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BLOOD STONES   作者:
3/3

調べ屋

ぐーっと背伸びをして、朝日を浴びて

そのあとは歯を磨く。

朝の日課は、ヨガと呼ばれる体操。

これをやると落ち着けるし、なによりダイエット効果があるとかないとか。


ハヤノは毎日の朝の日課をやりおえた。

そして、洗面所で歯を磨く。


ふー・・・っとため息をついた。すると


ダダタダダダダダダ・・・・


部屋の前の廊下を走る音が聞こえた。

ここはハヤノの仕事場が与えてくれた寮である。

つまり、他にもここで暮らしている人間がいるわけだ。

ということは、もう少し静かに廊下を歩くことが最低限のマナーであろう。


なんてやつだ。と思っただけで

ハヤノはそれほど気にも止めなかった。

しかし、


ダダタダダダダダダダダダダ!!


段々と走る足音がハヤノの部屋に近づいてきた。

その時点でハヤノはこの足音の主がわかった。


もうすぐやってくる。

ダダダダ・・・

あと3秒


3


2


1


バァン!「ハヤノォォ!!!おはよう!!!」


「朝から騒々しいよ。セス。」


やっぱり、この男だった。

セスはハヤノの仕事をサポートしてくれる男だ。

これといって大した取り柄もないが とりあえずいいやつだ。


「いい天気だね!」

「そうだねー。」

「朝ごはん食べた??」

「まだ」

「作るね!今日はトーストに、ベーコンエッグだよー♪」

意気揚々とセスはキッチンに向かった。


セスは調べ屋と呼ばれる職業だ。

調べ屋は殺し屋とペアで動く。

ターゲットの情報を調べ、殺し屋に伝えるのだ。


セスは調べ屋以上の働きをしている。

朝が弱い(今日はちゃんと起きたけど)ハヤノの目覚まし変わりだったり、母親変わりだったり、父親変わりだったり。


セスはてきぱきとトーストとベーコンエッグをつくり

コーヒーを入れ、テーブルに並べた。

その間にハヤノは着替えを済ませた。


テーブルに並べられた美味しそうな朝食の香り

ハヤノはうっとりしながらコーヒーをすすった。

「セスの淹れるコーヒーは美味しいねぇ」

ふふんとセスは鼻をならした

「さ、早く食べてしまえよ」

「うん」

セスの作る料理は本当においしい。

一口かじるとサクッと音をたて、しかし、食感はフワフワなトースト。ハヤノは必ずバターを塗るのだが、それがまた格別に美味しい。ベーコンエッグは、カリカリのだけどジューシーなベーコンと、半熟卵のハーモニーがたまらない。

先に特に取り柄が無いと言ったが、この料理が上手いところがセスの取り柄だ。訂正しよう。


ハヤノはぺろりと朝食を平らげ、ティッシュで口をふいた。

「あー美味しかった!ごちそうさまでした。」

その挨拶を微笑みながら聞いたセスは それでは。と

ハヤノの前に座った。

「今日の仕事なんだが。」

「はぁ・・・また今日も殺さなきゃいけないのね。」

「王の命令だからな。」

ポケットから手帳を取り出して「よく聞けよ」とハヤノに促す。


「この、都から南へ300キロ。キャッツァという街だ。そこの、ジョナス夫妻だ。」


ジョナス夫妻・・・?


「いやよ。」

「なに?」

普段文句は言うが、断るの無いハヤノが今日はきっぱりと断った。


「どうして、その二人を殺さなければいけないの?」

「王の命令だ。」

「その人たちが何をしたっていうの?」

「なにもしてない。ただ、この二人の運命だ。」

「無責任よ。」

「仕方ないだろう。王の命令で・・・」

「王は、何してもいいっていうの?!命を奪うことも?!」

「どうしたんだハヤノ。様子がおかしいぞ。」


普段ここまで声をあげることもない。

このときのハヤノは確実にいつもと違っていた。

普段ならターゲットの名前を聞くと、悲しげな顔をするが

仕方ないといった感じで出かけるのだが、今日だけは違った。

明らかにイライラした表情になり、部屋をせわしなく右往左往していた。どうして、どうして、と呟きながら。

「ハヤノ!」

「うるさい!!!」


そういい放つと、ハッとしたのか、今度はセスに対し

申し訳なさそうな悲しい顔をしたあと、小さく言った。


「その二人は、わたしの祖父母よ・・・」


セスはその告白に「わかっている」と告げた。


「!!??わかっている?わかっているってなんなのよ。

だったらどうして、わたしに行かせるの?他にも、殺し屋はたくさんいるわ!なぜ私が??どうして王は、わたしだけにこんなことを??もう、これ以上、わたしから家族を奪わないで!!」


そう、言い切るか言い切らないか定かではなかった。が

セスはハヤノの眼帯を外し、変わりに自分の左手をかざした。

すると、

ジュゥゥゥゥゥゥゥと、何かを焼く音がした。

「あ"ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ハヤノは眼帯の下の目を焼かれた。

ハヤノの目からは涙と、血が流れ出した。


「お前は、ハヤノ・ステラ。王に支える殺し屋だ。私情を挟むことは許されない。少なくとも、王の息子である俺に向かって、そのような口を利くな。立場を、わきまえろ。」

そう言うと、セスはハヤノから手を離した。

そして、その場に崩れ落ちたハヤノは肩で息をし、涙を流していた。

セスは、ハヤノの肩に優しく触れて

「すまない。でも、少し落ち着け。辛くても、こうするしかお前の姉さんを救えない。」

「鬼め。」

「わかっている。すまない。この国はおかしい。でもそうしないと、お前の姉さんもお前も救われないんだぞ。」

「わかってるわよ。ハァ、ハァ、」


「わたしは、王に支える殺し屋。王の命により、今日この二人を殺します。」


ハヤノはセスに向き直り、そう言った。

セスはうん。と頷いて、それからハヤノの目に薬を塗り眼帯をしてあげた。

セスの心はキシキシと、痛み続けた。

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