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#視覚的効果の罠──小説と挿絵の関係を憂いる

 小説に挿絵、バナーなんかがあると、ついついクリックしてしまう……そんなこと、ありませんか。

 バナーは特にそそられますよね。なんか、センス抜群だな! と思ってしまったら最後、そこのサイトへひとっ飛び!

 

 中身じゃなくて、広告で踊らされているだけ、なのかも知れませんが。

 せっかくなんで、自分だって使わない手はないな、と。


 実は先日ペンネームを変更しまして、せっかくの機会なので、全ての作品に表紙(書影って言うんですか?)を付けました。最初は人に頼んでいたのですが、フォトショあるし、どんどんつくんべ、と、フォントダウンロードしたり、フリー画像漁ったりしながら、(こういうのに時間がかかってるんですね)作りまくりました。センスが問われるので、気を使いますね〜。でも、ものすごく楽しかったです。

 視覚的効果って、かなり強いですよね。作品の雰囲気伝えるのにはもってこい! 私はイラストも描くので、(まあ、所詮素人レベルですが)画像を扱うってだけで嬉しいのです。



 さて、そこで。

 問題になってくるのが、イメージ画像と文章のギャップが激しい作品。


 ありますよね、やたらと美しい絵のライトノベル、買ってみたら、中身が「あれれ?」とか。「すみません、中身が伴ってないので、返品してもいいですか」なんて、出来ませんし。ゲームでも、グラフィックとストーリーのマッチしていない「クソゲー」が存在するくらいだし。

 騙される方も悪いんですが。これは、騙した方が勝ちとしか言いようがない。(商売ですから)


 オンライン作品だと、更にそのギャップは広がります。だって、絵を描くのも文章を書くのも、素人がやってるんだもの! どうしても差が出てきます。

 絵も文も文句なしにツボにはまった! なんて作品は、滅多にないのかも。どちらもプロレベルだったら鬼に金棒だけど、そう上手くはいかないもんです。


 OMC(オーダーメイドCOM)なんかで発注すれば、セミプロの方に絵を描いてもらうことは可能です。(ただし、執筆料金がかかります)以前、やはりOMC受注のイラストを掲げた小説サイトさんを拝見したことがあるのですが……、1枚○千円かかってますから、どうしてもイラストだけ浮いてしまうというか。う〜ん、見た感じ、「別に、そこまでしなくても」と思わざるを得ませんでした。

 自分のイメージどおりに描いてくれるOMCのクリエーターさんは、お金を貰っている分、顧客の満足を最大限に引き出そうと、かなりハイレベルな作品を提供してくれます。だから、美しい、すばらしい作品は当たり前。肝心なのは、せっかく納品されたイラストに見合ったレベルの文章を書けるかってこと。

 

 イラストに惹かれて立ち寄ったけど、よく見たら大した作品じゃなかった……俺の時間を返せ! なんて言われたくないしね。自分の背丈に見合った衣装を(まと)わないと、滑稽(こっけい)じゃないかな。


 例えば、OMCじゃなくても、あちこちで小説の挿絵募集見かけるけども、私、疑問に感じることがあるんです。

 絵描きのセンス、ってのもあるので、一概には言えませんが、「おいおい、どこにそんな描写が」と思うような文章に、恐ろしくハイレベルな挿絵……。何ていうんでしょう、描写不足を全てイラストに(ゆだ)ねているような、そんな雰囲気バリバリの小説。それこそ、表紙買いしてしまったラノベや漫画本の中身を見て、悶絶(悪い意味で)してしまうような。

 あのときの、がっかり感は、なんとも言えません。騙された自分が悪いんでしょうか、騙した方がわるいんでしょうかと、小一時間問答してしまいますよ。(まあ、前述の通り、騙した方が勝ちなわけですけど)


 イラストを頼む方も、頼まれる方も、よくよく考えたら、小説に書いてある以上の描写はするべきではないんですよ! 裏設定とか、細かい容姿の指定とか、そんなの、作品に書いてください! 作品の中に盛り込んで、その上でイラストを添える、くらいでは駄目でしょうか?!

