☆発想力を磨け!
いきなり、「面白い話を書け!」「題材自由」と言われると、何をしたら良いのかわからなくなってしまう……。こういうとき、「ああ、自分て発想貧困だな」と思うわけで。
かえって、「○○と言う題材で書きなさい」と言われた方が、筆が進む。
自分の作品はラノベではないが、ケータイ小説でもない。どちらかと言うと、大衆文学のつもりで書いている。ところが、そういうのは携帯小説サイトではウケが悪い。
利用しているこの「小説家になろう」さんは、PCでも携帯でも閲覧できる、PDFファイルへの変換や、縦書き、ダウンロードファイルまで作ってくれるので、大変重宝しているのだが、そこからやってきてくれる読者さんは、どちらかと言うと、いわゆる「ケータイ小説」の作家・読者さんが多いようだ。
作風が硬めだからか、それほどアクセスもない弱小作者であるわけだが、私は別に「ケータイ小説」には興味がないのでやりたい放題好き勝手に書いている。アクセスだとか、評価点だとか、そういうのよりも、読者の反応(ただ、面白かった、つまらない、でもよい)や、自分の小説を読んだ率直な感想(酷評歓迎)が欲しくて、何とか様々な媒体で自分の作品に触れてもらおうじゃないかと試行錯誤しているところだ。
読者数やランキングを面白さの指標として捉えている人にとっては、私のような考え方や作風は、全くの範疇外だろう。だから、私はそのような人が好き好むような作品は書かないし、そのような人に媚を売ることもない。
中には、私の作風や表現を「面白い」「興味深い」と見てくれる人がいるようなので、私はその、ごく一部の人のためにでもいいから、自分らしさを紡いでいこうと思っている。
しかし、私のこのような凝り固まった考えも、公募だとか、もしくは企画、競作などへの参加となると、崩さずにはいられなくなる。自分一人だけの提供スペースから、見本市へと公開の場が変わるのである。
当然だが、公募には選考委員がいて、その人たちの求めているもの、目指すものに該当すると思われる作品が選ばれる。企画、競作においては、主催者側の提示したテーマに沿って作品を作ることが求められる。
そのようなときに、自分の作風だけをアピールし、空気の読めないような作品を提示することなんて出来ない。限られた枠の中で、最大限に自分の味を引き出さなければならなくなってくるのである。
提示されるテーマ、方向性がある程度決められているからと言って、その通り、単純に思いつくまま作品を仕上げたのでは意味がない。選考委員、または主催者側の、意図するところから決して離れず、かつ、意外性の抜きん出た作品に仕上げなければ……、大量の良作に埋もれ、ただの「その他の1作」に成り下がってしまうのだ。
みんなが思いつくような題材では、とてもじゃないが、目立つことなんて出来ない。何とかして、他の参加者、応募者に負けないような捻った発想が必要になってくる。
無難に、与えられたテーマから物語を作ろうとすると、誰にでも思いつくような単純な話が出来てしまう。
例えば、去年、一昨年と別々のところで主催されたWEB小説のホラー競作企画に参加したが、やはり、「ホラー=霊、死体」と解釈して、そういう題材を使う人が多かった。私はどうしても、お化けだとか霊だとか、死体だとか、そういうものが苦手で、出来るだけそういうのを使わずに恐怖心だけでホラーを描けないかと試行錯誤した。
結果、出来上がったのは、一昨年は七不思議からヒントを得た階段の話、去年はサラリーマンのサービス残業と過労死からヒントを得た話。どちらにも、お化けや霊や死体は出てこない。それでも、十分ホラーになった。
誰も題材にしようとしないところから、求められた「ホラー」というジャンルへ話を持っていこう、そういう意気込みがあった。元々、知名度が低いからアクセス数なんて殆ど伸びたりはしなかったが、読んだ人が、「なんだこれ、なんか、他と違う!」と思ってくれたみたいなので、私の目論みは成功したといっていい。
皆が同じような味付けを好むとしても、一つくらい、ちょっと違うのがあれば、それにぶち当たった人の心に引っ掛かることが出来る。その引っ掛かりが、自分に対して興味を持ってくれる切っ掛けになればいいのだ。
大量のサンプル(応募作)の中で、急激に光り輝くものを作るだなんて、素人にははっきり言って難しい。場慣れしている人、名前の知れている人が、有利に決まっているから。そこを切り崩していくには、発想しかない、と思うことがある。勿論、その発想に見合うための表現力、文章力も必要になってくるわけだが……、要するに、「誰かとは確実に違う自分」というものを、知らしめる場として、公募や企画、競作への参加をする、というのもアリではないのか……?
しかし、単純に、「人とは違う発想」が浮かび上がるほど、人間は上手く出来ていない。そこで、常日ごろから、発想力を高める訓練をしておく必要がある。
私はこれに、「100のお題」を使わせてもらっている。お題製作サイトさんで配布している、様々なお題。雰囲気、漢字、天気、気持ち……などなど、様々なテーマ別の「お題」から、物語を作っていくのだ。
100もお題があるものだから、全部制覇するのはなかなか難しい……。しかし、テーマに沿って物語を考える、という訓練には最適だ。何よりも、自分の苦手を知るチャンスになる。今まで避けていた話、登場人物、舞台など、克服するきっかけになる。お題は勿論、強制ではなく、自分の思いついた順番にランダムで書いていけばいい。そしていつか、全てのお題を制覇したなら──、そこから得られたものはきっと大きいに違いない、という、マラソン級の代物なのだ。
書けないだとか、書きたくないだとかして、苦手なお題をすっ飛ばしていると、最後に嫌なものだけ残ってしまう。何とかして全部埋めたいという意地のようなものが沸き起こって、気が付くと結構埋まっている、なんてこともあるかもしれない。
表現力の幅が狭い、発想力が貧困だ、などという人は、お題からの物語製作を始めてみてはいかがだろう。
束縛された中でどれほど自分というものが表現できるのか、試してみる価値はある。
ちなみに、私は「歪んだあなたに100のお題」(お題サイト・追憶の苑さん提供)で、ファンタジー小説を執筆中。無謀にも、お題の順番どおりに物語を進めるオムニバス形式。全部の話が書き終わったら、壮大な幻想絵巻になっているはず……。完成まで気の遠くなるような時間を費やしそうだが、何とかなるといいな、という希望をもちつつ、カタツムリ並みの速度で更新中だったりするのです。