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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

呪神テンガルン・ブブバ

作者: 健康

 

 二〇一号室 



「ねぇー、今日は何して遊ぶの?」


 絵本を持った少年は物入れの隙間に語り掛けている。


「……ブ」


 物入れの隙間から声が漏れた。

 襖からどす黒沼から這い出たような手のようなモノが襖の端に掛かると、少しだけ襖が開く。 


 隙間の暗闇に何かが浮かんだ。


「……あはは、また、お月見とこの絵本に、カキカキするの?」


 少年は怖がる様子を見せずに、物置から覗かせる暗闇と会話しながら、持っていた絵本をみせて頁を開く。


 そこには真っ黒い不気味な闇が絵が描かれてある。


「はははっ、ぶぶばー」


 少年は嬉しそうにページを捲る度に、闇に青白い目が増えていく。


「……バ」


 襖の暗闇は小さい声で少年へ答えていた。

 少年は絵本の最後のページを開くと、


「さとしー帰ったわよ」


 そこに、玄関から母親の声が響く。

 暗闇に浮かぶ青白い目は消える。


 さとしと呼ばれた少年は最後のページに自然に描かれた紅丸の円印には気付かずに持っていた本を閉じると、その本を隠すように背中に回し、ズボンの中に差し込む。


「――ブブバ、またね、お母さんが帰ってきた」


 只の暗闇をブブバと親し気に話しかけてから、帰ってきた母親の姿を見に隣の部屋へ向かった。


「――お母さん、かいもの、早かったね」


 さとしは気分良く椅子に座り、机の置いてある箸を手に取ると笑いながら、机に置かれてあった硝子コップ、子供用マグカップを箸で叩いては、リズム良く机も叩き出す。


 さとしは太鼓を叩いている気分で楽しく遊んだ。


「……さとし、その音、耳障りだからやめなさい」


 母親は冷蔵庫に買ってきた品物を入れながら、硝子の響く音が気にくわないのか、さとしへ注意を促す。


「えー、やだやだ、今日パパは帰ってくる?」


 母親は斜視気味の目をさとしへ向けて、また同じことを話しているわ、おかしな子ね。と思いながら、


「ううん、また今日も出張よ? 昨日も話をしたでしょ?」

「あれー」

「変な、さとしね。さ、買ってきたものでご飯にしましょ」


 さとしは、母親の言葉に笑いながら


「うん、ブブバにもあげていい?」

「ひっ」


 母親はその名を聞いた途端、顔が硬直してしまう。


「あれ、おかあさん、どうしたの?」

「……聡、またなのね」


 さとしは母親の顔が一瞬、鬼のように変化したのを見逃さなかった。


「……また?」


 母親の表情を見て、さとしは怯えたように小さい声で母親に聞いていた。


「ふざけないで、その、ブブバよっ、絵本を出しなさい」

「えーやだよ、遊ぶんだもん」

「駄目よ、約束が守れない子ではないでしょう」


 母親は眉間に皺を作り斜視な目を鬼のように大きくさせてから、息子へ顔を突き出す。


「……はい」


 さとしはまだ幼い。母の怒りの迫力にあっさりと負けた。

 背中に隠し持っていた一冊の絵本を机の上に置く。


 絵本の表紙には黒い人形と子供たちが遊ぶ絵柄が描かれ、その中心には丸円が重なった幾何学模様が記されてあった。

 この不気味な絵本は引っ越してきた当初から、この二〇一号室に置かれてあった絵本。


 さとしが喜んで読んでいるので母親は放っておいたのだが……。


「捨てたはずなのに、どうして“また”拾ってきたの?」

「ううん、玄関にあったの」

「また、嘘を言ってっ」


 母親は軽く怒りながら息子の顔を見て、しょうがないわ、と溜息を吐きながら絵本を取る。


「これは、母さんが処分します」

「うん……」


 さとしは目線を隣部屋へ向ける。

 そこは闇がいる物入れだ。


 母親はさとしの様子には気付きもせず、急いで透明なゴミ袋を引き出しから取り出してはゴミ袋を広げ、その中へ絵本を捨て蓋を閉める。

 そのゴミ袋を持ちヒールの高い靴を履き玄関扉を開け、外のゴミ集積場へ小走りに向かった。


「こんな気持ち悪いものっ!」


 生ごみ置き場に絵本が入った袋を乱暴に投げ捨てる。


 その様子を嗤いながら見る老婆がいた。

 母親はその老婆の視線に気付いて、挨拶しなければと、頭を下げながら口を動かしていく。