 もう、センス云々の問題じゃない。

 普通に考えたら、小説の中に、「カッコイイ」「美しい」なんてありきたりの表現しか載ってないのに、挿絵なんか描けるはずがないんですって。

 カッコイイったって、ジャニーズ系か、スポーツマン系か、私の好きなスーツ着込みのおっさん系かなんて、誰もわかりゃしない。「俳優の○○に雰囲気が似ていた」(これは、「電車男」内で、エルメスの描写に使用されていましたね)とか、「いかにもとび職風」とか、きちんとイメージしやすいように書きましょうよ。美しいって、人には感性の差があるんだし、女子高生お嬢様風なのか、セレブ妻風なのか、居酒屋女将風なのか、わからないじゃない。

 描写もへったくりもない文章に、軽々しく自分のセンスを注ぎ込むなんて、私は絵描きとしてプライドが許さない。


 要するに、モラルの問題ですね。

 お互い、いいかっこしいじゃ駄目。

 頼むからには、頼まれるからには、きちんと作品と向き合って、足りないところを指摘しあうくらいじゃないと。

 言う人はまずないと思うけど、「あなたの小説からはこれ以上読み取れませんから、人物描写や背景描写を足してください」と、本来ならば挿絵描きだって言うべき。そうでなければ、逆に、「作品の客引き」のために利用されただけになってしまう。「あの小説に、あなたの絵は似合わない」だなんて言われたくないですよね。つまり、絵描きにとっても、マイナスに働いてしまうということなのです。



 自分の小説がイラストで表現されるべきではないというなら、写真を使う手だってあります。

 現代文学系、時代物なんかでは、ラノベ系イラストは似合わないから、写真を加工してイメージを膨らませることが出来る。画像の使い方、処理の仕方次第で、ぼやかすことも、鮮明にすることも出来るのだから、使わない手はない。

 何も、小説のイメージ=挿絵・イラスト、ではないんですよ。

 抽象的かもしれない街角のワンシーン、空の写真、草花、小道具だって、小説の中身とマッチすれば、すばらしい広告になる。


 使い方次第で、自分の作品を有効に宣伝できるなら、私はバナーや挿絵には賛成。

 だけど、使い方を誤ってしまった作品の末路を考えると……忍びない。



 一番げんなりくるのは、文章よりイラストが未熟な小説。下手、とは言いません。未熟なのです。

 小説を書き、さらに絵も描くというのは、どうも稀なようです。(すみません、謝っておきます)

 せっかくしっかりした描写、台詞回し、ストーリー展開なのに、そこに添えられている絵が全てを破壊してしまっている……なんてこと、ありませんか。

 「読まれやすいサイトを作ろう〜即バックされる条件について〜」というブログ(検索サイト・カオスパラダイスのアンケートを参考に作られたブログ)によると、『掲載イラストや写真、サイトデザインが趣味にあわなかった』ことを理由に即バックしてしまう方は少なくないようです。余程自信がなければアップしないか、でなければ、別コンテンツとして、サイト内で区別するとか……、した方が良いのかもしれません。私も、書影やバナー以外のイメージイラストは必要な人だけが見ればいいのでは、と、少し場所を離して展示させていただいています。(必ずそうしなければならないということではありません、悪しからずご了解くださいませ)

 イラスト、というだけで毛嫌いされ、小説の中身まで到達されないのは悲しいことです。自分の小説の対象年齢にもよるかもしれませんが……、サイト作り自体、見直さなければならない小説が、溢れているような気がします。



 ただ、自分の作品に合った読者を惹きつけるために凝ったバナーや挿絵を置くのは、いいと思います。

 まとめると、小説の挿絵やイメージ画、バナーというのは、あくまでも飾りに過ぎなくて、本当に作者が薦めなければならないのは本文。文章の未熟さをカバーするための挿絵、という考え方は、道理に反しているのです。

 


 ラノベ嫌いの人が、萌え絵のバナーをクリックすることはないと思うし、スイーツ系恋愛小説の苦手な人がギャル系デザインのサイトに足を踏み入れることはない。読んでみて、「あれ? これ、苦手な奴だ」とならないようにするために、自分の感性とあったバナーをクリックしている、という、読者の心理を、小説サイトの管理人はもっと意識するべきでしょう。

 ……って、ここまで書いていて、自分で、「ああ! うちのバナー、どうなんだろう!!」と、激しく動揺した私がいますよ。クリックしてくれた人に失礼のないようにしなければなりませんね。

 入り口から入りづらいと、最後まで読んでもらえない。

 入り口で惹き付けても、中身が伴わないと最後まで読んでもらえない。



 難しいのです、小説と、挿絵の関係は、果てしなく難しいのです。

 だから、世の中には編集さんという仕事があるし、装丁を専門にしている人もいる。

 プロの世界は、つくづく、上手く出来ていますよねぇ。

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