僕と私
――カン・カン・カン…
ヒールの音が鳴り響く…
何度も見るこの光景…
――待って!
彼女は止まって辺りを少し見回すが
また歩き出す…
――こっちを見て私はここにいるの!
何で…気づいてくれないの…?
走って追いかける…涙が止まらない…
地面が割れ自分は落ちる
底の見えない奈落の底へ…
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「――っは!
また夢か…」
ここ最近同じ夢を見る
会ったことの無い人だでも…
「一目見た瞬間からずっと
あの人の事が気になる…
夢でしか会えないんだから
こっちを見てくれても良いのに…」
「あー」と言って頭を掻いて
「あーもうだめ外行こ外!」
私服に着替えてから頭を切り替えるために外に出た
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
――カン・カン・カン…
自分のヒールの音が響く
最近何度も見ている夢のなかだ
そしていつも声が聞こえるんだ
――待って!
――ここにいるの気づいて…私を見て…
でも不思議な事に振り向いても
どこにも声の主は居ないんだ…
しばらくして声が聞こえなくなって
心配になり
もう一度振り向く…
周りが真っ暗になり
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
目が覚める…
「またか…あの声は誰だろう…?
会いたい…」
彼女はついに好奇心に負け
私服に着替え、ヒールを履き外に出る
(会えるか分かんないけど
声は何度も聞いた…きっと分かる
彼女が僕を知らなくても良い!
とにかく…会いたい!)
走って…走って…探し回った…
しかし…
「やっぱり居ない…な」
帰ろうとしたその時
「待って!」
何メートルか離れた後ろから声が聞こえた
聞き違いではない!あの声は!
僕はもう止まらなかった
これでもかと勢いよく振り向き走り出す
――ギュ!
「会えた!」
僕は彼女を抱き締めた
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私はその辺を気分転換に歩いていた…
すると誰かを探しているのか周りを見ながら
走っている人がいた
偶然彼女がこっちを向いたとき確信した
夢の彼女だ…!
彼女は立ち止まり諦めたようなセリフを
ぼそっと言った後
帰ろうとしていた用なので
私は…とっさに
「待って!」
と言ったすると…
彼女は勢いよくこちらに振り向き
走ってきた!ぶつかりそうな勢いだった
避けるべきか迷っていたら
彼女はぶつかる寸前に止まり
私を抱き締めて
「会えた!」
私は目を丸くして
「えっ?」
彼女は顔を真っ赤にして焦った様子で
謝った
「あっ…ごっごめん!嫌だった?
嬉しくってつい…」
(謝るわりには、離れないんだ…
むしろギュと抱き締めて来てるし…
でも…嫌じゃないむしろこうしてたい…)
「あの嫌じゃないです私だって嬉しいです
良かったら家に来ませんか?」
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抱き締めた瞬間
(あっヤバイ…彼女にとって僕は初対面だった…)
とっさに僕は謝る
でも彼女は全然嫌じゃなかったらしく…
「嫌じゃないです私だって嬉しいです
良かったら家に来ませんか?」
気絶しそうだった
「うん」
嫌われなかったことが嬉しかった
それから彼女に付いていって彼女の家に入った
――ガチャン…カチャ!
彼女が鍵を閉める
――ギュ!
今度は彼女の方から抱き締められた…
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彼女を家に入れた後
私はもう自分を止められなかった
私から彼女を抱き締めた
「やっと…やっと夢にいる貴女に会えました…
いつも寂しそうに歩く貴女を見ていました」
「君も?」
――えっ?
「貴女も?」
彼女は頷きこう言った
「正確には声だけだけど
君の僕を呼ぶ声…それと泣き声が聞こえたんだ…」
嬉しい…あの時彼女は私を探してたんだ…
「あの…私好きだったんです
夢の貴女が…
でも探してくれた今の貴女が知りたい」
私はさらにギュ!と抱き締める
「僕も夢で聞いたそのキレイな声が好きだ
でもあの時聞いたのは泣き声ばっかりだった
僕は笑顔の君が知りたい
付き合ってくれないか?」
――答えはイエスの一つだよ当たり前じゃん
「はい!」
――チュ!
「ヤバイ…我慢できないや…
今すぐにでも君の隅々まで知りたい…良いかな?」
私は頷く
彼女は私をお姫さま抱っこしてベッドまで連れていった
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あの後僕は彼女をベッドに連れていき
彼女と愛し合った
その日の夢は花畑のなかで笑顔の彼女がいた
彼女は僕の幸せな声が聞こえたんだそうだ
END