「……藤野さん、こんばんは」

「えぇ、文子さん、こんばんは……」


 藤野は、さとしの母親の事を文子と呼んだ。


「では」


 文子は七十は超えている藤野の婆さんが嫌いだった。

 引っ越してきた当初は面倒見が良く気さくな態度だったのだが、日を追うごとに、文子の生活を監視するように、ゴミ捨て場所や、さとしの送り迎えの時に頻繁に現れるからだ。


 文子は急いで、さとしが待つ部屋に戻る。

 玄関扉を開けると、突然、部屋の電気が消えてしまう。


 ブレーカーが落ちた? オカシイ、全てが消えていた。

 廊下からの電灯が開けた玄関から届く筈なのに、明かりは届かない……。


 真っ暗の闇が部屋に渦巻いていた。


「あーブブバー」


 暗闇に、さとしの声が響く。


「だめよ、さとし、その声に反応したら駄目っ」


 その文子の声に対して、頬を撫でる風と共に、


「ぼぼぼぼおぼぼおぼぼぼおぼぼぼぼぼおぼぼぼおぼぼぼぼぼお、Bu、Bu、baaaaaaaa」


 暗闇からの吐き気を催すほどの不気味な振動声が、轟く。

 その瞬間、視界の片隅に青白い双眸が浮かぶ。


 青白い目を持つ得体の知れないモノの額には、紅い円印も浮かんでいた。


「ひぃぃぃぃ、さ、さとしいいどこおーーー」


 文子は突然見えた青白い目に狂乱しながらも勇気出して、さとしを探そうと暗い部屋に入るが、さとしは母親の声に反応を示さない。

 文子は机を退かし、椅子を退かし、さとしがいたであろう床下へ急いで近寄ると、足に息子の感触を得た。


「さとしなの? さとしっ、さとし、さとし」


 暗闇の中、さとしを胸に抱えると、玄関へ急いで向かう。

 廊下で息子を下ろし、


「さとし、確りしてっ!」

「……」

「さとしいいいいっ」


 さとしはぐったりして返事をしない。


「ここで、待っていてねっ! だ、だれかぁぁぁぁぁ!」


 母親は気が動転したのか、奇声を上げながら近所の人へ助けを求めに走る。



 ◇◆◇◆



 二〇二号室



 また可笑しな夢を見た。

 竜になり空を飛び、人々を蹂躙する夢を……リアルな夢だった。

 わたしの頭もついに、ボケてきたのかねぇ……。


 居眠りしてもう夜さね。

 ミコと太郎が頭を摺り寄せてくる。


「にゃんこたち、餌は後だよ」


 可愛い猫たちに挨拶をしてから、溜まっていたゴミ袋を持ち、ゴミ捨て場に向かう。


 そこで、ふと頭上を見上げた。


 今日も別の真ん丸い月が出ている。

 何年も出てこないと思ったら、やっぱりねぇ……。


 また、ここで嫌なことが連続で起きるのかねぇ。


 くわばら、くわばら……。


 ゴミ捨て場から帰ろうとした時、近所に住む文子さんを見かけた。


「こんな気持ち悪いものっ!」


 生ごみ置き場に、何かを、乱暴に投げ捨てているじゃないか。

 パート先でいやことでもあったのかねぇ。


 文子さんはわたしの視線に気付いたのか、斜視気味の目を持つ、綺麗な顔を見せる。


「……藤野さん、こんばんは」

「えぇ、文子さん、こんばんは……」


 いやな顔を見せるねぇ。

 最初は気の良い女だと思ったのだけどね。

 旦那がいるのに、パート先の店長とよろしくやっているのを、わたしゃ~、よーくしっているんだよ……。


「では」


 文子さんは部屋に戻っていく。


 ふん、わたしに対しての、拒絶の顔色が表に出ているよ。


 ま、言わないけどね、わたしゃー自分でも良く分かってるつもりさ、不気味な婆とね……。 


 さて、部屋に戻ろうか。


「にゃぁん」

「にゃおぉん」


 部屋に戻るとミコと太郎が出迎えてくれた。


「あら、お前たち、おりこうさんだねぇ」


 ミコと太郎。

 可愛い守り神たち


「今、餌をあげるからね」


 台所に向かい冷蔵庫から冷えたカルカンの缶詰を出し、湿った餌を二つの銀ボウルの餌箱へ盛ってあげた。


「にゃあ」

「ん、にゃ」


 ミコと太郎は嬉しそうに鳴いては、銀ボウルの中へ顔を入れて、餌を食べている。


 さて、今宵も綾部さんへ挨拶しておかないと……。

 台所で塩を掴み、全身に塩を振りかけてから、臨、兵、闘、者、皆、陳、列、在、前、九字を刻み、最後にっ


「カツッ!」


 と、玄関前で清めてから玄関を開ける。


 開けると、さっきゴミ捨て場にいた、さとし君を連れた文子さんだ。

 血相を変えている?


