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#「駄作」?「駄文」?──卑下について考える

 私も、もしかしたら過去に書いていたかもしれない。

「下手ですが」「駄文ですけど」「お目汚し」等々。


 ……ネットマナーとしても問題視される、「自分の作品に対する、過剰の卑下」。

「下手」というのと、「初心者」というのとでは、印象が違う。

 わざわざ、「下手」なものを、好き好んで見る人がいるのだろうか。


 いるとすれば、同じ立場で創作をしている人だろう。

 とりあえず、実力云々じゃなくて、やってみたいからやっている、だけど、「下手」。

 その行為自体、私は責めるべきことではないと思うし、誰もが通る道なのだとも思う。しかし、へりくだりすぎからか、「下手」「駄文」「駄作」という言葉が、横行するのには、少し、危惧を覚える。


 友人のサイトのお絵かき掲示板の注意書きに以前、「自分の絵を『下手』だとか、『お目汚し』だなんて、書かないでね」とあったのを見た。「せっかく描いたのだから」と、添えてあった。

 掲示板の場合は、人様のお宅にお邪魔するわけだから、わざわざ「下手」なものを投下しないで欲しいという感情もある。お絵かき掲示板への書き込みは、そこの管理人さんに贈る、プレゼントのようなもの。誰が、「下手」と本人が自覚しているイラストを欲しがるだろうか。この場合、「がんばって描いてみました」などの、前向きの一言が適当ではないのか……。

 私の中の、「下手」という言葉との葛藤は、そこのサイト訪問から始まった。


 日本人というのは、相手より自分を下に、下に、置くことを好むようだ。尊敬語、謙譲語などを始め、各種礼儀作法、挨拶、日常生活、至るところで「相手との距離」を測っている。「空気を読む」ことの大切さ、「敬う」ことの重要さを、幼いときから叩き込まれる。

 しかし、本当に、相手のことを考え、正当な使い方をしているかどうか、ということに及ぶと、話は変わってくる。知識として、相手を敬うことを覚えていても、使い方を誤っては、何の意味も成さない。

 真の礼儀とは、「相手の気持ちを察し、敬い、気を害さないように心がける」ことではないのか……? そう考えると、創作サイトで、自作を「下手」であると断言している管理人の行為は、礼儀作法に反しているといえないだろうか。


 実力差、感性の差、センスの差、どうしても現段階では超えられない壁があったとする。しかし、精一杯気持ちを込めて書いたものであれば、(瞬間的にかもしれないが)満足は出来るはずだ。精一杯が積み重なれば、スキルアップしていくことも出来るだろう。いつか、目標としているところに、たどり着くことが出来るかもしれない。──しかし、「下手」という言葉で、自作を装飾してしまったら……、その道のりは、少し、遠くなるような気がしてならない。 


 人には各々感性があり、個性がある。

 うちには、娘が二人いるが、二人とも、それぞれの感覚を持っている。

 6歳の上の娘は、私の真似をして、漫画絵を描こうと必死になっている。可愛い女の子が、どうすれば描けるのか、試行錯誤しているようだ。友達と見せ合い、影響を受けてきたり、なにやらキャラクターらしきものを考え、ニヤニヤしているときがある。

 下の、4歳の娘はというと、これがまた、恐ろしく独創的。初めて人間の顔のような絵を描いてくれたとき、あまりの個性にドキッとした。なんと、歪な丸の中に、ぎょろぎょろとこれまた震えた線で、大きく目玉を描き、ぎっと結ばれた口元の凛々しい……ドクロのような絵だったのだ。

 同じ親から生まれ、同じように育てたつもりでも、全く違うものを持っている。

 人と違うものを、必ず持っているはずなのに、その個性を、まだ発揮できていないだけなのに、「下手」などという言葉で、簡単に済ませては勿体無いと思う。


 自分の作品に対する自信がないのは、始めのうちだけ。回数を重ねれば、だんだん上手になってくる。

 昔のように、公に発表するには覚悟のいった時代とは違う。今は、インターネットを使って、自由に簡単に、作品を発表できるようになってしまった。経験のあるなしにかかわらず、ネット環境の有無が、発表の機会を左右している。

 自信のないまま、「下手」なものをアップしてしまうのは、往々にしてありえること。それでも、自分の作品に対して、何かしら思い入れがあるから形になった、という、根底の部分を忘れてやしないか。


 上手い、下手、なんて関係ない。せっかく人に見てもらうためだもの、せめて、「がんばったので、見てもらえませんか」「まだまだ上手とは言えないかもしれませんが、読んでもらえませんか」などの、ポジティブな言い回しで、自作を勧めてみてはいかがだろうか。

 作者が自作を貶めては、せっかくの読者ががっかりしてしまう。訪問してくれた人にとっても、書いた側にとっても、極端な卑下は、マイナスにしかならないのだ。


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