奴隷歌姫、魔法のイロハを教えてもらう。Ⅰ
10/19追記:魔法石の色と属性を変えました。
緑→地、黄緑→風、黄→雷
地属性に植物系も入ることを忘れてました……
10/23追記:無属性の魔法石の色を追加し忘れていたので、またもや変更。
白→無、黒→闇、透明→光
また、闇魔法石をブラックダイヤ、光魔法石をダイヤモンドと似ている宝石を変更しました。
「さあどうぞ」
「お、お邪魔します」
ソフィアさんに連れられて、奥の部屋に通される。ソフィアさんが壁のスイッチを押すと、部屋の明かりがついた。
「……研究室?」
複雑そうな機械のようなものが、ところ狭しと並べられている。奥にある机には、溢れんばかりの紙が山積みで、床も足の踏み場がないほど、書類やら器具などが転がっている。
ここにくるまでに一度通った部屋は、大人の女性らしい家具のラインナップだった。鏡とか、ふかふかそうなベッドとか、高そうなソファーとか。あ、あと何に使うかよくわからないけど、水が入った器みたいなのもあったな。
でも、この奥の部屋は無機質な雰囲気を醸し出している。大人な女性、という想像していた部屋とはかけ離れていた。
唯一女性らしかったのは、所々に置かれている(床にも落ちている)宝石……のようなもの。ただ、宝石とは言え指輪とかではなくて、輝いているとは言いがたい、鈍い光を放つ石──原石のようなものだけだった。
「ごめんなさいねぇ、ルイス君が予め教えてくれてれば、もっとお掃除したんだけど」
「とは言っておきながら、どうせやらないんだろ」
「やだ、やるわよ~、多分」
皇帝が呆れたようにため息をついた。うーん、確かにかなりぐちゃぐちゃだけど……って、皇帝だって、自分で片付けてないんだから人のこと言えないでしょうが。一度私がダウンしてたときはひどかったくせに……って、睨まないで!
「で、結界だったわよね。アイリスちゃん、一応聞いておくけど、魔法属性は何かしら?」
ソフィアさんが、なにやら棚をごそごそしながら聞いてきた。属性、か。……そういえば、まだ闇以外の全属性使えるってこと、言ってなかったっけな。基本的には風・水・光を使ってるけど、多分皇帝には他のも使えるってバレてるよねぇ……。どうしたもんかな。
「風と水と光です」
全属性だなんて、直球的にらさすがに言いにくい。驚かれても困るし、実際あんまりつかわないから良いよね。
「……あら、珍しい。三つも使えるのねぇ。それじゃあこれかしらね」
ソフィアさんが棚から取り出したのは、手のひらの半分ぐらいのサイズの石。さっきから床に転がりまくってたあの石だ。それよりも大きめだけど。ただ、普通の石に水色が少しだけ混じっているだけのような、変鉄のない石だ。
「何ですか? これ」
「魔法石よ。まさか、知らないとか? ほら、魔道士が使う杖にはめられてるでしょう?……って、貴女魔法石がなくても魔力が十分だから杖使ってないんだったかしら。えぇと、それじゃあ、日常用品に使われてるでしょう?」
日常用品……異世界に来る前は随分お世話になりましたけど、そういえばここに来てからは全くだなぁ……。
「知らないの? 今までどんな状況下で育ったのよ……。しょうがないわね、軽く説明してあげるから、よく聞いてね?