 気まずいねぇ……。


「――かぁぁぁぁ、ああああ、藤野さんっ、さとし、さとしがっ! あぁ……」


 側で立っているじゃないか、さとし君は……。


「さとし君がどうかしたのかい?」

「さとしが、さとしが倒れて、急いで救急車を呼んでくださいっ」

「救急車?」


 そこで、わたしは小さいさとし君(・・・・)へ視線を向ける。


「……」


 さとし君はわたしを強く睨む。


 額に紅い丸円印が刻まれ、小さい目はどす黒く染まっている。

 背後には複数の蠢く闇がチラついていた。


 あぁ……まさか、もう……さとし君は……。


「速く、救急車をっ」


 この母親は隣にいる自分の息子である“さとし君”を見ようともしない。


「……はいはい、緊急事態なんだね、わかったよ」


 もう、手遅れだと思うがね……。

 部屋に戻り電話で救急車を呼んであげた。

 額に印が刻まれている……さとし君は、うなだれる母親、文子さんを見ては小さい手で腰を撫でるように触っている。


 母親は気付いていない。

 あれはもう霊体となっているからね。


 くわばら、くわばら……。

 九字印を切り、場を清めて簡易的な結界を強めないとね……。

 自分の身は自分で守るしかない。


 わたしゃーこうやって生きてきた。

 災いが見える目があろうと、他人の不幸を知ろうと、越えちゃいけない線があることは身に染みているからねぇ。


 だが、孫の顔を思い出す。

 ……たけし。お前を救ってやれなんだ……。

 たけしの造景が、ぼやけて消えていく。

 わたしも歳を取ったねぇ……。


 そうして救急車で運ばれていくさとし君。

 災いの月、十五の日、悪いことが起る日に限って別の月が夜空に浮かぶ。


 ◇◆◇◆



 一〇二号室



 朝、いつものように起きて洗面台で歯を磨き顔を洗い終わり、洗面所から出ようとした瞬間、ふと、鏡の端に誰かが映った気がした。


「ん、気のせいか? 目が悪くなったわけじゃないが……」


 さぁ、仕事の時間だ。

 洋室で寝ている妻は無視、背広に着替え会社へ向かう。

 だが、その日は、オカシイ。誰かに見られている気分だった。

 駅に向かう角を曲がった後、踏切を渡る瞬間、仕事場に入る自動ドアが開く時、何かを感じた。


 本当におかしい。


 仕事中にもおかしな気配を感じてしまう。

 ストレスか? いや、 何年も同じ作業を繰り返す流れ作業の一員だ。


 今更、ストレスな訳がない。


 そして、仕事帰りのコンビニに寄ろうと、自動ドアに立つが、ドアの反射に、俺の身体に纏わりつく見知らぬ人影が映った。


「ひっ――」


 思わず、悲鳴をあげ凝視した。

 だが、影はもう消えていない。


