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*向上心を鍛える

 先日、学校に行こうMAXとかいう番組を久しぶりに観た。ボクシングの内藤選手が、かつていじめられていた中学を訪れていた。


 彼は中学時代、壮絶ないじめを経験していたようだ。叩かれ、やじられ、胃潰瘍になり、親にも言えず、頼る友人もいなかったらしい。彼の転機は遅く、高校卒業後住んでいた町で、ボクシングに出会う。体が小さい自分でも、もしかしたら強くなれるかもしれない、そんな気がして、始めたのだという。

 強くなり、あの時自分をいじめたやつを見返したいという彼は、次第に力をつけ、ついには世界王者となる。



 彼のように、弱い自分と戦いながら、強くなるのは、難しいことなのだろうか。王者になることは難しいかもしれないが、強くなる努力なら、誰にでも出来ると私は思う。





 私が小説や絵を書き始めた、小学〜中学のころ。自分はもしかしたら、人よりうまいのじゃないかなどという感覚に酔いしれていた。実に滑稽な話だ。視野の狭い学生時代、誰にだって、そんな錯覚は起きただろう。学校で一番上手い、それが誇りだった。

 高校になって、自分のそれが、ただの自己陶酔に過ぎないことを知った。世の中にはもっと上がいると思い、頭の上にずっしりと重石が落ちてきたような、そんな衝撃があった。

 漫画の上手かったやつ。やつは今、出版社で仕事をしながら、売れっ子の同人作家をしている。当時から上手すぎて、追いつけないと思っていたけど、やっぱり、今も追いつけない。

 絵の上手かったやつ。そいつは、病院で働きながら、イラストレーターをしている。大きなイベントに出品したり、個展開いたり、WEBで紹介されたり。天性なのだろう、誰にもまねできないあの独創性は、きっと私には一生かかっても手に入らない。

 自分の才能が特別ではないことを悟ったショックからしばらく立ち直れずに、それでも、悔しくて、抵抗するように同人活動にのめりこんだ。しかし、結局、私の中途半端さはあだとなり、結婚を機に、やめてしまった。


 ふと、また創作活動を始めたくなったとき、私は大人になっていた。結婚し、子供もいる。やれることは限られている。たまたま目にした二十歳以上限定の創作サークルにお邪魔し、執筆しているうちに、かつての職人魂が戻ってきて、私はまた、文章や絵を書き始めた。


 ブランクは、私にとってある程度必要だったのかもしれない。人には言えない苦労もしたし、知りたくない過去や、人の心の恐ろしさを知ることが出来た。ただ、目的もなくがむしゃらに突っ走っていた十代の自分にはなかった、貪欲さを手に入れた。 

 だんだん、「書く」だけじゃ物足りなくなってくる。

 上手くなりたいと、欲が出てくる。


 誰かに、自分のことを酷く言われたりしたことが、ないわけじゃない。

 自分が、他人より優れているなんて、驕りを、今も持っているわけじゃない。


 生きていくうちに、知らず知らず世間に揉まれ、様々な経験をしていくうちに、いつの間にか、大きな起伏を乗り越えていた。そういうのが、どんな批判にも左右されない丈夫な心を作ったんだろう。

 別に、人生の重大事件などに遭遇する必要はない。

 ほんの些細なことでも、しっかりと一つ一つクリアしていく、そういう小さな勇気が、必要なんだと思う。


 少年漫画なんかでよくあるパターン。最初はすんごい弱くて、頼りなくて。だけど、事件をひとつ、解決していくごとに強くなっていく。あれって、本当なんだと思うよ。別に、最初から強くなる必要なんてないんだもの。最初は弱くていい。すこしずつ、階段を上って、いつか強敵をやっつけられればいいんだ。


 誰だってそれは同じ。どんなことにだって当てはまる。最初は、上手くなくたっていい。だって、スタートラインがみんな同じなんて限らないんだもの。


 上手くなりたい、強くなりたいと思うとき、決して、手を差し伸べていたかもしれない相手を、突き放さないこと。人生はゲームと違って、目の前のノルマを回避することを許さない。悔しいが、ぐっとこらえてクリアするしかないんだから。

 地道な苦労の積み重ねが、いつか、強靭な心を作る。


 もしかしたら、学生の頃にやらされていた宿題やテストも、学力向上のためだけじゃなくて、少しずつがんばる、ひとつずつクリアしていくことの意義を、体に覚えさせるためだったんじゃないかなんて、大人になった今なら思うわけなんだよね。

 何事にも、真摯に取り組む姿勢を忘れない。そういうのを忘れた人が、「ずる」や「不正」を、大人になってもしてしまうんじゃないの?





 ……とまあ、説教くさくなったけれど、あんまり真面目にやりすぎると、それはそれで、脳にも健康にもよくないので、ある程度は手を抜きながら、ね。


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