこいいとどこかで聞いたことがあったので一応実践してみた。
「はい!よろしくです!えっと……ルイって呼んでも大丈夫ですか…?」
「もちろん」
俺がドヤ顔のグッドポーズで答えると、マリアは再び三度、天使のスマイルを浮かべた。
あぁ……女子に名前を呼ばれたのはいつぶりだろう…
その表情に俺がほっこりしていたその時である。
ピクッ とマリアは何かに反応したように動きを止めると、咄嗟に立ち上がった。
「ルイ!外へ出ましょう!」
突然血相を変えて声を張り上げると、入口付近に立てかけてあったクワのようなものを手に取り、小屋を飛び出す。
……と言うかクワだよな、多分。
俺はその後を追いかける。
ガシャッガシャッ
何やら走った時に変な音がしたが、後なんかやけに体が重いが、今はそんなことは後回しだ。
小屋を出ると、そのすぐ目の前には決して規模は大きくはないが、きっちりと手入れの行き届いた綺麗な畑が広がっていた。
周りは何やら自然だらけ、ここは山かなんかなのか?
そして何やら外が若干薄暗い。
あれ?今曇ってるのか?
すると畑の前に立ち尽くし、マリアが空を見つめていた。
俺はそのマリアの視線をゆっくりと辿って見る。
……………………え?
俺は1度自分の目を擦ってみる。それでも結果は変わらない。
その視線の先にいたもの、それは空一面を覆い尽くす大迫力のドラゴンだった。今にも謎の咆哮か何かが飛び出してきそうである。
「出ましたね畑荒らし……」
マリアがドラゴンを睨み付けながら呟く。
いや、畑荒らしとかそういったレベルの問題じゃないからねこれ。畑よりもっと大事なもの荒らされそうだからね。
俺は心の中で必死につっこんでみる。
するとふと腰についた何かに手が当たった。
俺はそこへと視線落としてみる。
何やら持つところがあり、細長い。そして先っぽはやたらととんがっている。
……………………。
目が覚めた時からスルーを続けていたが、どうやらもう認めざるを得ないな。
走るとやたら音が鳴る、頑丈な重量感ある鎧、そして腰には何でも斬れそうな剣……
……どうやら俺は、闘う系統の何からしい。
と言うことは、この状況は俺の出番というわけか。
本当に大丈夫なんだろうなこの剣。
てかこれがゲームのような世界だとしたら、俺のスキルはどーなってるんだ?このドラゴンに挑んでいって勝てるのか?もし仮にレベル1だったら確実に死ぬよなこれ
そんなことを考えながら覚悟を決めかねていると、マリアがクワを握りしめ、俺の横を勢いよく走り抜けていく。
そして1歩で小屋の屋根へと登ると、更にもう1歩で屋根を蹴り上げ、ドラゴンと同等の高さまで飛び上がった。
空中でマリアはクワを両手で握りしめると、ドラゴンの頭上から勢いよく振り下ろす。
するとドラゴンがキレイに真っ二つに両断され、丁度畑を避けて左右へ音を立てて落ちた。
………………は?
俺はただポカーンとその1連の様子を眺めている。開いた口が塞がらないとは正にこのことだろう。
「ふぅ……よかった。畑は無事みたいです!」
何事もないかのように平然と着地したマリアは、汗を拭うと何食わぬ顔で笑う。
いや今クワでドラゴン斬ったよね?まあまあボス級のドラゴンを一刀両断、いや、一クワ両断したよね?
俺は言葉にならず空いた口をぱくぱくとさせていた。
「それでは小屋に────」
「ルイ!!」
笑顔で言うマリアの後ろから、唐突に俺の名前が呼ばれる。
その先には、俺と似たような格好をした少女が息を切らしてたっていた。やはりここは山奥か何かなのだろうか。
てかなんであんた、俺の名前知ってんの?
「なんでお前、魔王と一緒にいるんだよ!!」
「……………………へ?」
訴えかけるように投げかけられたその言葉に、俺は全く状況が掴めず首を傾げる。
── どうやら美少女だけでなく、何やら俺も訳ありみたいです。