 もちろん、背後を振り返るが誰もいない。


 こりゃ、本格的に病んできたか……。

 まぁ、病んでいるのは前からだしな……。


 溜息を吐きながらコンビニで買い物を済ませた。

 家に戻ろう。妻が待っている。


 裏野ハイツがある通りを歩き、家に帰る。

 ……今日はやけに疲れたような気がするよ。

 そして、一階にある玄関扉を開けると、鼻が圧し折れる異臭がした。


 腐った肉の匂い……。

 一瞬だが、ゴミ溜めが散らばる映像が視界に浮かぶが、気のせいだろう。


「さちこ、どうしたんだ?」

「……あ、おかえりなさい」


 そこで、パンッと音を立て電球が消えた。


「あら、切れちゃったわね、丁度いいわ、あなた、電球を取り換えてくれる?」

「あぁ、分かった」


 リビングに入り電球を取り換え、電気が戻った。


「今、魚を焼き終えたところよ」

「だから、臭かったのか」

「えぇ、換気をしているのだけど」


 着替えを行い、食事となる。


「昨日の夜、貴方が帰る前に救急車が来ていたのは知っていた?」

「いや、知らないな。誰か倒れたのか。上の階に住む気色悪い婆か?」

「違うわ、塩を撒いて、何か、お経が聞こえたし、でも、不思議と天に昇る気分で意識を失いかけたわ」

「そうか……あまり関わるなよ」

「うん、ねぇ、それより、洗面所の鏡の端に変なマークが刻まれているのだけど、後で見てくれる?」


 何気ない妻の一言で、今朝の出来事が頭に過る。


「どんなマークなんだ?」

「紅くて血のような丸円の印が、幾つも重なった模様みたいの……」


 ……気持ち悪い。


「気持ち悪いでしょ、洗剤で洗っても落ちないのよ」

「あぁ、後で見てみるよ」

「朝、あなたが出て行ってから、歯を磨こうと洗面所にいったら、鏡の端にそのマークはあったわ、昨日にはなかった」

「今日の朝方に蟲でも張り付いたのだろ」


 そう何気なく呟くが、今日の朝、視界に入った影のこと、一日中、影が纏わりついている感覚が脳裏によぎる。

 妻が寝て、気になった洗面所に向かう。


 鏡の右端に、丸い円が重なった模様がある。

 妻は洗剤を使っても落ちないと言っていたが……。


 スポンジで擦ってみると、確かに落ちない。

 何なんだ、これは……試しに。指で、その鏡のマークを触ってみた。


 その瞬間、ズキッと指先が痛む。


「痛っ」


 指先からねっとりとした血が蟲のように蠢き指の表面を覆う。

 そして、血の丸い円が出来ていく。


 ひぃぃぃ――。


「なんだ!! 糞っ!! 消えろっ!」


 気持ち悪くて、思わず大声をあげながらタオルで擦るが消えない。


「あなた、どうしたの?」

「指に傷がっ」


 指を見せるが、あれ、消えている?