魔法石っていうのは、単純に言えば魔力を含んだ鉱石のことよ。色によって属性は変わるんだけど……」
ソフィアさんが机の上の書類を床に落として、いろんな色の石を並べた。視界の隅に、椅子に腰かけた皇帝が写った。仕事はいいんですか、仕事は。
「これが炎ね、それでこれは水……」
赤は炎、水色は水、黄緑は風、緑は地、青は氷、黄色は雷か。綺麗だな~、それぞれの石を宝石に例えると、ルビー・アクアマリン・ペリドット・エメラルド・サファイア・トパーズってとこかな。このダイヤモンドと、ブラックダイヤモンドみたいのは光と闇かな? あ、でも只の白い石もあるな……なんだろうこれ。
「魔法石は魔力を増大させるし、適正ではない属性の魔法も使うことができるの。で、魔法石の入手方法だけど。大抵は魔物を狩るときに希に手に入る、無属性の魔法石にその属性の魔力を込めるわね」
ふむふむ。あ、じゃあ白いのは無属性なのか。例えば、無属性の魔法石を水属性にしたければ、水属性の魔力を持つ人にお願いするってことね。
「魔物が何かしらの属性持ちだったら、狩った時点でその属性の魔法石になるわ。これは、無属性の物よりも価値が上がるの。それにまた魔力をこめると、ここに並んでる宝石のようになるわね。
あとはそうねぇ、魔力に満ちた場所でたまに、普通の石に魔力がこもって見つかることもあるけど、それも属性持ちの魔物からとれるものと一緒ね。それと……ねえルイス君、ちょっとやって見せてくれない?」
ソフィアさんが、気だるそうに座る皇帝に話しかけた。
「めんどくせぇ、なんでこいつのために俺がやらなきゃなんねぇんだ」
「私で悪かったですねっ。……ソフィアさんは出来ないんですか?」
「ごめんなさいね、私にはできないのよ。ね、ルイス君お願いよ」
ソフィアさんにはできなくて、皇帝にはできるのか。なら、皇帝にやってもらうしかないのかぁ。
そう言われてもスルーし続ける皇帝。うーん、ここは奥の手を使うっきゃないかな? ソフィアさんには聞こえないぐらいの音量で、私は呟いた。
「……明日の大福二つ追加」
「……!」
表情が一瞬揺らいだ。おっ、あと一押しだ。
「……四つ追加」
「しかたない、やってやらんこともない」
してやったり! 皇帝を動かすには甘いもの、これ絶対ですね。
皇帝は椅子から立ち上がり、握りこぶしを作って目を閉じた。刹那、淡い光が皇帝の手から出てきたかと思うと、いきなり何かを投げつけられた。
「いでっ」
それはコンッと私の額に当たると、足元に落ちた。……いてて、もうちょっと渡し方ってもんがあるでしょうが!
額をおさえながら、足元に落ちた何かを拾い上げた。なんだろうこれ、何となく生暖かい……。
「赤い石?」
「そうよ、これが、魔法石の手に入れ方のもうひとつの方法。ある程度の魔力を持った人なら、純度の高い魔法石を作ることができるの。作成者の属性の魔法石ができるわ。ただ、魔物から取り出す魔法石よりも、作った人によってクセがあるから、相性が良くないと他人には使いにくいわね」
なるほどねぇ。なら、私は皇帝の魔法石は使えないだろうね。相性最悪だもん。
うーん、しっかし、綺麗な石だな……ガーネットみたいな深い真紅。あの皇帝からどうやってこんなもの取り出すんだか。
ん? 光に透かすと一瞬黒く光る──なんだろ。まさか、ここに皇帝の腹黒さが現れてるとか? 本当にそれだとしたら笑えますね。
「魔法石は使えば使うほど、段々小さくなっていくの。使えるの量は作成者の力量とこめる魔力に左右されるわ。これぐらいのサイズなら……そうねぇ、中級魔法を二回分ぐらいかしら。こんな風に」
ソフィアさんが何やら呪文を唱えると、炎魔法が発動した。続けて、そばにあった水魔法石で消火した。
「と、こんな具合ね。魔法石について、分かったかしら?」
「はい、大体の仕組みは理解できました」
「ふふ、覚えがよくて助かるわ。それじゃあ、早速結界張り──といきたいんだけど、その様子じゃあ無属性の魔法石に魔力をこめるのも、作ったことも無さそうね……先に練習するべきね。はいこれ」
そう言うと、ソフィアさんは私の手のひらに石をおいた。恐らく魔力をこめてない状態の原石だ。水色ではあるものの、輝きが鈍い。
「これを手でこうやって包み込んで……水魔法をイメージしながら、手のひらに魔力を集めて、流し込むの。やってみなさい」
そんな投げやりな。ま、まあ試しにやってみよう。えぇと、イメージしながら魔力を集めて……あ、でも私は声を一言でも発しないと、魔法がはつどうしないんだっけ。うーん、ちょっと恥ずかしいけど、呪文を呟きながらでいいかな?
水をイメージして、魔力を手のひらに……!
──えいっ!
サブタイトルを全て変えました!理由は、前の付け方だとめちゃめちゃ考えにくくてサブタイトルを考えるのが一番大変だったからです……。
ブックマーク130超え、感謝感激です!これからも頑張ります!