「え? 傷? 何処にもないと思うけど……」


 妻は疑問顔を浮かべて、わたしの指を凝視していく。


「あぁ、済まない。気のせいだったようだ」

「そう? あ、鏡にあった変なマークを消してくれたのね、ありがと」


 え? 鏡を見ると本当に端にあった丸円マークが消えていた。

 そして、指先にあった丸円の傷も消えている。


 どういう事だ。


「……」

「あなた、顔色が悪いわよ?」

「いや、なんでもないよ、少し仕事で疲れていたようだ」

「……そう? ならもう寝ましょうよ」

「あぁ」


 その日はどういう訳か、布団に入ると、すぐに寝ることが出来た。


 そして、次の日。

 わたしは気付くと、見知らぬ部屋で目を覚ます。

 ごみ溜めのような部屋で異常に臭い。


「ここはどこだ」


 薄暗く、赤光が満ちた部屋だが萎びれたカーテンがある。

 カーテンを開けると、赤い血が突然に顔に降りかかってきた。


「ひぃぃぃぃぃ」


 わたしは顔を手で拭いながら出口がないかと反対方向を走り出したが、足に何かが引っ掛かり転んでしまった。


 足もとには、妻が、いた……。

 だが、干からびた死体だった。


 ひぃぃぃぃ――顔を叛けたところで、目を覚ます。


 不思議と鼓動は感じないが、息を何回も吐いていた。


 目覚まし時計がリンリンと鳴っている。

 いつもは嫌な音だが、今回は救われた気がした。


「夢か……」

「あなた、その顔……どうしたの?」


 死んでいるような青白い顔を浮かべた寝起きの妻がそんなことを言ってくる。


「印の、鏡にあった印が……あなたの顔に……」

「え?」


 鏡に急いで戻ると、顔のあちこちに丸円の傷が出来ていた……。


「何んだ、これは……」


 洗っても洗っても落ちない。

 ごしごしとタワシで擦るが落ちない……。

 しまいには、丸い印から黒い血が流れてしまった。


 こんな顔で会社にいかなきゃいけないのか。


 そして、鏡に顔を近づけた途端、


「ブッ」


 変な音が鳴る……。


「え?」

「ブッ」


 音が出ているの丸い円からだ……。

 丸い円の傷が少し動いている?


 動いている傷に指をつけると、指に出血していた黒い血が付着した。

 さっき擦りすぎたか……え、なんだ粘り気がある。

 円の傷から指を離すと、指に黒い糸のようなものが纏わりついていた……。


 なんだこれはっ。


 更に、傷口が嗤うようにブ、ブ、バ、と音が鳴り出した。


 わたしはどうやら頭がオカシクなったようだ。


 すぐに頭をタオルで巻いて音を押さえる。

 妻にも見せたくないので、急いで包帯を薬箱から取り出し頭に巻いていった。


 視界を確保するために目は覆わずにぐるぐる巻きにした。


「病院に行くのね」

「あぁ、見て貰う」


 仕事を休み、その日は病院に向かった。

 しかし、診察をしてもらう時には、もう黒血は消えて変な音もなく丸傷は消えかかっていた。


 医者には、何かの感染症でしょうと言われて抗生物質を渡される。

 包帯は取り換えてもらったが、特に問題はないようだった。


 医者と話しながらも、わたしの脳裏には精神科の文字が頭に過っていた。

 鏡の件といい、音といい……正気とは思えないからだ。


 だが、医者にはすぐに傷は治りますよ。

 とか言われて安心してしまった。


 病院から何処もよらずに裏野ハイツへの道をたどる。


 すると、アパート前が何やら騒がしい。

 警察の自動車が止まり、警察官の方々がいる。


 近所からも野次馬が出来ていた。


「あそこで何かあったのですか?」


 野次馬の男の人に話しかけていた。


「……ん? あぁ、何でも、二〇一号室に住んでいた子供が折檻されて死んだらしい。すると、今度は一〇二号室で異臭がするって騒ぎが起きたんだよ。それで、警察官が扉を開けて入ると、放置されていた中年の女性と中年男性遺体があったんだとさ、住んでいたのは夫婦らしいが」


 わたしは彼が何を言っているか、分からなかった。

 一〇二号室はわたしの部屋だぞ。


 まて、それじゃ、わたしは(・・・)誰だ?

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― 新着の感想 ―
[一言] 今さらながら気が向いて読んでみました。 非常に面白かったです。 槍使いと黒猫にも黒い円環は出てきてますね、、ひょっとしてブブバさんもこれから登場したりするのでしょうか。
[一言] むっちゃ怖くて、鳥肌がたった。
[良い点] むちゃくちゃ怖いっす(>_<) [気になる点] もう、今夜トイレにいけない。
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